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「たのしみ方とつづけ方としらせ方」

 週末の深夜1時過ぎ。行きつけのBARでは決まって僕は大好物である黒ビールを2杯とその時にオススメのラム酒を1ショット分、同時に出してもらう。日本のビールは冷え過ぎているので、徐々に微温くさせて味わっていくというのは、アイルランドに出張へ行ってきたという知り合いから教えてもらった飲み方でとても気に入っていた。

「相変わらず、おかしな飲み方をしているのね」

 ビールのグラスから霜がすっかり無くなった頃、丁度入り口のある背中側から聞き覚えのある声でシニカルなセリフが聴こえてくる。視線を送れば、見知った黒髪の女性が1人立っていた。

「いらっしゃいませ、お久しぶりですね」

 マスターがそう言いながら彼女をこちらから観て2席空けて案内する。付かず離れず、この人はこういう所が本当に上手い。彼女に会うのは実に半年ほどぶりで、髪もやや伸びて、少々痩せたようにみえた。

「随分と見かけていないと思っていたら、飲みにも来ていなかったのか」

「まぁね。少しだけ体調を崩していていたのだけれど、最初に会うのが貴方だなんてガッカリ。ここにいないでもっと働いたらどう? 」

 病み上がりでも相変わらずの皮肉屋っぷりは十全に発揮されている。本質というモノはなかなかどうして変わらない。

「こっちだって12連勤明けで久しぶりに飲みに来ているんだ。少しくらい優しい言葉をかけて欲しいんだがなぁ」

 それはそれは失礼しましたと、彼女は席へ着くなりいつものカクテルをオーダーする。しばし煙草を吹かしたり、マスターと交互に話したりと、お互い自分の時間を満喫していたが、2杯目を飲み終わる頃に彼女がこちらへ口を開いた。

「そういえばnoteの方、上手くやっているみたいね」

「なんだ、読んでいたのか。誰かさんが飽き性の僕のために色々教えてくれたからな。ナンバリングはしない、初めから自己紹介しない、週に1度程度だけ書く……だっけか」

「それを意識すると書く方もそうだけど、読んでくれる方も疲れないのよ。もちろん、第何回! なんて銘打った方がやりやすい人もいるでしょうし、人それぞれだと思うけれど」

「あぁ、僕には丁度良かったかな。ただ、習慣化も出来てきたし書く頻度は増やそうと思っている。自分が楽しめるだけね。そこでちょっと困った事が出てきているんだ」

 また困り事なの? といった顔を彼女は見せるが、そのまま僕は話し続けた。

「生活サイクルにこの半年間で変化があり、15時に発信、更新の確認などをする事が難しくなってきました。連載記事を含めて今後アップする全ての記事を17時の更新にしたいと思います。宜しくお願いします」

「ちょっと。いったい誰に話しているのよ」

「君とマスター以外の、全ての人にさ」

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『バーテンダーの視(め)』はお酒や料理を題材にバーテンダーとして生きる自分の価値観を記したく連載を開始しました。 書籍化を目標にエッセイを書き続けていきますのでよろしくお願いします。