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北前船の寄港地49ヶ所で、旅して学んで恋をして。

わたし、北前船に恋をしてしまいました。

みなさんは「北前船(きたまえぶね)」って知っていますか? わたしはつい最近までちっとも知りませんでした。

北前船

北前船とは、江戸〜明治時代に、上方(大阪)から瀬戸内海経由で日本海沿いを北上して北海道までを結んでいた商船のことです。旅をきっかけに北前船の存在に出会ってしまい、いまはもっと知りたいと思っています。もっと知りたい、それはもはや恋。

さらにわたしはあろうことか、全国にある北前船寄港地49ヶ所をめぐりたいと思っているのです。それがわたしのかなえたい夢です!

49ヶ所の寄港地がどこなのかについてはあとで述べますね。

それにしても、ドレスをつくる仕事をしているわたしが、北前船のどこにそんなに惹かれたんでしょう。


北前船とは

北前船は、江戸〜明治期の商業船です。大阪を出航した北前船は、尾道などの瀬戸内海を通って日本側を北上し、北海道までものを売り買いしながら運行していました。この、「ものを売り買いしながら」というところがワクワクするポイントで、これにより、その後の日本の文化に大きな影響を与えていくことになるのです。

北前船との出会い(自己紹介もかねて)

わたしは神戸在住のドレス作家です。以前は企業でファッション商品の企画デザインとMDの仕事をしていました。そのころ旅先でウェディングドレスに出会ってしまい(だいたい旅先で出会ってしまいがち)、それをきっかけにドレス作家として独立しました。

アパレル業界で環境問題への問題意識が高まり、わたしもドレスのリメイクに力を入れ始めていた矢先、コロナによってウェディングの仕事が激減してしまいます。わたしはこれを機に「通信制大学に入学して学び直し、学芸員資格を取る」という選択をします。衣装や繊維製品をはじめとする文化財の保存修復に興味があったからです。

コロナがあけて、大好きな旅ができるようになってまず向かった先が、北海道と北東北地方です。とくに東北地方での「こぎん」や「刺し子」、裂織などの「繕い(つくろい)」の技術ことを知りたくて。その旅を「いとへんの旅」と称して、誰に頼まれたわけでなく、わたし個人の興味と関心のために、もちろん自腹で、青森県や秋田県を旅してきました。

青森の刺し子

その後ご縁があって青森県に呼んでいただけるようになり、いまは「こぎん刺しのドレス」の制作プロジェクトに関わっています。じぶんで言うのもなんですが、めちゃくちゃかわいいんですよ、こぎん刺しのドレス! 

チラ見せ

すいません、話がそれましたね。そう、そんな風にして東北地方を旅するなかで、ちょくちょく耳にしたのが「北前船(きたまえぶね)」というキーワードでした。

秋田の端縫い衣装にしても、青森の裂織にしても、原材料となる着物の古着や端切れが、上方(京都・大阪)から北前船によって運ばれてきたことがルーツになっているそうなのです!

秋田の端縫い衣装

わたしが惹きつけられてやまない東北の衣装文化には、なんとわたしが住んでいる関西とのつながりがあったわけです。なんかうれしい。すごいぞ、北前船!

すると北前船がなんだか気になる存在になってきて。最近ではそのウッディーなルックスも、むしょうにかわいらしく思えてきました。これを恋と言わずしてなんと言うのでしょう。

北前船(模型)

もう、頭に乗っけたいくらいかわいい。

こんな感じで

わたしが北前船に惹かれたわけ

  1. 日本の衣装文化に影響を与えた

  2. 副業OK「旅をしながら仕事をする」起業家だった船乗りたち

  3. 北前船はSDGsなビジネスモデルなのでは?

1.日本の衣装文化に影響を与えた

北前船は前述のように、日本の「衣」の文化にも大きな影響を与えてきました。大阪・京都で積みこまれた着物の古着は、北前船によって北陸や東北に運ばれたのです。

たとえば秋田では、土崎港から河川流通を通して内陸にその端切れが運ばれ、秋田・西馬音内の「端縫い衣装」という踊り衣装に影響を与えたのではないかとも言われています。(参考文献 小坂太郎『図説 横手・湯沢の歴史』監修 國安寛・土田章彦、郷土出版社、2006年)

さらに古着の端切れは北前船により下北半島に伝わり、その端切れを裂いて横糸にして編み込んだ「裂織」が青森の南部地方で広まりました。

瀬戸内(尾道や倉敷など)で積み込まれた綿花や綿糸は東北に運ばれ、刺し子につながったそうです。(参照 https://www.kitamae-bune.com ) 

このように、北前船は日本の「衣装文化」に大きな影響を及ぼしています。

はるばる上方から運ばれてきた端切れや糸をとことん大切にして「衣」を作ったり美しく修繕したりする日本の「繕い」の文化。その素晴らしい文化をSDGsの観点から見直し、日本国内のみならず海外の人にも広く知ってほしいという野望が、いつしかわたしのなかにうまれてきました。

2.副業OK「旅をしながら仕事をする」起業家だった船乗りたち

北前船の船乗りたちは、船主からの雇われ仕事の他に、じぶんの商材を持ち込んで各地で商売をすることも許されていたそうです。すごいですよね。乗組員として勤務しながら副業OKで個人事業主としても仕事ができるわけです。

もちろんリスクもありますが、自分の能力を活かすこともできる。なんだかビジネスモデルとしてもおもしろいなあと思います。

3.北前船はSDGsなビジネスモデルなのでは?

各地を往復する「物流」としての機能だけではなく、商売をしながらものを売り買いしていたのがおもしろいです。瀬戸内海で買いつけた綿花などの積荷を東北で売り、北海道でニシンを買い付ける。ニシンは食用のほか、油や、肥料としても使われていたそうです。その肥料は、瀬戸内海で綿花を栽培するのに使われる。なんという循環!

船便というのがすでにモダールシフトな物流だし、行く先々で商売というのもおもしろい。これってじつはものすごい循環型ビジネスモデルなのでは? と思ってしまいました。


わたしが感じる北前船の魅力、まとめると次の3点です。

  1. 日本の衣装文化に影響を与えた

  2. 副業OK「旅をしながら仕事をする」起業家だった船乗りたち

  3. 北前船はSDGsなビジネスモデルなのでは?

社会人大学生のひそかな野望

わたしは北前船が影響を与えたとされる日本の「衣」文化を、全国49ヶ所の寄港地を旅しながら、調べてみたいと考えています。

問題は、やっぱり旅費ですよねえ。もちろん節約生活をしたり、青春18きっぷやマイレージや割引などをいろいろ利用したとしても、49ヶ所となるとなかなかです。

でもその旅費を、旅をすることによって得ていければ最高です。つまり、北前船の船乗りたちのように、「旅をしながら仕事をする」のです。

たとえば、青森で「こぎん刺しのドレス」をつくるプロジェクトに参加させてもらっているように、全国各地の伝統工芸品や布とコラボしたドレスをつくりたい。

さらに「書くこと」も仕事にしたい。

もしもわたしが北前船の乗組員だったとしたら、わたしが積み込めそうな商材は「ドレスをつくること」そして「書くこと」なのです。

「書くこと」に関しては、過去に文藝春秋SDGsコンテストで掲載された掲載誌を2冊持ち歩いて名刺がわりにしようと思っています。(でかいな)

そしてゆくゆくは、頭に北前船を乗っけて端縫い衣装を身につけてみたいです。

あくまでもイメージです
旅日記は用意しました!

全国の寄港地

それでは全国の寄港地49ヶ所です。あなたの住むまちは入っているでしょうか? 入っていたら行きます! 呼んでください! 

日本遺産 北前船データベースより「北前船寄港地・船主集落」の認定自治体

  1. 大阪市(大阪府)

  2. 泉佐野市(大阪府)

  3. 神戸市(兵庫県)

  4. 洲本市(兵庫県)

  5. 高砂市(兵庫県)

  6. 姫路市(兵庫県)

  7. たつの市(兵庫県)

  8. 赤穂市(兵庫県)

  9. 備前市(岡山県)

  10. 倉敷市(岡山県)

  11. 多度津町(香川県)

  12. 尾道市(広島県)

  13. 竹原市(広島県)

  14. 呉市(広島県)

  15. 浜田市(島根県)

  16. 鳥取市(鳥取県)

  17. 新温泉町(兵庫県)

  18. 宮津市(京都府)

  19. 小浜市(福井県)

  20. 敦賀市(福井県)

  21. 南越前町(福井県)

  22. 坂井市(福井県)

  23. 加賀市 橋立(石川県)

  24. 小松市(石川県)

  25. 白山市(石川県)

  26. 金沢市(石川県)

  27. 志賀町(石川県)

  28. 輪島市(石川県)

  29. 高岡市(富山県)

  30. 富山市(富山県)

  31. 上越市(新潟県)

  32. 佐渡市(新潟県)

  33. 出雲崎町(新潟県)

  34. 長岡市(新潟県)

  35. 新潟市(新潟県)

  36. 鶴岡市(新潟県)

  37. 酒田市(山形県)

  38. にかほ市(秋田県)

  39. 由利本荘市(秋田県)

  40. 秋田市(秋田県)

  41. 男鹿市(秋田県)

  42. 能代市(秋田県)

  43. 深浦町(青森県)

  44. 鯵ヶ沢町(青森県)

  45. 野辺地町(青森県)

  46. 松前町(北海道)

  47. 函館市(北海道)

  48. 小樽市(北海道)

  49. 石狩市(北海道)

以上です。スクロールありがとうございました。もちろん、こちらの認定寄港地の他にも寄港地やゆかりの地はあるようですが、まずはこの49ヶ所制覇を目指します。

行ったことのないところがいっぱいあってワクワクします。地元の兵庫県、ふるさとの広島県、旅で訪れた秋田県や、なにかとご縁のある青森県にも寄港地があってうれしい。

そして、寄港地には今回の能登半島地震の被災地も含まれており、今はまだその時期ではないと理解しつつも、寄付以外でもなにかわたしにできることはないかと模索しております。

この前、行政の関係のかたとお話する機会があり、「これから産業や文化でできること」も必ずあるとおっしゃっていたので、じぶんにできることを準備しておきたいです。

災害時の文化財保護について、神戸に住む学芸員のたまごが思うこと

わたしが神戸に住んでいるということもあり、阪神・淡路大震災の教訓を活かした災害時の文化財保護について、博物館学芸員資格のレポートのために調査していたことがあります。

阪神・淡路大震災の記録は、神戸市立博物館のウェブサイトに克明に残されています。これらの貴重な記録は、以降の博物館の災害対策に活かされたそうです。

大震災【震災と博物館】ー当館についてー神戸市立博物館

レポートのための調査の中で、平成19年の能登半島地震の文化財保護に関する文献を読みました。能登半島地震で被災した文化財の保存修復活動そのものが、地域の子どもたちへの文化教育として活用されたという事例もあったそうです。(参考文献 日高真吾『災害と文化財 —ある文化財科学者の視点から』国立民族学博物館、2015年、75〜82頁)

文化財の保存修復によって、地域のひとたちが自分たちのまちに誇りを持って、地域を愛することにつながる。そんなことのお手伝いができたらいいなと考えています。

前回の地震と今回のでは全然規模も違うだろうし、まずは人命や心身の健康や生活が第一ですが、学芸員のたまごのわたしにも、何かできることはないのかと、いろいろ考えている日々です。

地域を愛すこと

わたしは「好き」と思ったらまっしぐらなので、どこに行っても「好き」ポイントがあって、そのことをとことん調べて、ますます好きになってしまいます。

そのうっとおしいほどの「熱量」を、(たまに引かれることもありますが)みなさん広い心で受け止めてくださって、なんだか毎回思いもよらないおもしろいことが旅先で起こります。

わたしには何ができるというわけでもないけど、愛という科目においては自信があるのです。

北前船の寄港地「尾道」

まとめ

かなえたい夢まとめ

  • 全国にある北前船寄港地49ヶ所をめぐりたい!

  • 北前船について研究し、その魅力を発信したい!

  • 北前船と、それによる日本の「衣」文化を海外に発信したい!

  • それぞれの地域の魅力を知り、好きになり、発信したい!

  • それぞれの地域の文化や伝統工芸とコラボしたものづくりをしたい!


北前船寄港地49ヶ所をめぐったら、いったい何が待ち受けているんでしょう。ワクワクします。



だれにたのまれたわけでもないのに、日本各地の布をめぐる研究の旅をしています。 いただいたサポートは、旅先のごはんやおやつ代にしてエッセイに書きます!