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バーミヤン渓谷の危機

日本でもニュースでちょくちょく取り上げられています。アフガニスタンは今、どうなっているのか。

2021年8月15日。アフガニスタンで反政府武装勢力タリバンが国内のほぼすべての州都を支配下に置き、首都カブールに進攻。大統領府や政府庁舎を制圧し、政府に対する勝利宣言を行ない、アシュラフ・ガニ大統領も自身のフェイスブックで出国したことを認めたことで、政権は事実上、崩壊した。

引用:https://front-row.jp/_ct/17474487

アフガニスタンは何年も前から危険な状態におかれています。

アフガニスタンにある世界遺産はすべて危機遺産として登録されています。
危機的状況からいつ世界遺産リストから抹消されてもおかしくありません。しかし、歴史的にみても芸術的にみても価値が高い遺産です。

今日はアフガニスタンにある世界遺産の中でも「バーミヤン渓谷」をご紹介していきます。


バーミヤン渓谷とは

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画像引用:スカイチケットhttps://skyticket.jp/guide/124152

アフガニスタンの北東部にある「バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群」

正式名称にも「文化的景観」という言葉があるように、文化的景観とは自然環境の中で社会・文化・経済に影響を受けながら進化してきた遺産を指します。

また、登録基準も( i )( ii )( iii )( iv )( vi )ととても多いです。

【登録基準】

(i)人間の創造的才能を表す傑作である。

(ii)建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。

(iii)現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。

(iv)歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。

(vi)
顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。

引用:https://www.unesco.or.jp/activities/isan/decides/

また、文化遺産であるとともに負の遺産でもあります。

【負の遺産とは】
戦争や紛争、人種差別など人類が犯した過ちを記憶にとどめ教訓とする遺産。(ただし世界遺産条約では定義されていません。)


バーミヤン渓谷には、およそ1000もの石窟遺跡が点在しています。


バーミヤン渓谷の歴史


もともとこの地域はインド~中央アジア~西アジアを結ぶ交通の要衝地でした。そのため、様々な文化・宗教が行き交う「文明の十字路」として繁栄しました。

はじまりは、ギリシャ人がアム川流域に建国したバクトリア(国名)の宗教や文化でした。

【バクトリア地方】
現在のアフガニスタン北部、ウズベキスタン、タジキスタンなどからなる古代地方名。オクサス川(アムダリヤ)中流域の肥沃(ひよく)な谷間を含む。中国、インド、西方を結ぶ内陸交易路の結接点にあたる。

引用:コトバンク

バクトリア固有の宗教や文化がインドやギリシャ、ササン朝ペルシアと融合してガンダーラ美術へと変化していきました。
バーミヤン渓谷では、変化していく様子を遺産を通して知ることができます。

【ガンダーラ美術とは】
1世紀頃から3世紀頃にかけて、クシャーナ朝時代のインドの西北、ガンダーラ地方とタキシラで開花した仏教美術

引用:https://www.y-history.net/appendix/wh0201-062.html

ガンダーラ美術で検索すると仏像がたくさんでてきます。

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画像引用:マナペディアhttps://manapedia.jp/text/639

この目を閉じてそうで開いてるのが絶妙!美しや~!!
神の領域って感じ。私がこの顔すると間違いなく「眠いの?」と聞かれることでしょう!(笑)


ガンダーラ美術はインドを発端にアジア各国に広がり、その地域と融合して新たな文化と生まれ変わりました。バーミヤン渓谷もそのひとつ。

有名な2体の巨大大仏、「摩崖仏(まがいぶつ)」は5世紀から6世紀にかけて彫られました。

画像2

※破壊前

画像引用:ナショナル ジオグラフィック 
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/gallery/032501128/


自然の岩壁を利用し彫刻され、高さ55mの西大仏は現地では父(バータル)と呼ばれ、38mの東大仏は母(マーダル)と呼ばれています。

しかしこの巨大大仏「摩崖仏」は、タリバン政権によって爆破されてしまいます。


21世紀以降のバーミヤン渓谷

画像4

画像引用:世界遺産プラスhttps://si-p.net/heritages/11

かつては賑わっていたバーミヤン渓谷もイスラム支配下に入ると仏教徒が迫害されるようになり、僧院は廃退。
摩崖仏が爆破される前に大仏の顔が削られるなどの被害はありましたがそれ以上に大きな被害はなく、石窟内には壁画が残されていました。

しかし、2001年2月イスラム教の偶像崇拝禁止となり大仏の爆破を宣言。
社会からの非難や国連からの中止を無視し、宣言から翌月3月には跡形もなく爆破し、爆破した映像は世界中に衝撃を与えました。

当時私は3歳でしたので全く覚えてないのですが、かなり衝撃的だったんじゃないかと思います。
遺産の爆破とは違うけれど、シリアのISによる日本人拘束事件の映像は当時中学生でしたけど凄く覚えています。
それくらい衝撃的だったのかなあと思うのですが、どうでしょう。覚えてる方いたら、当時どんな印象だったのか教えてください!

その後世界中からバーミヤン渓谷への保護協力が集まりました。日本も2002年にユネスコ日本信託基金を利用して修復・保全活動に協力しています。

そして2003年に世界遺産と同時に危機遺産登録し、現在でも崩壊危機などが懸念され修復作業がすすめられています。

意外にも、爆破された後に世界遺産に登録となったんです。
(もともと1980年代あたりから世界遺産に登録候補に上がっていました。)


希望のひかり


遺産の危機や情勢など様々な問題がありますが今年の3月明るいニュースが!

爆破された仏像が3D映像として復活されました!
これは、現代だからできることですよね~!凄い!!

きっと今すぐ当時の大仏を再現することも可能ではあるんですがいつまた爆破されてもおかしくないので、こうやって映像だけでも再現できたのはすごい明るいニュースだと思います!
しかも3Dですからね!!立体!!てくのろじーすげー!!

そして、今朝こんなニュースも。


私はこの記事を書く時、今アフガニスタンがどんな状況なのかを説明するのはとても難しいなと思っていました。なんとなくわかるけど…説明できないと思っていました。

ですが、今日のニュースのように発信している人はたくさんいて、目を向けていれば今どんな状況なのか、何がどうなっているのか意外とわかるものだなと思いました。


この記事を読んでアフガニスタンがどんな状況に置かれているのかを知るきっかけになったら嬉しいです!
また、バーミヤン渓谷がどんなところなのかも興味をもって貰えたら嬉しいです!


そして先日、9/11に日本公開したアフガニスタンの映画があるそうです。

「ミッドナイト•トラベラー」は、タリバンに死刑宣告された、とある映画監督が安住の地を求めてアフガニスタンからヨーロッパまで5600km旅する難民家族のお話です。

3台のスマホだけで自らの旅を撮影したセルフドキュメンタリーだそうで…。

こんな壮大なお話が現実にあるなんて、日本じゃ考えられないことですよね。しかも撮影機材はスマホだけ。

興味がある方はぜひ、お近くの映画館で観てみてください!


#まずは知ることから



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