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フリーランスのための、最適な契約書のつくりかた【トラブルゼロを目指す全ステップ】

フリーランスのみなさま、取引先と契約書は交わしていますか?

正式な契約書を交わしている人もいれば、「今のところ関係が良好だから」と、なんとなく口頭だけで済ませている人もいるのではないでしょうか。でも、トラブルを避けるためには、やっぱり契約書は大切なんです。

フリーランスの立場での契約書の考えかた

まず、フリーランスが業務を受託するうえで最も重要なのは、具体的に何を受注したのかということ。業務内容や範囲をはっきりさせたうえで、金額、支払期日など、両者の認識にズレが生まれやすいポイントを、お互いに明確にすることが肝心です。

すでに何らかの方法でこうした点が明確になっているのなら、必ずしも“複雑な”契約書をつかう必要はありません。フリーランスにとって契約書は「シンプルで締結しやすい」ものがやはり便利です。

リスクに合わせた契約書のレベル分け戦略

つまり、なにも今すぐ30ページの契約書をつくれというんじゃありません。
契約書の内容やボリュームを考えるにあたり、取引の大きさから判断するのが合理的です。たとえば、フリーランスの立場で考えた場合、取引と契約書のレベルを大まかに3段階に分けると、

レベル1. 単発の小さな案件なら、発注内容を記した程度の契約書でもOK
レベル2. 継続的な取引や受注金額の大きな案件なら、不可欠な条項でシンプルな契約書を作成
レベル3. さらに大きな案件や長期の取引なら、条項を追加した本格的な契約書を作成

のように考えられます。こうした判断がかえって煩雑に感じられるときは、やはりまずは”シンプルな契約書”をおすすめします。

フリーランスのためのシンプルな契約書の例

では具体的にどんなものがシンプルな契約書といえるのでしょうか? 
以下に「フリーランスのための、シンプルな契約書」の例を挙げます。必要最小限の内容にするため、一般的な契約書に含まれる条項(一般条項)はほぼ入れていません。発注内容を契約書に整理しただけともいえる、すっきりとしたものです。

注意:取引金額が大きくなったり、継続的な発注が見込まれたりと、場合によってはしっかりとした一般条項(契約解除や損害賠償、裁判管轄などの条件のこと)を盛り込んだ、本格的な契約書を交わすことも、リスク予防の観点からは大切になってきます。一般条項の詳しい解説は、追って記事にします。

            契約書(サンプル)

甲及び乙は、甲が乙に対し、以下の業務を依頼するにあたり、次のとおり契約を締結する。
1.発注内容
(1)株式会社●●●●のウェブサイトに掲載するブログ記事(テーマタイトル:○○○の丁寧な暮らし/詳細は別紙)の執筆
(2)規格・仕様
掲載媒体:株式会社●●●●のウェブサイト内ブログ
分量:1記事あたり1,000字以上1,500字以内
タイトル:30字以内
修正指示:1回まで(追加修正は1回あたり2,000円(消費税等除く))
☑別に資料あり(「コンテンツ戦略基本資料」「ブログ執筆ガイドライン」(2023年4月版のもの)「2023年○月○日オンライン打ち合わせ議事録資料」他)
(3)納入方法
納品形式:Googleドキュメント形式
納品方法:甲が指定するGoogleドライブのフォルダに投稿する方法による
2.納期等
(1)納期  2023年7月1日から2023年9月30日まで、毎月5本のブログ記事を納品
(2)検査完了日 各月の納品から7日以内
3.報酬の額
・1記事あたり金8,000円(消費税等別)
・全15本の合計金額:120,000円(消費税等別)
※諸経費は、乙の負担とする。
※中途で終了した場合でも、完了した記事数に応じた報酬を支払う。
4.支払期日
☑一括払い
2023年10月15日
□分割払い
①対価の__% 契約締結日の属する月の翌月末日 / XX年XX月XX日
②対価の__% XX年XX月XX日
③残額 本業務の遂行が完了した月の翌月末日 / XX年XX月XX日
5.支払方法
乙が指定する金融機関口座に振り込み支払う。振込手数料は、甲の負担とする。
6.その他特記事項
・乙は、本業務で知り得た甲の機密情報を第三者に漏洩してはならない。
2023年6月1日
甲 東京都港区×××1-2-3
  株式会社●●●●
  代表取締役 ●● ●●
乙 神奈川県川崎市△△区△△1-2-3
  ■■ ■■

フリーランスのためのシンプルな契約書の記載例 竹永行政書士事務所

口約束でも契約は成立する

そもそも、契約書を交わすのは億劫だとか、いろいろな都合があって難しいという方もいらっしゃるかもしれません。

そんな場合でも、上記のサンプルに近い内容を、具体的に書面またはなんらかのテキスト形式に残しておくのが、フリーランスのトラブル予防にとって得策です。

民法上は、口約束でも契約は成立しますから、どのようなやりとりで契約しても、一応、当事者間に法的な約束が成立することになります。とはいえ実際問題として記録は必要不可欠です。やはり口約束は避け、メールやチャットツールを使うべきでしょう。

発注内容を詳細に言語化することが最大のコツ

どうしても契約書という形にするのが難しいときは、たとえば「請求書の備考欄」などに発注内容(何を依頼されたのか)を書き込んでおくという手もあります。とにかく何かしらの形によりテキストベースで明確にしておけば、お互いに確認し合えるので便利でもあるし、「言った」「言わない」のトラブルを未然に防ぐ効果があります。

転ばぬ先の杖、などといいますが、結局のところ、「発注内容を詳細に言語化する」ことが自衛手段の最も基本的なコツであり、フリーランスにとって最も重要なリスクマネジメントになります。

そこで今回、あなたに伝授したいのが、業務内容の記載例です。あなたが実際に何らかの業務を受託することを想定して、以下に発注内容の記載例を挙げます。あなたのビジネスに合ったものがあれば、ぜひ参考にしてみてください。完全にぴったりのものがなくても、いくつか読めば、記載の要領が分かると思います。

①ライター関連業務の場合(フリーライター、記事執筆系の業務)の記載例

以下は、ライター関連(原稿執筆関連)業務の具体的な業務内容の記載例です。

例:ブログ記事の執筆
(1)発注内容
・甲が運営するブログ「○○○○」に掲載する記事の執筆
・記事に関連する画像の提供
(2)規格・仕様
使用媒体:ブログ「○○○○」
分量:1記事あたり1,500字以上2,000字以内
タイトル:30字以内
画像:記事内容に関連する画像を3枚以上提供
納品形式:Wordファイル形式(.docx)
納品方法:甲が指定するメールアドレスに添付する方法による
修正指示:2回まで(1回あたり金1,000円(消費税等除く))
☑別に資料あり(「ブログ記事執筆ガイドライン」)

例:商品説明文の作成
(1)発注内容
・甲が運営するECサイト「××××」に掲載する商品説明文の作成
(2)規格・仕様
使用媒体:ECサイト「××××」
分量:1商品あたり500字以上800字以内
商品数:10商品
納品形式:テキストファイル形式(.txt)
納品方法:甲が指定するクラウドストレージにアップロードする方法による
修正指示:1回まで(追加修正は1商品あたり金500円(消費税等除く))
☑別に資料あり(「商品説明文作成のポイント」)

例:メールマガジンの執筆
(1)発注内容
・甲が配信するメールマガジン「△△△△」の執筆
(2)規格・仕様
使用媒体:メールマガジン「△△△△」
分量:1回あたり2,000字以上3,000字以内
配信頻度:月2回(毎月第2、第4木曜日)
納品形式:テキストファイル形式(.txt)
納品方法:甲が指定するメールアドレスに添付する方法による
修正指示:1回まで(追加修正は1回あたり金2,000円(消費税等除く))
☑別に資料あり(「メールマガジン執筆の注意点」)

例:企業ブログのゲストライター
(1)発注内容
・甲が運営する企業ブログ「□□□□」のゲストライターとしての記事執筆
(2)規格・仕様
使用媒体:企業ブログ「□□□□」
分量:1記事あたり2,000字以上3,000字以内
記事数:月1本
納品形式:Markdownファイル形式(.md)
納品方法:別途甲が指定するGitHubリポジトリに送る方法による
修正指示:2回まで(追加修正は1回あたり金3,000円(消費税等除く))
☑別に資料あり(「ゲストライター執筆要項」)

②クリエイティブ制作系業務の場合の記載例

以下は、イラスト制作やデザイン等のクリエイティブ業務の具体的な業務内容の記載例です。

例:キャラクターデザインの制作
(1)発注内容
・甲が開発するスマートフォンゲーム「○○○○」に登場するキャラクターデザインの制作
(2)規格・仕様
使用媒体:スマートフォンゲーム「○○○○」
キャラクター数:3体
納品形式:AIファイル形式(.ai)、PNGファイル形式(.png)
納品方法:甲が指定するクラウドストレージにアップロードする方法による
修正指示:3回まで(追加修正は1回あたり金5,000円(消費税等除く))
☑別に資料あり(「キャラクターデザインの要件」、「ゲームのストーリー概要」)

例:ロゴデザインの制作
(1)発注内容
・甲が立ち上げる新ブランド「××××」のロゴデザインの制作
(2)規格・仕様
使用媒体:名刺、ウェブサイト、商品パッケージ等
納品形式:AIファイル形式(.ai)、EPSファイル形式(.eps)、PNGファイル形式(.png)
納品方法:甲が指定するメールアドレスに添付する方法による
修正指示:2回まで(追加修正は1回あたり金10,000円(消費税等除く))
☑別に資料あり(「ブランドコンセプト資料」)

例:イラストレーションの制作
(1)発注内容
・甲が発行する絵本「△△△△」に掲載するイラストレーションの制作
(2)規格・仕様
使用媒体:絵本「△△△△」
ページ数:24ページ
納品形式:PSDファイル形式(.psd)、JPEGファイル形式(.jpg)
納品方法:甲が指定するクラウドストレージにアップロードする方法による
修正指示:2回まで(追加修正は1ページあたり金3,000円(消費税等除く))
☑別に資料あり(「絵本のストーリー原稿」、「絵本のラフスケッチ」)

例:ウェブデザインの制作
(1)発注内容
・甲が運営するウェブサイト「□□□□」のデザインリニューアル
(2)規格・仕様
使用媒体:ウェブサイト「□□□□」
ページ数:トップページ、下層ページ5ページ
納品形式:PSDファイル形式(.psd)、HTMLファイル形式(.html)、CSSファイル形式(.css)
納品方法:甲が指定するGitHubリポジトリにプルリクエストを送る方法による
修正指示:3回まで(追加修正は1ページあたり金15,000円(消費税等除く))
☑別に資料あり(「ウェブサイトリニューアルの方針」、「現行ウェブサイトのサイトマップ」)

③SNSサポート業務の場合の記載例

以下は、SNSサポート等の、秘書的な業務を受託した場合の具体的な業務内容の記載例です。

例:SNS投稿代行
(1)発注内容
・甲が運営するX(Twitter)アカウント「@○○○○」、Instagramアカウント「@○○○○」への投稿代行
(2)規格・仕様
使用媒体:X(Twitter)アカウント「@○○○○」、Instagramアカウント「@○○○○」
投稿頻度:各アカウントにつき、1日1投稿
投稿内容:甲が提供する商品やサービスに関する情報、関連するニュースや話題など
納品方法:投稿予定日の3日前までに、投稿内容を甲に提出し、承認を得る
☑別に資料あり(「SNS運用ガイドライン」、「商品・サービス資料」)

例:SNSデータ分析
(1)発注内容
・甲が運営するFacebookページ「××××」のデータ分析と報告書の作成
(2)規格・仕様
分析対象:Facebookページ「××××」
分析期間:毎月1日から末日まで
分析項目:リーチ数、エンゲージメント率、フォロワー属性など
報告書形式:PowerPointファイル形式(.pptx)
納品方法:翌月10日までに、甲が指定するメールアドレスに添付する方法による
☑別に資料あり(「SNSデータ分析の着眼点」)

例:経理サポート
(1)発注内容
・甲の経理業務のサポート
(2)規格・仕様
業務内容:請求書の発行、経費精算、売掛金・買掛金管理など
作業時間:月20時間まで(超過した場合は、1時間あたり金2,500円(消費税等除く))
報告方法:毎月末日までに、作業報告書を甲に提出する
☑別に資料あり(「経理業務マニュアル」)

例:コミュニティ運営代行
(1)発注内容
・甲が運営するオンラインコミュニティ「△△△△」の運営代行
(2)規格・仕様
使用媒体:オンラインコミュニティ「△△△△」
業務内容:会員の承認、投稿の監視、イベントの企画・運営など
作業時間:週10時間まで(超過した場合は、1時間あたり金3,000円(消費税等除く))
報告方法:毎週金曜日までに、運営報告書を甲に提出する
☑別に資料あり(「コミュニティ運営ガイドライン」)

例:イベント運営サポート
(1)発注内容
・甲が主催するイベント「□□□□」の運営サポート
(2)規格・仕様
イベント名:「□□□□」
開催日時:20XX年X月X日 10:00〜18:00
開催場所:○○ホール4階 小会議室
業務内容:スケジュール管理、進捗管理、予約管理、名簿管理、事前確認、打ち合わせ管理、当日会場設営、受付、来賓受付、機材設置、来場者誘導、進行管理、VIP接遇、当日ボランティア管理、司会、撮影、記録、撤収作業、開催報告作成、SNS等更新管理、諸連絡、など
協力スタッフ:3名(田中○○、佐藤○○、山田○○)
報告方法:イベント終了後1週間以内に、実施報告書を甲に提出する
☑別に資料あり(「イベント企画書」、「タイムスケジュール」)

発注内容に著作権が含まれる場合はここに注意しよう

いくつか業務の具体的記載方法について例を挙げましたが、あなたの業務にも応用できそうな記載例が見つかりましたか? 

ところで、ここで「著作権」の注意を加えなければなりません。

たとえば原稿やイラスト制作などの業務の場合には、成果物に著作権が含まれることとなります。そこで、これら著作権の帰属について、あらかじめ発注者との間で確認、合意が必要です。そのうえで、発注者との認識の違いを防ぐために、次のような記載を足してください。

ポイント①著作権を譲渡するのか利用許諾かを明確にする

まずは成果物に著作権が含まれる場合には、その著作権をフリーランスから発注者に譲渡するのか、利用を許諾するのかを明確にしましょう。実態としては譲渡するケースが多いようですが、利用許諾がないわけではありません。どちらが良い、悪いということでもなく、あくまでも当事者の納得と合意で決めていく問題です。尚、ここでは詳しく触れませんが、譲渡と利用許諾は二つに一つということでもありません。一部譲渡や共有とするケースもあります。

ポイント②譲渡する場合の記載方法

著作権を譲渡する場合は、例えば、
「乙は、本業務で作成したロゴデザインに関する著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利も含む)を、甲に譲渡する。」などとします。

また、「著作者人格権の不行使」を合意している場合は、
「乙は、本業務で作成したイラストに関する著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利も含む)を甲に譲渡する。また、本イラストに関して、乙は著作者人格権を甲に対して行使しない。」
などとします。

参考:ちなみに、「著作者人格権の不行使」は譲渡型の契約書でよく見られるものですが、必ずしもすべての著作者人格権を行使しないと定めなければならないわけではありません。たとえば、イラストの譲渡をする場合に、クリエイターが著作物の品質やイメージの保持を望み、自身の意図に反する改変は防止したいというシチュエーションも考えられます。その場合「著作者人格権の不行使」としつつ「ただし、同一性保持権を除く」として、譲渡後の著作物に対する無断の改変を防ぐこともあります。これも一概に良い悪いではなくて、当事者間の納得と合意によるので、よく検討してください。

ポイント③利用許諾する場合の、許諾範囲の具体的記載方法

著作権の利用を許諾する場合は、許諾する範囲を具体的に記載しましょう。

たとえば、

・印刷物への掲載を許諾する場合
 「以下の範囲に限り、成果物の利用を許諾する。
  目的:会社案内パンフレットへの掲載
  印刷物の名称:株式会社○○会社案内2023年版
  掲載期間:2023年4月1日から2024年3月31日まで
  印刷部数:10,000部」
などとします。

・ウェブサイトへの掲載を許諾する場合
 「以下の範囲に限り、成果物の利用を許諾する。
  目的:甲が運営するウェブサイトへの掲載
  ウェブサイトの名称:○○ブログ
  URL:https://www.〇〇.com/blog/
  掲載期間:2023年4月1日から2024年3月31日まで」
などとします。

ポイント④報酬との関係を明確にする

著作権の譲渡や利用許諾の対価がすでに報酬に含まれているのか、あるいは別途必要なのかを明確にしましょう。

たとえば、

例1「報酬:100,000円(著作権譲渡の対価を含む、消費税等別)」

例2「報酬:50,000円(消費税等別) 著作権利用許諾の対価:10,000円(2023年4月1日から1年間の利用許諾、消費税等別)」

などと書くと良いでしょう。

とにかく成果物の著作権について発注者とトラブルを避けるために、契約時にしっかりと取り決めておくことが大切です。著作権の譲渡や利用許諾の範囲、報酬との関係を明確にして、安心して業務に取り組みましょう。

発注者から契約書を提示された場合のチェック方法

ここまではフリーランス側が、契約書等を作成する前提で説明してきましたが、逆に、フリーランスが発注者から契約書を提示された場合は、あなたがその契約書を確認する必要があります。
そこで最後に、フリーランスが発注者から契約書を提示された場合に、最低限これだけはチェックすべき項目を説明します。

注意:以下の項目の他にも、もし契約書に分からない条文や用語、条件があれば、必ず意味を調べたり、相手に確認したりしましょう。

チェックポイント① 業務内容や仕様が具体的で実態と合っているか?

業務内容や仕様は、できる限り具体的に記載されているべきです。

例えば、

・別途詳細な仕様書がある場合は、その旨を明記してもらう
 例:20XX年X月X日付「ウェブサイト制作の仕様書」を参照

・納品時のチェック項目リストがある場合も、その旨を記載してもらう
 例:納品時は、20XX年X月X日付「納品チェックリスト」に従って確認する

チェックポイント② 納入方法・納入場所が明確か?

納品方法や納品場所も具体的に記載しましょう。

例えば、
・クラウドストレージにPSDファイル形式でアップロードする
・USBメモリにWordファイル形式で保存し、甲の本社○○部に持参する
・JPEGファイル形式で、指定のメールアドレスに添付して送信する

のような程度に詳しく書かれているかを確認します。

チェックポイント③ 納期が明確か?

いつまでに仕上げるのか、納期は明確に記載されていますか?

単発の請負ではなく、一定期間に渡り提供する性質の業務の場合は、その提供期間を明記しましょう
例:委託期間 20XX年X月X日から20XX年X月X日まで

チェックポイント④ 報酬額が明確か(著作権の扱いも確認)?

報酬額は、フリーランスにとって最も重要なポイントです! ただし、報酬の計算方法は業務によって異なるため、間違いなく、お互いにとって分かりやすく記載されているかを確認します。

時間単価や文字単価など、単価表を添付するのも一案です。
例:研究員Aの作業時間単価:10,000円(消費税等除く)

著作権を譲渡する場合は、譲渡の対価が含まれているのかどうか、確認できるようにしましょう。あるいは、作業対価とは別に著作権対価を明記してもらいましょう。
例:報酬50,000円(内、著作権譲渡対価10,000円、消費税等除く)

著作物の利用許諾の場合も、許諾対価を明記してもらいましょう。
例:報酬100,000円(20XX年X月X日から1年間の利用許諾対価を含む、消費税等除く)

チェックポイント⑤:報酬の支払期日が明確か?

報酬は金額もさることながら、「いつ」支払われるのかも大切です。支払期日を明確にしましょう。

ちなみに、下請代金支払遅延等防止法(下請法)では、支払期日を具体的に特定することが定められています。

ゆえに、発注企業側にとっては、下請代金支払遅延等防止法が適用される取引の場合、発注者は下請事業者が役務等を提供した日から60 日を超えて支払期日を設定した場合、下請法違反になる点に注意が必要です。

では、下請法の観点でいうと具体的にどのような記載が良くて、どのような記載がダメなのでしょうか?

支払期日の記載【良い例】
・「2023年6月30日」
・「毎月末日納品締切,翌月10日支払」

これらの例では、支払期日が具体的な日付で特定されています。「2023年6月30日」のように直接日付を記載する方法と、「毎月末日納品締切,翌月10日支払」のように月単位の締切制度を採用し、支払日を特定する方法があります。

支払期日の記載【ダメな例】
・「2023年6月末日まで」
・「納品後30日以内」

これらの例では、支払期限は示されていますが、具体的な日付が特定されていません。「2023年6月末日まで」だと、6月のどの日に支払われるのかが明確ではありません。「納品後30日以内」だと、納品日が確定しない限り、支払日も確定しません。

もちろん、定められた支払期日より前に支払うことは問題ありません。(早めに支払ってもらえるのは、フリーランスにとってはありがたいことですよね。)


参考1:支払期日を定める義務(下請法第2条の2)
親事業者は,親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず,受領日(下請事業者から物品等又は情報成果物を受領した日。役務提供委託の場合は,下請事業者が役務を提供した日)から起算して60 日以内(受領日を算入する。)のできる限り短い期間内で,下請代金の支払期日を定める義務がある。

下請法2条の2

参考2:下請法上の下請代金の支払期日
(ア) 受領日(下請事業者から物品等又は情報成果物を受領した日。役務提供委託の場合は,下請事業者が役務を提供した日)から起算して60 日以内に支払期日を定めた場合は,その定められた支払期日
(イ) 支払期日を定めなかったときは,受領日(下請事業者から物品等又は情報成果物を受領した日。役務提供委託の場合は,下請事業者が役務を提供した日)
(ウ) 受領日(下請事業者から物品等又は情報成果物を受領した日。役務提供委託の場合は,下請事業者が役務を提供した日)から起算して60 日を超えて支払期日を定めたときは,受領日から起算して60 日を経過した日の前日

まとめ

フリーランスは立場上、発注者の条件をそのまま受け入れているのが実情ではないでしょうか? もちろん個々の事情があるので一概にはいえませんが、シンプルな契約書を交わすか、せめて業務内容をはっきりと伝えることは、対等な関係を築くことにつながります。

シンプルな書面、本格的な契約書を使い分けることで、フリーランスもビジネスをもっと安全、円滑に進められるはずです。

以上が、フリーランスが契約書をチェックする際の主なポイントです。契約書は、トラブルを避けるための重要なツールです。しっかりチェックして、ぜひ、契約書をうまく活用していきましょう!

「やっぱり自分のオリジナルな契約書が欲しい!」そんなときは?

「シンプルな」契約書の作り方は本記事で理解できたけれど、やっぱりもう少し本格的な契約書が必要だという方もいらっしゃるでしょう。

ブランディングを高め、オリジナリティのある業務内容で、まとまった案件を引き受けられるようになったとき。あるいは、発注者から「詳細な契約書が欲しい」と要望されたときなど。説明してきたようなシンプルな書面だけでは、物足りなく感じるかもしれません。

そんなときはより具体的な契約書の作成例を解説した、以下の記事を参考にしてください。

ひな形は、各業界の特性を踏まえた内容になっています。たとえばデザイナー向けの契約書でいえば、デザインの著作権の扱いなど特有の事情が考慮されています。適宜カスタマイズすれば、自分の業務内容に合った、より具体的な契約書を作成することができます。

もしこの記事が少しでも「役に立ったな」「有益だな」と思っていただけましたら、サポートをご検討いただけますと大変嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。