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小胸筋(Pectoralis Minor)

今回は猫背姿勢などで一般の方でも問題となりやすい、小胸筋についてみていきましょう!

以前、大胸筋については解説しています。

小胸筋はその大胸筋の深層にある、肩甲骨や肋骨を動かす筋肉です。

この筋肉が硬くなることで猫背になることもあれば、逆に疲れていたり自信がなかったりすると普段から猫背になって小胸筋が硬くなることもあります。

もちろんデスクワークの方も姿勢が悪くなりやすいので要注意です。

そんな、現代人にとっては問題が起こりやすい小胸筋。

しっかり理解しておきましょう!

小胸筋の起始停止

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起始:第3~5肋骨
停止:肩甲骨烏口突起
支配神経:内/外側胸筋神経C7~T1
作用:肩甲骨を前下方に引く、強制吸気で第3~5肋骨を挙げる
(基礎運動学第6版)
起始:第(2)3~5肋骨
停止:肩甲骨烏口突起
支配神経:内/外側胸筋神経C7~(T1)
作用:肩甲骨を前下方に引く(同時に肩甲骨の下方回旋)、強制吸気で第3~5肋骨を挙げる
(分担解剖学1総説・骨学・靱帯学・筋学)
起始:第3~5肋骨の肋軟骨前面や上縁
停止:肩甲骨烏口突起内側縁と上面
支配神経:内/外側胸筋神経C5~T1
作用:肩甲骨前傾(肩甲骨挙上・下制・内転・外転・下方回旋)
※詳細は後述
(オーチスのキネシオロジー第2版)

小胸筋の付着部はどの書籍でも共通していますね。

しかしその作用はやや複雑となっています。

その理由は、小胸筋と肩甲骨の間に曲線状の胸郭があるために収縮によって起こる肩甲骨の運動が複雑になっています。

筋機能

一般的な小胸筋の作用は、肩甲骨を前方へ引く(前傾)ことは間違いありません。

実はそれ以外にも、肩甲骨に対する作用としては下制や挙上、内転や外転といった一見矛盾した作用がいくつか報告されています。

これらのややこしさの原因は、小胸筋と肩甲骨の間に胸郭があることによって起こっています。

最初に挙上と下制のメカニズムについて考えてみましょう。

小胸筋矢状面

小胸筋の収縮によって肩甲骨は前傾します。

肩甲骨が前傾しようとする際、胸郭の上方が狭くなっているために肩甲骨は胸郭上を上方へ滑ることで前傾ができます。

これが小胸筋の作用によって肩甲骨が挙上するメカニズムです。


一方で小胸筋の走行を見ると、明らかに肩甲骨を下制方向へ引くように見えますよね。

つまり、前述の肩甲骨の前傾作用が働かない場合は小胸筋は肩甲骨を下制する方向へ働くということです。

前傾作用が働かない場合とは、肩甲骨の後傾作用を有する筋群と共同で働く場合ということです。

例えば僧帽筋下部線維などとの共同収縮の際は肩甲骨を下制方向へ引くことで肩甲骨の安定性に関与します。

(僧帽筋についてはこちら)

松葉杖なんかを使用する際の肩甲骨挙上を抑える時などに使われています。

まとめると、小胸筋の単独収縮(厳密には単独ではありませんが)では肩甲骨の前傾に伴って挙上が、肩甲骨下制筋群との共同収縮では下制を起こしています。

はい、ややこしいですね笑


次は肩甲骨の内外転について考えてみましょう。

小胸筋前額面

考え方は挙上/下制と同様です。

小胸筋の働きで烏口突起を内下方へ引くと、間に胸郭があるせいで肩甲骨には外転方向のベクトルが生まれます。

この外転方向へのベクトルに対しては、肩甲挙筋、大/小菱形筋と共同して解剖学的フォースカップルを形成します。

つまり肩甲骨の外転作用を上記の3筋による内転作用によって互いに打ち消し合うことで、下方回旋のみの運動となります。

内外転に関しては小胸筋は主として働くことは少なく、主にフォースカップルによる安定性を提供しています。

筋膜連結

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小胸筋はディープ・フロント・アーム・ライン(DFAL)に含まれます。

小胸筋⇒上腕二頭筋⇒橈骨筋膜⇒母指球筋

過去には、上腕二頭筋で解説していますのでこちらも参照ください。

経絡

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こちらも上腕二頭筋と同様、肺経のラインになります。

詳しくは上腕二頭筋の記事を参照ください笑

小胸筋の周辺組織

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(Visible bodyから引用)

小胸筋は胸郭出口症候群で神経や血管を絞扼する筋としても知られており、周辺組織の構造は重要になります。

小胸筋の真下を腕神経叢や腋窩動静脈が走行します。

そのため、普段から前傾姿勢の方や、投球動作などで伸張を繰り返すアスリートなどで小胸筋由来の胸郭出口症候群が起こります。

他にも腋窩リンパ節や靱帯、筋、関節包なども多く存在しているので特に肩関節疾患では注意深く触診、評価していく必要があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

肩甲骨の前傾がイメージとして強い小胸筋ですが、少し細かく見ていくと色々な発見があると思います。

ぜひ臨床でも様々な角度から肩甲骨を評価する際の一助になればと思います。

それではまた来週!

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