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インパクトのある研究とは?:ケンブリッジ留学 Unit01 Week01

2020年10月5日(月)からコースが始まりました。イギリスでは基本的に大学は3学期制となっており、だいたい1学期の間に10週間前後の授業が続きます。ケンブリッジでは各学期に以下のような名称がついています。

1学期目(10-12月):Michaelmas term
2学期目(1-3月):Lent term
3学期目(4-6月):Easter term

上記の大学開講期間に従い、僕が履修しているコースもユニット1/2/3と学習内容が分割されています。それぞれの概要は以下のとおりです。

Source: Kettley 'Welcome and programme overview' 5th Oct. 2020

今回の記事では、10月から始まったユニット1の概要と、第一週目の授業で学んだことを紹介します。

1: 「研究者のように考える」とは?

ユニット1のテーマの1つは「研究者のように考える:Thinking like a researcher」です。いわゆるマインドセットや原理・原則と言われる内容ですね。

研究者に限らず、成果を出している人はマインドセットがしっかりしています。具体的にはプロフェッショナルとして何をすべきでは「ない」のかという原理・原則を日々の行動に常に反映させています。

ポイントは「やるべきこと(what to do)」からスタートせず、「やってはいけないこと(what not to do)」をまず明確にする点です。なぜなら、原理・原則とは「そこから外れるとうまく成果がでないガイドライン」だからです。

このコースでは、特に次の3つが「避けるべきこと」として強調されていました:
 1) 適当な思いつきで、いい加減に物事をすすめる
 2) 過去の行動を振り返らずに、やみくもに前に突き進む
 3) 何の価値もない、当たり障りのないアウトプットを出す

これを肯定文に書き換えて少し説明を加えると、以下のような表現となります。

1) 再現性の高い厳密なプロセスを常に意識する
2) プロセスの精度を高めるために何度も試行錯誤する
3) 厳密なプロセスを土台に、インパクトのある研究を出す

1と2については、次回以降の記事でとりあげたいと思います。ここでは、3の「インパクトのある研究」に紹介します。

2: インパクトのある研究 (Impactful research) とは?

「インパクト」といっても言葉自体が抽象的なため、インパクトの有無をどうやって判断するのかは難しい問題です。

例えば、どんな業界・業種であっても、関係者に価値をもたらす「インパクトのある成果」を出せるなら、その行為はとても重要でしょう。

しかし「インパクト」の中身が何なのか、どこかに普遍的な一つの答えがあるわけではありません。

コースの第一週目ではこの「インパクト」について、過去の研究やその他の視点などを含め、様々な議論や意見交換を行いました。

個人的に最も印象的だったのは、ケンブリッジ大学が定義する「インパクト」の中身です。まずは原文を紹介し、次に意訳を紹介します。(太字は柏野)

'Impact is central to the mission of the University of Cambridge. Our world-leading research underpins a huge range of innovations which create prosperity, improve quality of life, protect the environment and enrich our culture. For over 800 years, we have contributed to society through education, learning and research at the highest levels of international excellence'.

「インパクトは、ケンブリッジ大学の使命を支える本質的な要素です。世界をリードする私たちの研究は、社会を豊かにし生活の質を高め環境を守り文化を豊かにする様々なイノベーションを支えています。世界トップ・レベルの教育/学習/研究を通じて、ケンブリッジ大学は800年以上にわたって社会に貢献してきました」(意訳:柏野)

上記の表現を読み解くと、ケンブリッジ大学では何らかのイノベーションにつながるものがインパクトのある研究となります。

そして、そのイノベーションは、単に新しいだけではなく社会を良い方向に変えていく原動力である必要があります。

例えば、貧困状態から抜け出せたり、今までよりももっと健康的に毎日を過ごせるなどの変化です。

個人的には、コース第一週目にしてケンブリッジ大学における研究の考え方を理解できたことは大きな収穫でした。

3:まとめ

コース第1週目では、研究者のような発想で行動するために必要な「インパクトのある研究」について理解を深めることができました。

クラスの中でも、アインシュタインが1905〜1916年にかけて発表した相対性理論がインパクトのある研究例として紹介されましたが、実用的な意味でこの研究が広く社会の役に立ち始めたのは80年ほど経ってからでした(例:GPS衛星での活用)。

今すぐ社会の役に立つ必要はなく、将来的に社会をよい方向に変えうる可能性を秘めた研究を常に意識して行うことが、研究者のマインドセットとして重要だと学びました。

次回はUnit1 Week02の内容について紹介します。

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この記事の執筆者:柏野尊徳(Takanori Kashino@アイリーニ)お気軽に記事への「スキ」や著者への「フォロー」お願いします。SNSもいくつかやってます。以下のリンクから飛べます。

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