見出し画像

「純喫茶ウイスキー・ノ・アトーデ。」

「……お兄さんこの辺の人じゃないでしょ。東京の人?」

 店主の怪訝そうな表情がカウンター越しに見て取れる。……まずい、何か粗相をしてしまったか。

 今座っているこの場所は、実は地元の常連客用の席だったとか。それともこんな昼間からホロ酔いで来店している自分を不快に思ったのかもしれない。

 1年に一度の研修旅行。今回は北海道の余市へ。
 
 お酒好きでなくても一度は訪れたい日本のウイスキーの聖地。つい1時間ほど前、僕はここの蒸留所見学と試飲スペースのお酒を楽しんでいた。

 楽しくって美味しくって。気分良くなったついでに札幌へ帰る前に小樽の純喫茶で一息つく事に。トーストと珈琲が酔った身体には嬉しい。

「えぇ、そうです。あ、もしかして酒臭かったですか」恐る恐る言葉を返してみれば

「いやいや。じゃあポイントカードは要らない?」

 10回の来店で珈琲1杯が無料。今の僕の生活では何年かかっても貯める事は出来ないなぁ。

『バーテンダーの視(め)』はお酒や料理を題材にバーテンダーとして生きる自分の価値観を記したく連載を開始しました。 書籍化を目標にエッセイを書き続けていきますのでよろしくお願いします。