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023:『クレイジーで行こう!』が漫画に!|クレイジーで行こう!第2章

なぜ、「漫画」でなくてはならないのか

僕たちフラクタが取り組んでいる事業が向き合っているのは、「公共水道インフラ」という、市民生活に直結するものだ。2人以上の世帯で、1か月平均5000円以上と言われる水道料金。僕たちはそれを500円でも1000円でも安くしようと、まさに命をかけて仕事に取り組んできた。

500円や1000円の差が生活に影響するのは、毎日をただ生きることで手一杯の、力無き市井の人々だ。この連載ではあえて何度も触れるようにしているが、僕の幼少期は、母子家庭で経済的に苦しい時期が長かったので、昨日も今日も、同じような境遇を生きる彼らの生活が気にかかって仕方がないのだ。

「貧富の差が、教育の格差に繋がっている」という統計が毎年発表されている。アメリカも日本も、これに関しては為(な)す術(すべ)がない。基本的には、金持ちがメディアを通じて言論に影響を与え(庶民の味方のふりをして、自らのポジショントークに終始し)、「自分の子孫が最も得をするように」政策を塗り固めていく。どこの国でも仕組みは同じ。

ここで改めて強調しておきたいことは、「こうした全体としての世の中の流れは、これからも絶望的に変わらない」ということだ。僕が小さい頃も、当然のことながら、金持ちは良い教育を受けていた。だからこそ、最も重要なことは、「社会にはいくつかの穴があり、そこを通じて、若者たちが一発逆転できる状態を確保しておくこと」だと思っている。

アメリカのパクリでは無い、ユニークなハイテクベンチャーを2社生み出し、それを2社ともEXIT(国際企業に対して株式を売却したり、証券市場に株式を上場させること)した人間として言えるのは、「やっぱり学校の勉強は役に立たない」ということだ。金持ちが必死で塗り固めているものは、ある意味では泥船(どろぶね)に過ぎないのだ。

間違って欲しくないのは、僕は「勉強が必要ない」と言っているのではないということだ。「学校の “お勉強” は役に立たない」と言っている。だから、自分の好きなことを見つけ、猛烈にその分野を「勉強」するための「きっかけ」さえ見つけられれば、今貧しかろうが、金持ちだろうが、その先は関係ないということだ。

その「きっかけ」として最適な媒体として僕が選んだのが、漫画だ。

人は、今の生活に四苦八苦していればいるほど、日々のことに忙殺され、政治や社会、経済に目を向ける余裕もなかったりする(若者たち、スマホでくだらないニュースを見るのをやめなさい。その時間を別のことに使いなさい)。そんな状況で、水道関連インフラがどのようにできていて、水道配管がどのような根拠で更新されているかなんて、知る由もない。

僕がやってきたことを漫画として読み進めることができれば、多くの人たちが、「自分たちが払っている水道料金を正しく使ってほしい」と考えるきっかけになるかも知れない。学生運動のような夢物語かもしれないし、もはやそんな時代ではないとも思う。しかし僕は、そんなB to C to G(Government)的な働きかけにチャレンジしてみたいと思ったのだ。

販促ツールのような漫画はあまたあるが、そうではなく「人間ドラマ」として書ききることができたなら、もしかして日本中に広まることがあるかもしれない。今は経済的に苦しんでいるかも知れないが、こうした環境の中で「ハングリー精神」を身に着けた若者たちは、僕の話を聞いて、きっと、「私にもできるかも知れない」と思えるはずなのだから。

子供のころ、『好きなことをやれ!! ― 21世紀の天才たちへ』(集英社)という漫画を図書館で見つけ、貪るように読んだ。同時期に活字編も発売されていたがあまり好きになれず、漫画編ばかりを何十回も読んでいた。子どもながらに「漫画には、読む人を夢中にさせる力がある」と思った瞬間だった。よし、漫画を作ろう。単純に、そう思った。

漫画と言えばこの人。佐渡島庸平さんとの出会い

僕には、「人生の相談をするならばこの人」と決めている人がいる。成毛 眞(なるけ まこと)さんだ。元日本マイクロソフト社長という華麗なる経歴があまりに有名だが、成毛さんは、マイクロソフトに出会わなくとも、何をやっても成功した人だと思う。情と狂気と、無限の知性。成毛さんにはかなわない。だから、僕は成毛さんに相談する。

漫画を作ろうと思い立ったとき、成毛さんにまず連絡し、アイデアについて話をした。すると、「漫画を作るなら、佐渡島さんだ!」と、間髪入れずに、『ドラゴン桜』や『宇宙兄弟』を手掛けた佐渡島庸平さんを紹介してくれた。成毛さんの脳の中にある計算機が一瞬ではじき出した佐渡島庸平さんという人に、こうして僕は出会うことになる。

講談社を辞めた後、コルクという会社を立ち上げ、そこで漫画家を育てている佐渡島さんは、ちょうどその時、漫画家や漫画家志望の人たちを集めた合宿をしている最中だった。僕は、ご迷惑承知でそこに押しかけるやいなや、佐渡島さんとすぐに意気投合した。とにかく頭の回転が早くて、話が早い。この人がある種の天才であることは間違いなかった。

朴訥(ぼくとつ)として、また飄々(ひょうひょう)としているように見えながら、論理的である一方で、感性が鋭い。そんな佐渡島さんは、「いいっすね!やりましょう!」と、とても身軽で行動が早かった。早速、合宿中の漫画家さんの中で、ぴったりの人を選んでくれるという。こうして、すぐさまプロジェクトがスタートした。

考えてみれば、フラクタの共同創業者であるラースさんも即断即決の男だった。僕がラースさんにはじめて出会ったオークランドの近く、エメリービルにあったメキシコ料理店のカフェテラス席が思い出された。『クレイジーで行こう!』(日経BP社)にも書いたが、ラースさんは、僕と話をした翌日、勤めていた会社に辞表を提出してくれた。

佐渡島さんと話せば話すほど、彼はエンターテインメントを、エンジニアリングとアートの合体だと捉えているのだろうということが分かった。iPhoneなどのApple製品における感性やアートの側面は、あくまで内側の設計とエンジニアリングが完璧であって初めて意味を為す。佐渡島さんの仕事の進め方には、そんな雰囲気と気概と感じることが多いのだ。

「美しいマンガ」を描くホリプーさんの感性

その佐渡島さんが選んでくれた漫画家さんが、ホリプーさんだ。このnoteで見出しの画像を描いてくださっているから、読者の方にはおなじみの絵柄だろう。実は、もともと、『クレイジーで行こう!』の漫画化の話が先にあって、noteの連載をスタートするときに見出し画像を描いてもらうことになった経緯がある。

ホリプーさんは、平野啓一郎さん原作で、映画にもなった『マチネの終わりに』を漫画化した人だ。ホリプーさんと接点が生まれそうだと聞いたとき、僕は早速『マチネの終わりに』を購入した。実に「美しいマンガ」だった。特に、ヒロインである「洋子」が恋に落ちていくことの、焦燥や歓喜、没入、受容といったことが、表情として丁寧に描かれた。

ホリプーさんは、なぜこんな風に繊細な思いを表現できるのだろう、と不思議に思っていた。この人の描く絵には、何か他の人と違うものがある。どこまでも繊細で、どこまでも華やかなそのタッチに、誰もが魅了される。しばらくすると僕は、ホリプーさんと僕の間に横たわる共通点を知ることになる。物には必ず理由があるのだなと、その時、妙に納得した。

ホリプーさんも、若い頃にお母様を亡くしていた。その喪失感たるや、どれほどのものか。僕にはちょっとだけそれを想像することができるような気がした。そして、絵を描く彼の指先には、有り余る才能が宿っていた。この人ならば、僕の半生を描くことができるかも知れない。この人にならば、何かを預けられるかも知れない。

僕は今でも、心の底から、自分がやってきたことは「誰もができること」だと思っている。カネやコネ、学歴や職歴がなくても、きっと誰もが、その人なりの道を持っている。成功するために最も大切なことは、天命に気づくかどうか、そこから死ぬほど努力できるかだ。僕にとっては、おそらくそれは母の死がもたらした。ストレートに言えばそういうことだ。

だから、ホリプーさんと打ち合わせをするときは、かなり突っ込んだ話をする。その時、自分がどう思ったか。なぜこういう道を選んだのか。佐渡島さん監督のもと、僕とホリプーさんはどんどん深い話に没入していく。そして、そこには新しい発見がある。佐渡島さんとホリプーさんと直接会って、第1話のドラフトを見ていたとき、僕はこう思ったのだ。

「そうか、やっぱり全ては、母が亡くなったことがきっかけだったのだ」

と。

漫画について書いていると止まらなくなるから、このくらいにしておこう。今年12月、もしくは来年1月くらいからの連載を予定しているので、楽しみにしていて欲しい。

最後に、佐渡島さんとホリプーさんにインタビューした様子がフラクタ公式のYouTubeで公開されているので、是非ご覧ください。YouTubeの試みも、活字を読む習慣のない人が、水道事業に関心を持ってもらいたいという想いからスタートした。漫画と、YouTube、それからこのnoteを通して、広く情報発信できればと思っている。

敏腕編集者/佐渡島庸平が「島耕作」超えを狙う!

赤城乳業から漫画家に転身!ホリプーが語る会社員時代

(記事終わり)

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前編20分:

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