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僧帽筋(Trapezius)

Muscle マガジン第3弾は、僧帽筋です。

僧帽筋は上部・中部・下部という3つの筋腹から構成され、
それぞれが固有の機能を持ち、全体としての機能も有する少し特殊な筋肉です。

肩甲骨、脊柱、鎖骨に付着を持つことからも臨床上重要な役割を果たしています。

猫背や肩こり、投球障害など、僧帽筋の短縮や機能不全による影響もたくさんありますので、しっかり学びましょう!

僧帽筋の起始停止

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(Visible bodyから引用)

例によって今回も複数の書籍から見てみます。

起始:外後頭隆起、項靱帯、C7~Th12 の棘突起
停止:鎖骨、肩峰、肩甲棘
神経支配:副神経、頚神経
作用:肩甲骨挙上・上方回旋、肩甲骨を後方へ引く
(基礎運動学第6版)
起始:後頭骨上項線、外後頭隆起、項靱帯、C7~Th12 の棘突起・棘上靱帯
停止:鎖骨外側1/2、肩峰の上縁、肩甲棘
神経支配:副神経、頚神経
作用:上部⇒肩甲骨と鎖骨の肩峰端を上内方に上げる
   中部⇒肩甲骨の内転
   下部⇒肩甲骨下制・内転・上方回旋
(分担解剖学1総説・骨学・靱帯学・筋学)
起始:上項線内側1/3、外後頭隆起、項靱帯、C7~Th12 の棘突起と棘上靱帯
停止:鎖骨外側1/3、肩峰内側部、肩甲棘隆起の上唇、肩甲棘内側部と肩甲棘結節
神経支配:副神経、C3~C4腹側枝からの感覚線維
作用:上部⇒胸鎖関節挙上、肩甲骨挙上・内転・上方回旋
   中部⇒肩甲骨挙上・内転
   下部⇒肩甲骨下制・内転・上方回旋
(オーチスのキネシオロジー第2版)

学生の頃とてもお世話になった基礎運動学は、基礎と言うだけあって改めて見比べてみるとざっくりとしか書いてないんですね。

それでも学生の頃は覚えるだけで一苦労でしたが。。。

ざっくりと全容を捉えること、より細かく深く学び進めること、そのときの自分の状況に合わせて活用する書籍も変わっていくということがわかると思います。


僧帽筋上部線維は肩甲骨、後頭骨、鎖骨に停止することからも、
肩関節、頭頚部、胸郭など非常に多くの部位へ影響を与えることが想像できます。

中部線維と下部線維は現代人に多いスウェイバックや円背姿勢において筋力低下を呈しやすく、肩こりや腰痛の原因にもなっています。

また、副神経と頚神経の二重神経支配というのも特徴の1つですね。

筋機能

シュラッグ

上部線維からみていきましょう。

作用は肩甲骨の挙上・内転・上方回旋と、鎖骨の挙上です。

屍体を用いた研究では、上部線維は他の部分よりも小さく、肩甲骨ではなく鎖骨にのみ付着しているという報告もあります。

また、静止立位での上部線維の役割は明確ではありません。
筋電図を用いた研究では、直立位を維持するだけではほとんど活動しない、もしくは全く活動しないと報告されています。

僧帽筋上部線維の短縮は、肩甲骨の挙上と上方回旋を引き起こします。
同じく肩甲骨の挙上筋である肩甲挙筋の短縮では、挙上と下方回旋を引き起こすため肩甲骨のアライメント評価は丁寧に行いましょう。


中部線維は3つの線維の中で最も大きな横断面積を有するとも言われており、肩甲骨の安定性に重要な役割を果たすと考えられています。

いわゆる猫背姿勢の人は、中部線維が常に伸張される姿勢になるため筋力低下を起こしやすくなります。

これが肩甲骨の安定性を低下させ、肩の痛みにつながることも少なくありません。

一般の方であってもスポーツ選手であっても同様です。

肩関節のアライメント不良や腱板の機能低下の原因として、僧帽筋中部線維を含めた肩甲骨の安定性低下を背景にしている患者さんも多いです。


下部線維は肩甲骨の下制と上方回旋が主な作用となり、肩関節外転位での肩甲骨の安定性に大きく関わっていると考えられています。

つまり投球動作や洗濯物を干す動作など、手を上げた状態で動かすときに重要な役割を担っています。

特にオーバーヘッドスポーツでは、ゼロポジションでの肩甲骨の安定性は非常にポイントとなります。

一般的には常に伸張されることで筋力低下が起こると考えられており、
肩甲骨の挙上・下方回旋のアライメントの人は要注意です。


3つの筋線維で共通しているのは肩甲骨の内転と上方回旋です。

上部線維と下部線維は互いに拮抗して働くことで「解剖学的フォースカップル」と呼ばれる現象を引き起こします。

図1

これは肩甲骨が挙上や下制することなく上方回旋を可能とする作用です。

上部線維と下部線維の筋力が拮抗していないと肩甲骨が不安定になるのがわかりますね。

また、全体として有する肩甲骨の内転作用は前鋸筋の外転作用と拮抗して働くことで、こちらも肩甲骨の安定性に寄与しています。

筋膜連結

筋膜連結では、スーパーフェイシャル・バックアーム・ライン(SBAL)に僧帽筋は含まれます。

僧帽筋⇒三角筋⇒外側筋間中隔⇒手根伸筋群

僧帽筋と三角筋の接続については少し詳細に書いてみます。

アナトミートレインによると、三角筋は前部/中部/後部線維があり、それぞれ僧帽筋の後頭部/頚部/胸背部線維と連結しています。

肩の疾患などに三角筋の前部線維の過緊張などがある場合は僧帽筋の後頭部線維との関係性もチェックしておきましょう。

そうなると後頭骨やその周囲の筋についても評価が必要だとわかります。

僧帽筋の筋線維はすべて三角筋と連結し、三角筋粗面に収束します。

そこから筋膜線維が上腕筋の深層を走り、外側筋間中隔、手関節/手指の伸筋群へと続きます。

テニスのバックハンドショットや外側上顆周囲の疾患にも僧帽筋は関わってくるので、このつながりは覚えておきましょう。

経絡

経絡としては、「膀胱経」「小腸経」「三焦経」などが関係してきます。

膀胱経は下腿後面から大腿後面、脊柱にそって走行します。

ハムストリングスでも触れているので、こちらもご確認ください。

小腸経は小指から前腕、上腕の後面やや内側を通り、肩甲骨上角あたりから頚部に向かって走行しています。

図1

小腸経は肩が上がってしまっていたり、巻き肩の人で硬くなっていることが多いです。

ほかにも野球やサッカーでよく使う、「脇肘を効かす」という表現で使われる部分との関りも深いです。

もちろん小腸の問題から硬さが生じることもあるので、食生活や腹部の硬さも要チェックです。


三焦経は筋膜連結でも紹介した、「SBAL」とほぼ同様のラインと通ります。

薬指から始まり、前腕、上腕のほぼ真後ろを走行して耳の裏までいきます。

上腕部分では小腸経よりもやや外側で、肘の真裏を通ります。

三焦経は、特定の内臓というよりは全身の循環に関わると考えられています。

全身の循環を考えると、胸郭や呼吸の深さ、腹部の硬さ、隔膜などについても知識を深める必要性を感じますね。

僧帽筋の周辺組織

画像5

(Visible bodyから引用)

僧帽筋は胸背部を広く覆っており、肩甲骨や鎖骨、頚胸椎や後頭骨に付着していることからも、多くの組織と近接していることがわかります。

僧帽筋の深層には頚部の伸展作用を持つ「板状筋群」、肩甲骨を下方回旋させる「肩甲挙筋」や「菱形筋」、さらにその深層には「最長筋」などのいわゆる背筋群が位置しています。

これらの滑走不全は肩甲骨の可動性を低下させ、胸椎や肋骨の可動性も低下させます。


また頚部周囲からは腕神経叢や動静脈も多く出ており、多様な症状の一因となっていることも少なくありません。

僧帽筋はこれらの組織の最も表層にあり、結果として機能不全を起こしていることが多いです。

つまり、僧帽筋自体が問題となっているというよりも、他の部位の問題を受けて僧帽筋が硬くなったり筋力低下を起こしているということです。

他の問題とは、例えば姿勢(猫背やヘッドフォワード)、腱板機能低下、投球フォームの問題などが挙げられます。

よく肩こりの筋肉として知られる僧帽筋ですが、どれだけ肩をもんでもよくならなければ他のところに問題があるのかもしれません。

僧帽筋が硬いのは結果であり、原因ではないことが多い、
これはよく覚えておきましょう。

まとめ

今回は僧帽筋についてまとめました!

面積としても大きく姿勢や投球動作にも影響の大きい筋肉ですが、その分痛みや悪い姿勢にもつながりやすい筋肉です。

しっかりと起始停止などの解剖学的な特徴、部位別の筋機能、全身とのつながりを把握して臨床で活かしてみてください!

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