見出し画像

スポーツトレーナーやコーチ、指導者という職が食べていくためにはどうすればいいのか?

「今の時代、自力で頑張れば食べていける。マーケティング実践し自己プロデュースすればいい」みたいな話は一旦、置いときます。日本ではそれをしなくても食べていける仕事は沢山あります。今回は職業としての話です。

食べていくの定義が月15万でも地域によっては食べていける人もいるし、家族がいる人は月30万でも食べていけるとは言えないという人もいるかもしれないので、その辺の定義についてはここでは日本の中央値の年収400万円(月33.3万)として考えています。スポーツチームの指導or競技アスリートのパーソナル指導をしていて年収400万円を稼いでいる状態を「スポーツで食べていく」と定義としてます。

①どこかに勤めて年収400万円以上の給与をもらう
② 個人事業主として復業年収で400万円以上を稼ぐ
③どこかに勤めて副業でスポーツの指導をする

どこかに勤めてというのは企業(プロチームの運営会社を含む)だったり学校などの法人を指します。toBからもらうのか、toCからなのか、ビジネスモデルの違い、どの財布から支払われているのか、支払う人はどうやってお金を得ているのかまで考察すると長くなるので今回は省きます。

スポーツの現場だけで400万以上稼ぐとなるとプロのトップリーグあるいは大手企業の実業団が条件になると思いますが、正社員のような契約形態はほぼありません。正社員で達成できるとすると、現場よりもマネジメントクラスになると思われます。

スポーツ競技人口が1000万人いるとして、指導する職の人(コーチやトレーナー)は20万人と仮定すると最低でも8000億円は必要なわけです。8000億円以上のお金をどこから生み出すのか?1000万人が年間で指導料に支払う平均が年間8万円必要です。1人あたり月6667円を支払う必要があります。

レベルに応じて投資する金額に違いはありますが最低ラインで月6000円は1人あたり支払うことが当たり前にならないと指導者が食べていくだけのお金は落ちません。あくまで人件費なので、その他の費用にもお金を使うとなるともっと費用がかかるので人に残る金額は僅かになります。toBを絡めた収益やクロスセルなども考えたとしても、一人当たりのスポーツにかけるお金の最低金額が見えてきます。

年400万を稼ぐためにはその方法論としてパターンを分ける必要があります。

  1. 1社からあるいは数人のアスリートからの支払いだけで稼ぐことができる人たち。これは個人事業主として活動し、数ヶ月または単年契約、複数年契約を繰り返し、プロ選手と同じ状況で働く人です。必要なのは機会提供ときちんとした契約内容をまとめる必要があります。おそらくエージェントに近いサービスが必要です。300チームあって指導するスタッフが平均5人(ヘッドコーチ、アシスタントコーチ、その他のコーチ、トレーナー各種)20万人のうちのたった1500人となります。1500人が400万となると60億です。

  2. 個人事業主としてスポーツ現場(働く場)を複数持ち、収益のポートフォリオを組みながら稼ぎをつくる復業サービス。例えば週60時間〇〇で、週45時間は△△で、週30時間は□□で、働くといったことができるサービスが必要です。これを全体20万人の20%として4万人が実現したとして1600億以上を生み出す必要があります。BtoBでの取り組みが重要だと思っています。チームの指導をメインとするならスポーツする時間の分散をしなければいけません。1日3時間拘束で部活やアマチュアで仕事として指導をしたとして1回6000円なら20日入って月12万円しか収益になりません。時間にして月60時間。副業としてやるか、或いは個人事業主として残りの140時間を時給1500円で働いて月21万円。合計で月33万円の収益になります。パーソナルコーチやトレーナーは箱を持ってそこに来たお客さんからお金を頂くパターンと選手がいる場に出張してサポートしてお金を頂くパターンがあります。

  3. 本業は全く関係ないことをしつつ、個人のスキルや経験から副業としてやるやり方。本業の所得に限らず、その人が通えるエリアにあるスポーツ現場に定期的に行ってもらう形です。一定期間の契約をして〇曜日の〇時間を確保してもらい、毎週、隔週といった形で実現するやり方です。人を確保しつつ、行政との協力、地域限定で始めてそのエリアを拡大していく必要があります。広げ方はフードデリバリー系のサービスが参考になるかもしれません。あくまで副業のなので本業として稼ぐ方法は各個人によるので、これでいくら稼げるかで言えばコミットしても10〜15万程度が限界値になると思います。なのでスポーツ”だけ”で食べていくとは言えませんが、他に収入があって好きで仕事にしてるので問題はないと思っています。あくまでセットなだけです。

3つ全てをバーティカルに作る必要性があります。コーチやトレーナーにとって安全圏と理想的な働き方の段階を作っていく必要があるからです。この3つをステップに、あるいは個人のキャリアに合わせて選べる仕組み化が必要です。弊社Ascendersはその仕組み化に挑んでます。


なぜ仕組みが必要なのか?

正直、昔の私自身の考えは「そんなもん個人の問題で、自力で頑張れ」でした。どの業界だって個人の努力の世界だろと思ってました。しかし、起業してからその考えは変わりました。

スポーツ産業全体の生産性を上げることが、自社の成長、業界課題解決に必要だと考えた時、働くハードルが高く、強者だけが生き残る仕組みだと業界は成長しないと知ったからです。

きっかけは共同創業者の宮代が「強者しか生き残れない世界、運や人脈が全てみたいな業界はダメだ」という意見を聞いた時です。

「橋本はスポーツで挫折してない。自分の意思で辞めて起業してサポート側に回ってるからその考えだけど、殆どは選手として挫折して、しょうがなくサポート側に回ることを決意した人たち」と宮代に言われたことがあります。

スポーツ界で新卒でトレーナーとしてフリーランスとしてやっていた宮代からの意見は、周囲の志をもった同期が気がつけば殆どいなくなる、大人たちは夢を語れば否定し、スポーツを諦めろと言う体験だった。

だから「本気で努力したら、ちゃんと報われる世界。運や人脈の要素を少なくし、平等にチャンスをもらえる仕組み。強者じゃなくても理想の形が見つけられる」これが創業前からの口癖でした。

自分はかつてその考えに共感できなかった人です。ただ、ほかの成長している業界を見た時、現代の働き方のパラダイムシフトを感じた時、様々なビジネスモデルや新しいサービスに触れ、調べるうちに考えは変わりました。

例えば伸びてる業界、IT業界はエンジニアをはじめ多くのポジションで人材不足です。そのためIT人材になるための学習サービス、業界に入るための窓口サービス、フリーランスでも働けるサービス、上流のヘッドハントのサービスと、各段階に合わせたサービスが沢山あります。フリーランスや復業が増え、当たり前になりつつある令和になり、サポートするサービスはかなり増えています。

決して、自力で学んで、自力で仕事を見つけて、自力でキャリアを積んで、運や人脈だけで仕事はしてません。IT業界の規模、特性から考えて、需要が全く違うのでイコールにはなりませんが、各方面の多様なサービスによって働く側のためのサポートがある業界の働く人たちとサポートのない業界の働く人たちの差は明らかで、その差が業界の成長速度や規模に大きく影響を与えてるのは間違いないと確信しました。

需要があって儲かる世界はサービスがどんどん出てきます。スポーツはサポートするサービスがない業界です。しかもフリーランスや復業が20年以上前から当たり前な世界だったのに、だったからこそかもしれませんがサポートはなく、自力で頑張った強者と運が良かった人が働く形になったのかと思います。スポーツ業界の勝ち負けの文化もよりその考えを加速させたかもしれません。

儲からないから誰もやらないだけじゃないか?確かにIT業界や介護業界など明らかに人課題のある市場で成長市場の方が見えやすいし、参入してくる人は沢山います。賢い人ならそこにいきます。スポーツのような難易度の高く儲からない、割に合わないことを賢い人ほどやりません。

起業家としてはそこにチャンスがあると思えたし、それ以上、業界の根本的な課題にアプローチができ、その先で大きな市場獲得、儲かる世界を描けると思ったからです。故にスポーツ産業を成長させる合理的な考えとして、働く人たちのサポート、環境整備は必須だと思えるようになり、今に至ります。

デフレからの脱却

スポーツは特に、経済的格差によるスポーツの機会格差を嫌う人が多くいます。それ自体は私も賛成ですが、機会と環境の差、サービスの差は別問題と思っています。現代においては機会と環境の差は所得だけでなく、周囲や自身の情報収集能力に左右されたり、住んでいるエリアによって差があるので、サービスの差というのは単価に見合った何を得れるかという話です。

3万円払った指導と3000円支払った指導とでは何が違うのか?飲食店の3万円のコースと3000円のコースの違いと基本の相違はありません。店の内装、サービス、原価(その価値提供までに費やしたお金)の違いです。どっちを選ぶのかも、どっちに満足するかも人それぞれです。指導する側のサービスに明確な違いをどう生むのかです。

本業は全く関係ないことをしつつ、個人のスキルや経験から副業としてやるやり方が一番楽な方法のように思えますが、これはボランティアや安い給与が発生した例です。学校の先生という業務をしていれば部活という機会を与えられ指導することができます。学生スポーツはそれによって機会と環境を与えられています。学費という一律でお金を集めることで、その業務の対価を貰い、学校単位でのハード面の環境を整え、スポーツの機会と環境を整えることは理にかなっています。学校の方がプロより良い環境があるのは、ビジネスモデルと売上規模の違いだと言えます。私立の大学で1000億以上の売上があります。

スポーツは無人化され、より安価にできる世界が加速します。セルフトレーニングができます。競争社会(スポーツ競技の特性)で「負けたくない」「上手くなりたい」欲求が指導における有人化との差別化が求められます。安全面や競争環境によって生まれる上達環境など、無人化とセルフトレーニングではできないサービスの差を明確化することです。さらにはサービスの本質はスポーツを始める、入口の課題と継続の課題を解決し、スポーツライフタイムバリュー(SLTV)を上げることにあります。

Ascendersの考えは一貫して、スポーツで働く側の立場に立ち、彼ら彼女らの仕事のサポートをしていくことです。そして支払う対価の違いをクライアント自身に体験してもらうことです。低いことよりも上がらないことが問題なわけで、そのためには職業、市場の価値を上げること、次に個人とサービスの違いを作ることが必要です。

別のnoteにもスポーツ界の給与について書いてます。合わせて読んでみてください。


スポーツベンチャーの最初の【採用担当者】募集してます!


自分にしか発信できない、スポーツに関わる全ての方にとって役立つ情報をGiveし続けたいと思います。