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エンタメ業界

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最近の記事

地球儀を回すように

 きっと沢山の人がもう既に沢山の考察や解説、感想、批評、批判、賛辞を送っている『君たちはどう生きるか』という作品について、自分でも映画館に足を運んで見てきたので、感想を述べたいと思う。  が、自分は映画の知識もアニメーションの知識も造詣に乏しく、ジブリ作品や宮﨑駿監督作品もすべてを見ているわけではないため、自分なりの感想、自分なりの考察を交えながら、事実と異なることがあるかもしれないが、こんな風に思ったよ、こんな風に受け取ったよということを記してみたい。全くまだ自分の中でも整

    • 古京はすでに荒れて、新都はいまだ成らず

      梅雨の時期になると毎年、もう今年も半分すぎたのかあと漠然と、そして漫然と日々を送っていることを少しだけ後ろめたく感じるも、特にこれといって新しいことを始めようとか、やばいなあとか焦ったりもせずに目の前の仕事を淡々とこなすしかない日常を送っている。 今日も気が付くと外では雨が降り出していた。仕方なしにエアコンを入れて少しばかり除湿を図る。 ゴールデンウィークの連休明けから会社ではなく自宅で仕事をするようになったから電車通勤から解放されて、時にのんびり、時に追い立てられるように

      • be there さいたまスーパーアリーナ 1日目に行った話

        「ああ、ついにこの日が来てしまった」 5月27日は朝から落ち着かなかった。土曜日だったけれどいつもと同じ時間にちゃんと起きて、顔を洗って歯を磨いて、着替えて朝食を食べた。 土曜日は燃えるゴミの日だから、朝食を食べ終えて洗い物をした後でゴミ袋を一つ片手に外へ出た。良く晴れていて気持ちのいい朝だった。 住宅街だから通りに人はほとんどいなくて、自転車に乗った人が静かに通り過ぎていくのを横目に僕はゴミを指定されたボックスに放り込んで部屋に戻った。 チケットを取ったのがいつだったかもは

        • 愚痴あるいは大量消費音楽の話

          レコード会社の役割はもう終わったと僕は思う。それは多くのレコード会社が認めなくてはいけない事実だと思うし、アーティストもそれを認めないといけないと思う。いやいや、お前何様だよと思うレコード会社の人もいるかもしれないけど、大体そういうこと言うやつは中途半端な仕事しかしてない人だから僕は気にしない。 インターネット、SNSの発達によって音楽が消費される文化になってしまったことは仕方のないことだし、「何をいまさら」と思われる人も多いかもしれない。ただ、それによってレコード会社や、余

        地球儀を回すように

          【中編】グッバイ・リトル・サマー

          12歳になる2日前のことだった。その日僕は父親と近所の川に釣りに出掛けた。暑い夏の昼下がりだった。どこかの観光地の絵葉書にできそうなほどよく晴れた夏の午後だった。 父に涼しくなる夕方まで待とうと言われたにも関わらず僕は夜には家に着いてテレビで野球中継を見たかったから、父に無理を言って昼に家を出た。2人で自転車を漕いで近所の川に向かった。真上から照りつける日差しと、アスファルトからの照り返しが凄まじくて、僕は深めに被ったぼろぼろのベースボールキャップの隙間から滝のような汗を垂ら

          【中編】グッバイ・リトル・サマー

          【短編小説】輪っか

          朝起きたら外は冷たい雨が降っていた。窓ガラスの内側には結露した無数の水滴が姿を表し、外気温と室内の温度差を、時に雫を垂らしながら訴えていた。 作業机代わりのダイニングテーブルの上には昨日飲んだハイボールの空き缶が2缶、中央付近から凹ませられて無作為に転がり、中身が3分の1程残った1缶は、虚空へとその口を向けたままPCのキーボードの横に静かに佇んでいた。 とにかく静かな朝だったから、目を覚ました時一瞬ここがどこだか上手く判別がつかなかった。自分の部屋なのに、自分の部屋ではないよ

          【短編小説】輪っか

          しまっていた言葉をまだ 探してる

          Bump of chickenの新曲、クロノスタシスが配信リリースされた。 コナンの映画の主題歌になっていて、 おそらく制作に際して映画の内容や漫画の内容をある程度把握はしているしタイアップとしては当たり前だが、詞の内容やサウンドの方向性がいい意味で映画に寄り添っている。 今回のクロノスタシスを聴いて感じたことを書いてみる。 半音下げが少なくなった 近年のバンプの曲の殆どが、ギターにCapoを、使われていることはお気づきだと思う。 (Capoとは、ギターのキーを変えるアイテ

          しまっていた言葉をまだ 探してる

          フェルメール展に行った話

          鉛色の空が広がり、真冬に逆戻りしたような気温の中、上野の桜は既に葉桜へと変わっていた。4月になったばかりで季節はちょうど冬と春の間を行ったりきたりしていて、まだどっちつかずな歩調を辿りながらも、見事に咲いた桜はあっけなくその花びらを水溜りに浮かべていた。 そんな日曜日、私は上野にいた。フェルメールの絵画を見るためだ。 日曜日かつ、展示の最終日ということもあって人は多く感じたがそれでも当日券がすぐさま完売したり、コロナの影響で入場を制限されているせいかそこまでの混雑は感じられ

          フェルメール展に行った話

          働くということ

          前回書いてから随分間が空いてしまった。 もう少し頻度を上げて習慣にしていかないとダメだと思った。 別に書かないことで誰かに迷惑をかける訳ではないし、書く自由があるということは書かない自由もあるということだという言い訳を頭に思い浮かべながらまた こうやって文字を打ち込んでいる。 昔から文字を読んだり、書いたりすることに抵抗はなかった。今の会社での仕事も物を書く、とは少し違うが文字に関わる仕事をしているし、文字を読むことにも抵抗はない。未だパソコンが主軸ではなく手書き文字をメイ

          働くということ

          おかえりとただいま

          時間は17時を少し回ったところ。 仙台発はやぶさ・こまちで東京へ向かう新幹線の中でこれを書いている。 西日が強くて、景色を見るために山がよく見える方の座席を取ったのに、結局ブラインドを下ろさなくちゃいけないことに乗ってから気が付いたが、思えば数日前東京から仙台へ向かう時にも全く同じことをやらかしていたことを思い出した。 久しぶりに実家に帰省した。去年の9月、コロナ騒ぎも地方に波及しかけていた頃に帰って以来だった。約1年(正確には10ヶ月程度だが)帰っていない間にも、実家の周

          おかえりとただいま