紙とインターネットのあいだで
6月にダイヤモンド社を退社し、独立しました。
7月からはフリーランスとして動いていきます。
ダイヤモンド社では『週刊文春編集長の仕事術』『SNSポリスのSNS入門』『女子高生社長、経営を学ぶ』『ぼくらの仮説が世界をつくる』『佐藤可士和の打ち合わせ』『アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉』など、さまざまな本をつくってきました。
5年間、本当にお世話になりました。ありがとうございました。
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ダイヤモンド社は、自由に本をつくることができる最高の環境でした。ただ、今回ぼくは独立という道を選ぶことにしました。
まだ完全には考えがまとまっていないのですが、今日は「なぜ独立したのか」を書いてみたいと思います。
最高のコンテンツを最適なメディアで
ぼくは約10年間、紙の本をつくってきました。
そのあいだ、出版を取り巻く状況はどんどん苦しくなっていきました。
電車や街なかで本を読む人は減り、ちょっとやそっとじゃヒットは出せなくなり、大好きだった書店さんがつぎつぎと閉店していきました。
ここ数年は「最高だ!」と思える本をつくっても、きちんと届けたい場所に届けられていないもどかしさがありました。
そこでぼくは、インターネットでの発信やSNSの活用に力を入れてきました。「編集者は黒子に徹するべし」という考えも承知のうえですが、それよりも著者やデザイナーと生み出した本が、ひとりでも多くの人に届くことを最優先に考えました。
こうして「届けたいものを届けたい人に届ける」ことを突き詰めていったときに、ひとつの出版社の社員として動くよりも、もう少し自由な立場で動くこともできるのではないか? と思うようになってきました。
最高のコンテンツを、最高のかたちで、最適なメディアで届ける――。
それを実現するためにフリーランスという立場でもいろいろ挑戦できるのではないかと思ったのです。
フローとストック。最適なパッケージと時間軸
たとえば、書籍にするほどのボリュームはないけれど、おもしろいコンテンツ、役立つコンテンツは多くあります。そういうものは「書籍」ではなく「インターネット」で伝えたほうがいいかもしれない。
テーマが時事的だったり、スピード勝負のものも「書籍」というパッケージにするよりも「インターネット」のほうが向いているでしょう。
逆にインターネットは「フロー」の特性が強いメディアです。どんなにいいコンテンツも長く読まれることはむずかしい。
しかし、次世代に遺すべき良質なコンテンツは多くあります。そういったものは「本」というものにパッケージして「ストック」させていくことも必要です。
より多くの人に届けるなら、インターネットでバズらせる。
より長い時間軸で届けるなら、本にパッケージして遺す。
コンテンツの内容と目的に合わせて最適なメディアを選んで発信する。そんな「編集」が実現できないか――。
10年やってきた紙の編集の経験を活かしながら、インターネットのフィールドでもさらに活動する。そんなふうに「紙とインターネットの橋渡し」をやっていくことであたらしい出版のかたちを模索できないかと思うのです。
「編集視点のライター」を目指す
独立の理由のもうひとつは「ライティングをもっと極めたい」ということです。引き続き「編集者」として編集の仕事も続けたいのですが、一方でライティングの腕も磨いていきたいと思っています。
どんなライターか? それは「編集視点で書けるライター」です。
「編集視点で」というのは簡単に言えば「読者目線で」ということになるでしょうか。
編集者は「このコンテンツは読者に届くか?」もっと言えば「このコンテンツはお金になるか?」を考えながら本をつくる仕事です。この視点は編集を10年やってきた自分の強みになるのではないかと思ったのです。
取材対象の持つ哲学やノウハウを最大限に引き出し、そのなかから価値あるものを整理し、届きやすいかたちにパッケージしていく。
そんな編集視点でライティングできる人になりたいと思っています。
まとめると、
「紙とインターネットのあいだで」「編集視点でライティングできる」編集者&ライターを目指したい。それが独立の理由でしょうか。
まだまだいろいろ書きたいことはあるのですが、まだうまく言えそうにないので今日はこんな感じで。
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