90年代の音楽を知らないアナタへ その14 BUTTERFLY(97)/MARIAH CAREY 身も心も女になったマライアの最高傑作
私がマライアを初めて知ったのは93年のアメリカン・ミュージック・アワード。ノミネートは「I'LL BE THERE」で2冠ほど獲った夜だった。残念ながらパフォーマンスはなかったものの、受賞前に流れるノミネーションビデオだけですぐさま虜になってしまうほど、抜群な吸引力があった。そしてスピーチする姿もスターのオーラ全開。なにより美しかったのを今でも鮮明に覚えている。
その後も数々の伝説的なセールスを記録したり、ライブが評判になったりと彼女を取り巻く環境はどんどん勢いを増していき、それをリアルタイムで追い続けていた私は、時代のスターが生まれていく過程を目撃していることが楽しく、ますます彼女の音楽へのめり込んでいった。
「歌を聴かせる」正統派のボーカリストであり、ストライサンドなどに並ぶ才能であると誰しもが確信していた。
そんな周りの期待を知ってか知らずか、95年に彼女はシングル「ファンタジー/FANTASY」で変えてきた。正直私はマライアに時代のトレンドを求めてはいなかったし、当時のファンもそういう目線で応援してはいなかったと思う。なにせ「正統派」で良いのだから。たしかに95年はすでにヒップホップ最勢力期だったが、ヒップホップをやるならほかのアーティストで十分。何もこの人がわざわざやらなくてもと私は感じていた。しかし結果、この曲を収録したアルバム「デイドリーム」はアメリカ国内だけでもダイヤモンドアルバム(1000万枚)に認定。最初はマライアの最新アルバムということで普通に聴いていた私も、次第に「こりゃ大変なことになってきた」と、自分が応援している一歌手が時代の寵児になってしまったことにすっかり高揚していった。(※この曲と「デイドリーム」がマライアだけでなく、90年代のアメリカのメジャー音楽にどれほど影響力が大きかったかという話しは別の機会に(できれば)したい) 。
デビューして7年が経過しようとする頃、すべての音楽ファンがマライアの次なる一手を心待ちするようになっていた。そんな矢先に出たのがアルバム「バタフライ/BUTTERFLY(97)」である
その15へ続く
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