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定時先生!第26話 別にある

本編目次 

第1話 ブラックなんでしょ

 本棚に囲まれ、S中学校の国語科教員が一堂に会している。それぞれが向かい合う席にならぬよう、間隔を空けて座っている。校庭からは、体育の授業の元気な声が聞こえてくる。
 月曜日2校時目の裏番組、図書室での教科会議だ。S中学校では、週に1回、同教科教員同士で授業がない空きコマが重なるよう設定されており、検討事項があるときには、教科会議が開かれる。
 この日の議題は、夏季休業中の課題、そして、2週間後に控えた1学期試験及びその後の成績処理についてで、会議はもう終盤だ。

「年度初めに確認したとおり、今度のテストは、読解問題と記述問題は『思考・判断・表現』で、漢字や文法は『知識・技能』の成績に入れるのが原則ね」

 教科主任の吉野が確認した。
 前年度までの国語科は「話すこと・聞くこと」「読むこと」など5つの観点で成績をつけていたが、今年度からは、新学習指導要領の完全実施に伴い、国語科を含め全教科で、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に統一されたのだ。
 前年度には、新しい評価方法についての研修はあったものの、現場は手探り状態である。

「テスト作ってきたんで、お時間あるときに見てもらえませんか」
「中島さん、もうできてるの。まだ2週間前よ。相変わらず早い」
「もし、皆さんにお時間あれば、チェックしていただきたくて早めに作りました」
「じゃ、何か気付いたことあれば中島さんまでね。じゃ、これで教科会議終わります」

 2校時目の時間を半分ほど残し、会議は終了した。

「中島先生、試験作成も早いんですね」

 会議資料の角を揃えている中島に、遠藤が話しかけた。だが、本当に話したい内容は、別にある。

「単元終わるごとにちょっとずつ作ってるからね。遠藤先生は、今回テスト作るの?」

 他の者は退室し、図書室には中島と遠藤の二人きりとなった。

「作ります。吉野先生と分担して作ることまでは決めてます。どう分担するかは、これからです。今度作り方アドバイスいただいてもいいですか」
「もちろん」
「…あの、話変わっちゃうんですけど…」

 練習中止に対し、喜ぶソフトテニス部部長と、嘆くバドミントン部部長の姿を思い出す。

「以前部活のことで相談させていただいたんですけど…、中島先生が部活運営で大事にしていることってなんですか」