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011:汗水流して「想い」を普及させる|クレイジーで行こう!第2章

『クレイジーで行こう』を10万冊売るためには!?

「マイク、PRの企画が決まったぞ!」

僕がそう連絡したのは、6月下旬の金曜日のこと。それまでなかなかPRの企画が決まらなかったが、ついに「これだ!」と思う企画に巡り合ったのだ。

そもそも株主である栗田工業からトレーニーとしてフラクタに派遣されていたマイクが、コロナ禍の中で日本に戻ったのは、日本でも徐々にメディアに対する露出が増え、日本でも本格的かつ体系的に広報PR活動を行わなければならないと感じたからだった。

製品には自信がある。僕たちのソフトウェアを水道会社が導入してくれれば、水道配管の腐食予測の精度が高まり、かなりのコスト削減になる。普通に営業をしていけば確実にシェアが取れるだろう。

ただ、ゆっくり待っているつもりはない。そのスピードを加速度的に向上させたい。そのためには何が必要なのか……。

日本でフラクタのソフトウェアを広めるためには、マインドの部分で共感してもらう必要がある。そのために、僕の著書『クレイジーで行こう!』(日経BP社)を10万冊日本社会に普及させるという目標を掲げた。なぜなら、日本で僕たちのお客さんになってくれたのは、『クレイジーで行こう!』を読んでくれていた方たちだったからだ。

ヒリヒリする逆境や、寝食を忘れるほどのがむしゃらな姿勢、人との出会いや別れ――。そんなものを通して、僕たちがやってきたことを伝えていく。機能だけではなく、気持ちに訴えかける勢いがなければ、スピードを上げて普及させていくことはできないだろう。

ただ、それをどうやって広めていけばいいのか。僕たちはよいアイデアを出せないまま、マイクを日本へ送り出したまま、数か月の間、悶々としていた。

YouTubeで配信する自転車の旅がスタート!

「何かクレイジーなことをやらないといけないかもね。都知事選にでも立候補しないとダメなんじゃないか?」

マイクと電話で話しているとき、冗談交じりにそう言ったこともあった。アメリカのメンバーにも、いいアイデアがあれば教えてほしいと言っていた。

ある日、メンバーとランチをとっていると、日本人のモモが「マイクさんのことでいいアイデアを思い付いたんです!」と切り出した。

「マイクさんが『クレイジーで行こう!』を10万冊売るまで、彼をアメリカには戻さない、っていう話がありましたよね。それなら、マイクさんがキャラバンを作って、日本一周みたいに本を売り歩くのはどうです? それをYouTubeで配信すれば、たくさんの人が応援してくれるんじゃないでしょうか」

これまでいろいろなアイデアを自分でも出し、他の人からも聞いてきたが、久しぶりにいろいろなことがつながるいいアイデアだと感じた。

マイクは知らない人の懐にもスッと入っていく独特のキャラクターがある。決して英語が流暢なわけではないのに、アメリカ人ばかりの場所にいても、いつの間にか笑って雑談をしている。人が良く、いろいろな人に好かれるタイプで、この企画にぴったりだと思った。

モモは「キャラバン」という表現を使っていたが、僕は「自転車の旅」がいいと思った。IT企業だからといって、涼しい場所でキーボードをたたいているだけで社会が変えられるとは思えない。多くの人には時代錯誤と言われるかもしれないが、肉体を使って汗をかくからこそ得られるものもあると、僕は信じている。

善は急げと、僕はすぐマイクに連絡をした。日本が朝になるのを待って電話をかける。

「メール見ました。とんでもないことになったな、と思いましたが(笑)、やります!」

そんなわけで、マイクの旅とYouTube番組がスタートした。

水道局長や市長にアタックしているか?

YouTube番組を企画して始めたからといって、当然ながら万事うまくいくわけではない。その中で、日々配信する内容が大切になる。

僕は電話でマイクに尋ねた。

「マイク、市長さんや水道局長に会えるように工夫してるか?」

「いや、それはむずかしいですね」

当然のようにチャレンジをあきらめるマイクに、僕は強めの口調で言った。

「マイク、冗談じゃない。僕たちが果たそうとしている役割を分かってるか?ソフトウェアは蓑田君たちのおかげで精度が飛躍的に上がった。もし水道会社が導入してうまくいけば、配管更新工事に対する年間投資額が半分も削減されるかもしれないんだ。それは、水道会社の経費全体の15~20%が削減できる計算だ。そんな宝のような話を持っているのに、なぜ『俺にはできない』なんて思っているんだ」

YouTube番組というと、飛び道具のような、面白おかしい企画のように思われるかもしれない。もちろんそういう要素も必要だが、本筋はそこではないのだ。

涼しい顔をして社会益を語り、信じてもらえるか?

近頃、フラクタは商品を売っているのではないとすら感じている。水道局の経費を削減できることは、物理的、コンピューターサイエンス的に証明できている。だからこそ、結局はその証明を「信じられるか。信じられないか」という話なのだ。

僕たちにとってみれば、1億円の入ったジュラルミンケースを持って水道局に行き「これを差し上げます」と言っているようなものだ。ところが、現金のように目に見えるわけではないから、「1億円が手に入る」と本気で信じてもらうのは簡単ではない。

信じてもらう方法を考えるほど、布教のようなものかもしれないな、と思う。キリスト教や仏教は、はたしてどんな方法であそこまで広まっていったのだろうか。考えてみれば多くの宗教は「神を信じれば救われる」という、初めて聞いたらとんでもない話だ。誰も証明できないことを、どうやって信じてもらっていたのだろう。

僕たちも、涼しい顔をして「社会のためになります」と言っているだけでは、誰にも信じてもらえないのではないだろうか。インターネット広告をうまく使えば、もしかしたら汗をかかずに売ることもできるかもしれない。でもそれは、何かが不足しているように感じるのだ。

今マイクは、1日に7時間ほど自転車をこいでいるという。日常的に、7時間もスマホを見ずに思考を深めることは、現代人にはなかなかないだろう。孤独の中で自分と向き合いながら自転車をこいでいると、考え方が変わってくる、と彼は言う。

「水道会社にアポを取ろうとしても、断られてばかりです。そんな経験をするたび、最初は製品のせいにしたり、相手を恨んだりしていましたが、最近は『なぜこんなにいいものに気が付かないんだろう?もったいないな』と思うようになってきました」

その話を聞いたとき、大げさではなく、悟りを開くために荒行をする修行僧を思い出した。断りの滅多切りを受けても、なおへこたれない気持ちは、修行のようなものかもしれない。僕もこれまでに、マイクと同じようなことをしてきた、テレアポはもちろん、直接会って頭を下げ、何度も断わられて……。そんな陸上戦を休まずやってきたのだ。

7月中旬には、追加で、『クレイジーで行こう!』を7月31日までに1,000冊売る方法を考えるように伝えた。7月31日までに書籍を1,000冊売ることは、頭を使えば簡単だ。だからこそ、これができなければ派遣元の栗田工業に返す。こちらも真剣に向き合えばこその通達だった。

自転車で『クレイジーで行こう!』を売りながら、日本中の水道会社にアプローチする。やっていることはたった一文で説明できるかもしれないが、その中には言葉にならない大切なものがたくさん詰まっている。

これを来年の3月まで続けたら、マイクはどれほど成長することだろう。会議室で話すだけでは伝わらないことを、マイクは身をもって理解してくれることと思う。この番組によって、さまざまな旋風を巻き起こしてもらいたい。さあ行け!マイク!

(記事終わり)

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