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ロボット関連スタートアップの資金調達(2023年度下期)

2023年度はロボット関連のスタートアップが資金調達した!というニュースが多かったように感じます。半年前に上期分をまとめましたので、今回は下期分をざっとネット調査してみようと思います。

上期はMUJINが123億円、テレイグジスタンス社が230億円と大型の調達も目立ちましたが、さて23年度下期はどんな感じだったでしょうか??


物流系:引き続き、動きが活発!

上期に123億円という大型の調達を行ったMUJINは、下期はシリーズCエクステンションラウンドということで、日本郵政などから第三者割当増資による総額27億円の追加資金調達を行っています。これでシリーズCラウンド全体の資金調達額は総額150億円、累計資金調達額は232億円となってます。
物流関係の自動化が強いMUJINと日本郵便のコラボも素敵ですね!

ピッキングアシストロボットや自動倉庫の事業を行っているラピュタロボティクスも、リンクアンドモチベーションや東銀リースからの出資による資金調達を行っています。特にリンクアンドモチベーションさんからの出資は意外だったのですが、良い連携に繋がると良いですね!

また、自動倉庫を開発しているRENATUS ROBOTICS(本社は米国になっています)も、安川電機からSAFE型新株予約権の発行による資金調達を行っています。安川電機は後述するイチゴ農園にも出資しており、動きが活発です。

自動倉庫関連では、都市型立体ロボット倉庫システムを提供するCuebusも三菱倉庫やVCからのシリーズBの2.3億円の資金調達を行っていますね。

モノづくり系:ちょっと少な目!?

製造業系が少なかったのは気になったのですが、産業用ロボットの自律化を推進しているリンクウィズは、協調融資により総額4億円の資金調達を行っています。この資金調達で板金溶接業界向けソリューションの販売体制強化が行われるとのことです。

点検系:2社頑張ってる!

インフラなどを点検するロボット企業も動いています。
ugoは、23年12月にはNTTグループとの協業のためにNTTドコモ・ベンチャーズが運用するファンドから資金調達を行い、さらに24年1月にはビル管理や施設メンテナンス等の事業会社を含む複数の会社から、第三者割当増資による8.5億円の資金調達を行い、累計資金調達額は約16.5億円としています。

また、インフラ点検ソリューションを展開しているセンシンロボティクスは、第三者割当増資とデットファイナンスを組み合わせて、合計約22.5億円の資金調達を行っています。累計資金調達額は約58.5億円となっています。

農業・飲食系:幅広い

アメリカでおいしいイチゴを売っているということで有名なOishii Farmは、 総額200億円のシリーズBの資金調達を完了しています。NTT、安川電機などからの費用が入っており、これから本格的に植物工場を全米展開していくそうです。まだテレビで見ただけで、食べたことがなく、一度食べてみたいですっ!!笑

同じイチゴでも、東大発スタートアップのHarvestXは、プレシリーズA で総額約4億1,000万円の資金調達を行っています。

先に手作業でもブランドを確立したOishiiと最初から自動化ソリューションで入っていくHarvestX。戦略という意味でも興味深いですね!

農業自動化という観点では、AIとロボットで有機農業の自動化を進めるトクイテンも第三者割当増資と資本性ローンによるプレシリーズAの資金調達3.7億円(融資0.4億円)を行っています。

また、田んぼの自動抑草ロボット「アイガモロボ」の開発に取り組む有機米デザインも、第三者割当増資(シリーズA’) により、4.4億円の資金調達を行っています。アイガモロボという名前が好きです!

飲食系では、飲食の自動化を進めるTechMagicが資金調達を行っています。23年10月にはオリエンタルランドから出資、24年3月にはキューピー、味の素といったメーカからの第三者割当増資と融資を合わせて、シリーズCラウンドで25.4億円の資金調達を行い、累計調達額は44億円となっています。某テーマパークの裏方がロボットという日が来るかもしれませんね。

また、農業や食品加工の分野でも事業を展開されているロビットは、2.5億円のコミットメントライン契約を締結しており、累計の資金調達金額は7.5億円になっています。

要素技術系

ロボットソリューションの重要なパーツとなる技術を開発している企業も資金調達のニュースがありました。

近接覚センサーやそれを使ったロボットハンドを開発しているThinkerは、第三者割当増資により、1.4億円の資金調達を実施し、シリーズAとしては3.7億円、累計資金調達額は4.7億円となっています。

同じように、視触覚技術を使ったセンサーやロボットハンドの開発を行っているFingerVisionも、シリーズAラウンドとして、総額4.1億円の資金調達を行っています。まずはコネクテッドロボティクスとの取り組みも発表されていることから、食品加工から参入という感じでしょうかね。

エッジAIを開発するエイシングは、第三者割当増資による資金調達を行っていますし、球駆動式全方向型自律移動プラットフォームを作っているTriOrbもシリーズAラウンドにて3.3億円の資金調達、モデル予測制御MPCをコアとするProxima TechnologyもシリーズAエクステンションラウンドとして5000万円(ラウンド総額1.4億円)の資金調達を行っています。いずれもDRONE FUNDが関わっている案件で、陸・海・空のすべての移動体に投資していく感じですね。

また、自律ロボット遠隔支援サービスなどのロボットシステムやロボット開発技術を提供するキビテクも8.1億円の資金調達をおこない、累計10億円超えとなっています。

このように複数の案件が公表されていました!調達された企業の皆様、おめでとうございます!!

一方で、移動系のロボットなどが少なかったのはちょっと残念(見落としているだけかもしれませんが…)。搭乗型ロボットをやっているMOVeLOTくらいだったでしょうか。アメリカだと、小型の自走式ロボットによる配達サービスを行っているStarship Technologiesは、新たに9000万ドル(約133億円)の資金調達を行い、累積調達額は2億3000万ドル(約341億円)となったり、配膳ロボットをやっているベアロボティクスがシリーズCの資金調達で6,000万ドル(約90億円)を集めたりと、成熟化に向かう中でも大きなお金がまだまだ動いているようです。

中国勢の勢いはまだまだ旺盛

冷え込んでいるとは言われるものの、日本と比べると、まだまだ金額規模もダイナミックです。

ヒューマノイド

いつの間にか世界の四足歩行ロボット出荷量の60%以上を占め、累計販売量はトップといわれるUnitree社は約200億円をシリーズB2で調達。

低コストの4足歩行ロボットで市場を席巻しましたが、最近ではH1という二足歩行可能なヒューマノイドも出しています。まだまだ勢いありますね!

四脚という意味では、逐際動力(LimX Dynamics)が、エンジェルラウンドとプレシリーズAで併せて約2億元(約40億円)を調達。こちらも四脚から事業を始めて、ヒューマノイドの研究開発も進めているようです。

ヒューマノイド関係では、清華大学発のスタートアップである星動紀元(Robot Era)という会社がエンジェルラウンドで約1億元(約20億円)を調達もしています。おそらくニュースで流れていないのも含めて、国策もあり、中国の中ではヒューマノイド関連はかなり投資が行われているような気配ですね。

ヒューマノイドに関しては、世界的にもかなり熱が入ってきましたね。

ノルウェーに本社を置く「1X」が、OpenAIとの連携しているヒューマノイドの開発を加速させるために約145億円調達したことも話題になりました。

また、ロボット開発企業「Figure」がMicrosoft、OpenAI、NVIDIA、ジェフ・ベゾスなど有名どころから6億7500万ドル(約1000億円)の資金を調達して、いよいよヒューマノイドも米中対決!という感じです。

どうする日本?という状況ですが、一旦話を中国の資金調達に戻しましょう!!

移動ロボット

脚タイプではなく、車輪タイプはというと、こちらは本格事業化というフェーズが増えてきているようです。

配送ロボット関係では、都市部向けの自動配送ロボットを開発する「九識智能(ZELOS)」がシリーズAで約1億ドル(約150億円)を調達。すでに50以上の都市に導入され、レベル4での運行距離は累計200万キロメートルを超えているそうです。日本でいる中型中速というタイプでしょうか。

また、ロボットメーカではありませんが、北米地域でラストワンマイル配送を行う「UniUni」がシリーズB2で2000万ドル(約30億円)を調達しています。中国企業というよりも上海交通大出身の創業者が米国でガンガンと成長をしてさせている企業という感じで、4年余りで従業員が300人を超え、契約ドライバー1万2000人超、北米市場における荷物取扱量が1日当たり30万個を超える状況にまでなっています。こういう企業もいつかロボットを活用という流れになるかもしれませんね。

自動運転関連では、毫末智行(Haomo.AI)が、シリーズB1で1億元(約20億円)以上を調達。自動車の運転支援や自動運転が主力だとは思われますが、低速の配送ロボット「小魔駝」も行っているようで、ショッピングモール・スーパー、宅配便などで運用が始まり、既に30万件近くの配達業務を行っているそうです。

公道を走る自動運転だけではなく、空港で荷物を運んだりする車に目を付けて事情をしている「清維如風科技」も、エンジェルラウンドで数千万元(数億〜十数億円)を調達しているようです。

移動系ロボットでは、業務用清掃ロボットなどを開発する「霞智科技(ROSIWIT)」が、2023年下半期にプレシリーズA1で数千万元(数億円超)、4月にはプレシリーズA2でも調達し、2回のプレシリーズAを通じて総額1億元(約20億円)近くを調達しています。

掃除ロボットというと、中国の中でもガウジアンなど強い企業がありますが、まだまだ新しい会社が出てくる状況なんですね。

マニピュレーション

この他、マニピュレーション関係では、資金調達ではなかったですが、一番驚いたのが、ドイツのフランカ・エミカを「Agile Robots(思霊機器人)」が買収したことでしょうか。

22年に美的グループが大手産ロボメーカのドイツKUKAを買収したのに続き、ドイツのロボットメーカが中国に吸収された形になりました。

この他、リハビリ関係でも外骨格ロボット技術を開発する「程天科技(RoboCT)」が資金調達を行ったようです。既に医療機器として登録済みで、10万人のリハビリを実施したとも言われています。

というわけで、中国での資金調達は規模感が大きい案件が多い、かつ、使用実績の数字などがビックリするような値が出ています。どこまでカウントをしているのかがよくわかりませんが、いずれにせよまだまだ勢いはあり!という印象です。


では、また来週~!!
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安藤健(@takecando)
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