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読書125 『八月の母』

    早見和真著

越智エリカはこの愛媛の街を出ていこうとするたびに、母の美智子が目の前に立ち塞がった。

五年生になった美智子は、逃げるように家を出て行こうとする母親に、無理矢理ついて行った。

1977年から1992年にかけて、美智子とエリカが辿った人生が描かれている。

2000年から2013年まで。エリカのその後と、子どもたちのこと。そして事件のこと。

プロローグ、エピローグでは、事件から八年後が描かれています。

あの日、あの団地の一室で何が起こったのか。なぜ、あんなことになってしまったのか。
人間の内に秘められた負の感情。

作者の早見さんは、新聞で事件のことを知り「ただただ救いがない、ただただ悲惨な事件」と思い、しばらく思考が停止していたと言います。「自分が手をつけるべきではない」と、思っていたそうです。

それでも、事件を見て見ぬふりや、自分とは関係ないと切り捨てることが、あの事件の背景があると考えたからと、本を紹介する記事にありました。「事件関係者を傷つけてしまうことに対する恐怖は、すごくあったが、見て見ぬふりはできなかった」

また早見さんは
「子どもをかわいいと思えないひとに対して、自己批判がすぎると思ったのは、ひとえに従来の価値観が正しいと思われすぎているから。
固定観念と既成観念の先にある思考停止が今の社会の息苦しさだと思っていて、僕も含めてみんなが1つ2つずつ自分の頭で考えられる社会になったら、絶対息が吸いやすくなる」
と、インタビューで思いを話しておられました。

実際にあった事件を扱っていますが、物語はフィクションです。
誰が悪いとか、言い出したらきりがないのでしょうが、どうすることがよかったのか。
「あのとき、こうしていれば」という後悔をずっと胸に残したまま、進む道を模索して生きてきた人、また決断したことを通じて、作者の言いたいことが込められているように思いました。

おすすめポイントは、苦しい部分が多くて難しいのですが、エピローグで思いを伝えられたところでしょうか。
プロローグでは「あ。この話は、ひょっとしたら、あの作品の主人公?」と、思ったところがありました。
あの作品の、その後が気になっていたので、胸が苦しくなりましたが🥲

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