正しい生き方のための方法(932)
人間誰しも、できることならば正しい生き方をしたいと思っていることでしょう。仏教では、その生き方を八つ挙げています。それを「八正道」と言います。それらは、ビジネスの世界にも一般生活の中にも適用できるものばかりです。今回は、どのように生きるかを、例示とともに見ていきたいと思います。
ものごとを説明するときには、最初に結論または最も大切なことを言うのが一般的です。その意味で、正しい生き方の第一に来るのが「正見(しょうけん)」です。ものごとを正しく見るということです。その意味は、自我・我欲によって見るのではなく、過少・過大という一方に偏ること無く、レッテルを貼らずに、その裏に隠されている本質・基本的なことを見るべきだということです。よく「二階から見る」「大局的に見る」「中道」などと言いますが、それらと似たような意味と考えていいでしょう。
そして、ものごとを正しく見るという「正見」に続いて、ものごとを正しく考えて判断するという「正思惟(しょうしゆい)」があります。自分の欲望に従うのではなく、怒りの気持ちに従うのでなく、公平無私の判断をすべきなのです。
判断したものは、言葉にして説明するようになります。その際には、正しい言い方としての「正語(しょうご)」を重視すべきです。嘘をついたり、二枚舌を使ったり、悪口を言ったり、いいかげんなことを言ったりしてはならないのです。いったん言葉にしてしまうと、それは世の中に流布してしまいます。正しい言葉を使わないと、聞いた人は言った人を信用しなくなります。
当然のことながら、言葉だけでなく行いもまた正しく有るべきです。それを、「正業(しょうごう)」と言います。正しくない行いの代表例としては、殺生、偸盗(ちゅうとう、人のものを盗む)、邪淫(じゃいん、不道徳な性的関係)が挙げられます。
そして、私達は身・口・意のバランスのとれた、身の丈にあった生活をしていくべきです。それを、「正命(しょうみょう)」と言います。身の丈に合わない生活とは、謀(はかりごと)をして他人を陥(おとしい)れたり、虚偽の資料作りや改ざんをしたり、パワハラ、セクハラ、マタハラなどをすることを指します。それらは、最終的には巡り巡って自分に降り掛かってくることを銘記すべきです。
正見、正思惟、正語、正業、正命は、それらを自分の生活の中で繰り返す「正精進(しょうしょうじん)」という実践が必要です。
そして、この世の中は生かし生かされているということを念頭に、周りに対して正しい気遣いや思慮をするという意味の「正念(しょうねん)」によって、本質や真理に気付こうという姿勢を持つべきです。
今・現在の一瞬一瞬に、この場所で何が起こっているのか、それはどうして起こったのかと精神統一して、さらに集注していくという「正定(しょうじょう)」が最も大切です。
突発的な事故や、緊急に対処すべきことが起きた場合に、最も大事なのが、心が安定した迷いのない状態であり、その状態でものごとを正見し正思惟しなければなりません。そうしないと、誤った判断をしてしまいます。
これらの方法によって、安定した心の状態で、自分の最善の能力を発揮することができるようになります。
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