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【教育研究家に聞いてみた!】早稲田大学名誉教授の喜多明人先生が考える多様な学びとは?vol.1

皆さんこんにちは! 文部科学省の2020年10月の発表によると、小・中学生の不登校生徒数19万6127人に上り、過去最高を記録しています。フリースクールをはじめとした多様な学びの需要が増している中で、「子どもの権利」や「多様な学び」について長年研究されている喜多明人先生にお話を伺いました。


喜多明人先生

早稲田大学 文学学術院 名誉教授。研究分野は教育学で、主な研究内容は「子どもの権利」、「学校環境」、「学校自治」など。その他、子どもの権利条約ネットワーク代表や、多様な学び保障法を実現する会の共同代表を務めるなど、多岐にわたる活動をしている。


Q. 喜多先生にとって、「多様な学び」にはどのような要素が重要だとお考えでしょうか?

子どもに「選ぶ権利」があることが重要だと思います。子どもたちが何を求めているのか、どう学びたいのか、そのような子どもの主体性を尊重することが多様な学びに必要な要素だと思います。
そもそも「education」という言葉は、「人の持っている力を引き出す」という意味で、理想的な人間を作ることではないのです。しかし、今の公教育では、教師が生徒に教えるというスタイルが一般的ですよね。
多様な学びの場では、子どもたちが生まれながらにして持つ「自己形成力」をどこまで引き出す事ができるのか、これが重要になってきます。
究極の多様な学びは、子どもが「教師を選べる」ことだと思います。


Q.子どもたちの「居場所」について、どのような要素が必要だとお考えでしょうか?

「居場所」について重要な要素は2点あると思います。
1つは、「子どもたちが安心できるかどうか」という点です。学校内であれば「子どもたちがほっとできる、なんでも話せる」ような空間・相手がいることが重要になっていきます。最近では、家事や家族の世話を担う「ヤングケアラー」が深刻な問題となっており、不登校になってしまう人も多いです。そのような、家庭で安らぐ場所が無いヤングケアラーの不登校を防ぐためにも、学校内で安心できる居場所を作ることが必要になってきます。そのためには、例えば、スクールソーシャルワーカーといった「子どもの気持ちに寄り添いながら話を聞いてくれる」相手がいるといいですね。ただ、学校によっては生徒への指導を一致させるために、スクールソーシャルワーカーや学校内のカウンセラーに「子どもから相談された内容を教師間で情報共有すること」が強制されていることもあり、教師たちに自分の話を共有されたことを知った子どもが、カウンセラーに対して信用を無くしてしまい、相談しなくなるといったことも起きています。子どもたちに信頼してもらうためにも、「なんでも話せる・話した内容は漏らさない」などの安心感を守ることが必要になってくると思います。

2つ目は、子どもたちが「自分を取り戻せるかどうか」という点になります。最近では、学校の勉強や部活動などが忙しくて、「自分の本当にやりたいことは何なのか」を考える時間を失っている子どもたちが多いです。子どもの権利条約に「余暇を取る権利」があるように、子どもたちには自分を見つめる時間を持てる居場所が必要なのです。そのために、放課後の居場所づくりが重要だと考えます。例を挙げると、中学生の子どもたちが自分のやりたい事に向き合える「ゆう杉並」といった児童館やフリースペースなど、放課後に子どもたちが安らげる場所があることが理想的ですね。


Vol.2では、多様な学びの現場が抱える「人手不足」「財政不足」についてお聞きします!


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