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【受験ノート】高校生の進路と仕事

試験の答案を、7クラス分、採点しました。一学期の定期考査の作文は、進路を(取り敢えず)決めて、志望動機を書いて下さいと云う問題です。自分のリアルの進路については、書きたくないと云う人もいると思いますから、架空でも構わないと、但し書きを入れてあります。解答用紙の右半分に書いてもらうんですが、600字~800字くらいは書けます。詰め詰めで、1200字くらい書いて来る生徒もいます。ある程度、多く書いた方が、ひとかたまりのコンセプトを、明確に伝えることができます。「多多ますます弁ず」ってとこは、やっぱりあります。書く量が少ないと、具体性に欠けて、よくあるようなテンプレートな文章になります。文章の量が少ないのに、ヒップホップのライムのように、きっちり韻を踏んだ、カッコいい文章にお目にかかったことは、本校に赴任してからは、一度もありません。相手の心に伝わるためには、ある程度の分量が必要です。

これまで、毎年、必ず、一定数いたのに、今年、皆無だったのは、銀行と云う進路です。何だかだ言っても、銀行が一番、恵まれているし、勝ち組だと云うパラダイム(思考の枠組み)が、令和元年のなう、とうとう崩れてしまったんだと感じました。確かに、もう大学生の希望する企業のベストテンに、大手都銀は、入ってなかったりします。それは、池井戸潤さんの半沢直樹シリーズで、銀行の裏が、完膚なきまでに、暴かれたからではなく、銀行の仕事は、AIが代替できるようになると云う都市伝説(今の段階では、まだ都市伝説だと思いますが)が、高校の現場にまで、行き渡ってしまったからだと推測しています。ビットコインのような、仮想通貨が登場して、リアルのお金そのものが、なくなってしまうと云う都市伝説さえ、噛(ささや)かれている昨今です。ラーメン屋でさえ、PayPayで支払いできる時代です。セブンペイとか、ファミペイなども始まりました。世の中がキャッシュレスになりつつあることは、実感として理解できます。

今年、異常なまでに進路希望者が多かったのは、美容師です。例年の3、4倍はいると思います。いくら何でも、こんなにいる筈はないと、懸念してしまいます。美容師=AIに奪われない職種、と云うsimpleな図式で、これだけ多くなってしまっているとも考えられます。美容室に行って、美容師さんに髪をアレンジしてもらって、感動して、これだと思ったと云うエピソードを、いくつか読みました。架空OKですから、嘘でも、話を盛っていても、それはそれで全然、構いません。ただ、40代、50代の方が、ばりばり活躍している職場なのかどうかは、美容室に行けば、一目瞭然で、理解できる筈です。看護も保育も、40代、50代で活躍されている方は普通にいます。若手からシニアまで、幅広い年齢層の方が、働いています。私がへアカットしてもらっている吉祥寺の美容室は、オーナーママとチーフが50代で、あとは全員、20代です。30代すらいません。美容師の場合、人に雇われて働けるのは、30歳までだと、考えておいていいと思います。30歳を越えても、美容師として活躍するつもりであれば、自分の店を持つ必要があります。中堅校ですと、将来、自分の店を持つことができる優秀な生徒は、確かにいます。が、そんなに沢山はいません。今年の美容師希望者の数から判断すると、店を持てるのは、まあせいぜい二人くらいあとの方は、30代に入って、確実に行き詰ります。40代、50代になった時の自分を、思い描く想像力も必要です。

保育希望の方も、たくさんいます。まあ、これは昔からいました。今年だけ、特別、多いと云うことではないです。保育も、間違いなく、AIが代替できない仕事です。ところで、40代、50代の方が、ばりばり働いているのは、主に公立の保育園です。狛江市や調布市の保育園には、ベテランの保育士さんが沢山います。無認可、or 無認可すれすれのグレーゾーンの保育園は、若い子ばかりです。若い子が、入れ替わり、立ち代わり、どんどん辞めて行く、そういうblackな保育園は、みなさんが想像している以上に、世の中にはどっさりあります。中堅校の生徒の大多数は、そういう保育園には、通ってなかったと推定できます。保育希望の生徒と喋っていても、保育の業界のblackを生徒は、まったく知らないと感じます。建設や不動産系の会社が、補助金目当てで、保育業界にどんどん参入して来ています。給料遅延、ボーナス支払われない、有給休暇とれない、そんなblackは、枚挙にいとまないほど、いっぱいあります。ですから、blackに行かず、公立の保育園に入ってもらえば問題なしです。保育職で公務員試験を受ける必要がありますが、半年くらい地道に勉強すれば、合格します。

学校の先生を希望している方も、例年より多いです。やっぱりAIに奪われないと云う観点から選択していると思われます。が、本当にそうかな「?」と云う気もします。たとえば、東進ハイスクールは、昔からビデオ授業です。他の予備校も、ビデオ授業を積極的に取り入れています。スタディサプリやクラッシーは、学校現場に、すっかり溶け込んでしまいました。もう、授業を直接受け持つ先生は、さほどいらないと云う時代になって来ていると感じます。もっとも、小学校の場合、AIには仕事を奪われないと思います。小学校は、やはりリアルなアナログで、人が人をきちんとお世話をする世界です。高校だと、ツマラナイ授業よりも、スタディサプリとかで全然いいよって、ことになりそうです。無論、学校行事や、生徒指導、メンタル面のケアなどを受け持つスタッフ(別に先生である必要はないです)は、必要です。そう遅くない内に、タブレットも配布されるでしょうし、高校だと、教科の先生は、もうさほど必要じゃないと云う時代になりつつあると云う気がします。テーマをきちんときめて、プログラミングをすれば、アクティブラーニングを仕切る、ベッパーくんだって登場可能です。

公務員希望者も沢山います。が、ほりえもんは、公務員の仕事こそ、AIが完全に代替できると断言しています。私は、ルーツ県庁の役人で、公務員の現場にいたので、ほりえもんの言っていることは、理解できます。公務員は、権限と職掌が、はっきりと決められています。その置かれたポジションによって、何をやるのかが、決定されているんです。その場の状況に合わせて、応用力を発揮するような場面は、皆無です。完全にAIが代替できます。何をやるのかと云う方向性を打ち出す、ごく少数の幹部の人たちは必要ですが、公務員の人員は、相当数、削減できます。一度、公務員になったら、親方日の丸で、生涯、安泰だと云う安定した職場だとは、多分、もう言えなくなると思います。

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