見出し画像

成長期の経営チームが組織拡大に真剣にコミットすることの重要性

先日の売上成長と従業員成長のリニアな関係に関するnoteは、反響も大きく、さまざまなご意見頂戴しました。今回はその続編です。

生産性が上がらない事業計画を書く経営者は少ない

ベンチャーキャピタルという仕事柄、さまざまなスタートアップの事業計画を見ておりますが「生産性がしばらく上がりません」というある種開き直った事業計画を見ることは滅多にありません。
その理由の一つに「生産性を上げる」こと自体が、誰も違和感持たないすごく当たり前の概念で、そもそも生産性を下げるもしくは維持の事業計画をつくろうという発想自体が無いのかもしれません。
また、スタートアップ経営者は自らのアイデアやテクノロジーの力で効率的な世の中を創ろうと考え起業しているケースも多いので、自ら運営する事業も生産性高い状態を当然志向するのかもしれません。
加えて、生産性の高い事業は投資家受けも良いので、ベンチャーキャピタルから資金調達をしているようなスタートアップは、生産性の高い事業というメッセージを事業計画を通じて投資家にしていくのだと思います。

そんなスタートアップ経営者からしてみると、マザーズ上場企業の売上成長率と従業員成長率のリニアな関係のチャートは、今まで当たり前だと思っていた概念と逆のファクトデータとして面白かったのかもしれません。

経営チームが「組織拡大」に真剣にコミットすることの重要性

このデータを見て、「一人当たりの売上がしばらく上がらないかもしれない」と割切ると、成長実現に対する従業員数の重要性がグッと増し、採用・離職抑制・育成・仕組み化といった人事施策のプライオリティへの真剣度がが増します。

この辺の真剣度が総じて高いのは、一度組織を大きく成長させた経験のあるシリアルアントレプレナーがいる経営チームや、人材関連のビジネスに携わってたメンバーがいる経営チームです。経営チームに大きなコミットがないと現状の日本の採用市場で戦えないことが経験でわかっていて、採用の体制・手法・改善のPDCを営業活動と同じようなレベルで回し、業績KPIとし扱っている会社が多いです。

組織・人事を軽視している経営チームはあまりないと思いますが、業績KPIレベルで経営チームが真剣にコミットしているスタートアップは、限られた印象です。
経営チームのコミットレベルが中途半端だと、採用活動へのリソース配分(リクルーター数・予算)、採用施策改善のPDCサイクルなども中途半端になり、昨今の採用環境下では、この部分が成長のボトルネックになってしまうケースも出てくると思います。

個人的には、スタートアップエコシステムが拡大していく鍵として、スタートアップ経営チームの採用リテラシーや採用コミットレベルが上がっていくことは、重要なポイントだと思っています。

SHIFT社のIR資料は組織拡大の真剣さがダダ漏れている

最後に、組織拡大に真剣にコミットしていていることが、外から見てもわかる一つの例としてSHIFT社のIR資料を紹介して締めたいと思います。
採用のKPIや打ち手に関して、ここまで詳細に開示している企業はあまり無いので、すごく参考になります。ビジネスモデル的にエンジニア採用が重要な業態ということもありますが、ここまでのレベルで取り組んでいるのかと唸りたくなるレベルです。
以下に2021年8月期のIR資料から3つほどチャートを抜粋してみました。

エンジニア正社員だけでも年間1300名増えているSHIFT社
それを実現するのに、人事は125名/ うち採用で78名人員をあてている
採用実現に向けた施策のKPIが軒並み良化

これらの資料以外にも、いろんなページに採用/ 人事関連のKPIが出てきます。「成長企業として徹底的に人事の人数を拡大。入社から退職防止まで幅広い領域をカバーできる体制に躍進」というメッセージは、まさにSHIFT社の組織拡大への真剣なコミットを表していると思います。

このレベルまではいかないまでも、こういった開示資料をきっかけに、組織拡大に真剣にコミットするスタートアップが増え、エコシステム全体が盛り上がっていくといいなと個人的には思います。