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まちづくりや観光について、事例や論文、裁判例の紹介をメインに書いていきます。自分の勉強…

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まちづくりや観光について、事例や論文、裁判例の紹介をメインに書いていきます。自分の勉強のために書いている側面が大きいですが、まちづくりの現場等に役立つことがあれば嬉しいです。 なお、本Noteで記載することは、個人的な見解であり、所属する組織とは関係ありません。

最近の記事

「観光地のまちづくり」と「観光によるまちづくり」

はじめに観光とまちづくり、元々は対立することも多かった二つの概念だが、近年は一緒に使われることも多い。観光とまちづくりが対立していたという点について、2010年代に入って観光やまちづくりを研究し、関わってきた筆者にとってそこまで実感はないが、「観光」と言う言葉に対して抵抗を持つ人にたまに会うのは、この対立の歴史も関係しているのだろう。 そんな、観光とまちづくりだが、その意味は曖昧である。観光もまちづくりもそれぞれ多種多様な意味合いを含んでいるため、その二つを一緒に使った際に

    • 観光地における廃屋問題②:独自条例による対応を考える

      はじめに前回のNoteの冒頭で記載した通り、廃屋の存在が問題となる観光地が増えていっている。保安上の危険が問題となるのは観光地以外と同様であるが、観光地における廃屋問題については、景観に対する悪影響によって観光地としての価値を損なってしまうという側面が大きい。 そして、既存の法律は、建築物の撤去という強制的手段は、保安上の危険性が発生することを前提にしており、景観への支障を理由には使いにくい。これ自体は、景観への支障を理由として、建物の除去という財産権への侵害強度が高い措置

      • 観光地における廃屋問題①:景観を理由とした強制的撤去は可能か?

        はじめに観光地において、廃屋の存在は課題となっている。見た目のインパクトも関係し、栃木県日光市の鬼怒川温泉における廃墟群は広くニュースで取り上げられたが、廃屋問題を抱えるのはここだけではない。コロナ禍で観光産業はダメージを受けたが、その影響は大きく、多くの観光地で廃屋問題はこれからも広がっていくだろう。 空き家に関しては、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空家法」という。)が存在しており、空家等に関する定義を以下のように規定しているが、この法律上では廃屋に関する

        • 中央と地方:ふるさと納税騒動から考える地方自治のあり方

          はじめに泉佐野市とふるさと納税は、長らく世間を騒がせており、自治体の立ち位置について、意義が大きい裁判例が多く出ている。 本Noteでは、特別地方交付税の額の決定取消請求事件(大阪地判令和4年3月10日)を取り上げる。控訴されているため最終的に確定はしていないが、この判決において原告の請求を認められ、ふるさと納税による多額の寄付金収入を理由に、特別交付税を大幅に減額した決定は違法であるとの判決が出ている。 具体的には、令和元年度における市町村に係る特別交付税の額の算定方法

        「観光地のまちづくり」と「観光によるまちづくり」

        • 観光地における廃屋問題②:独自条例による対応を考える

        • 観光地における廃屋問題①:景観を理由とした強制的撤去は可能か?

        • 中央と地方:ふるさと納税騒動から考える地方自治のあり方

          景観の保全:地域ルールの明確化を考える

          はじめにまちづくりにおいて、景観は最も重要な要素の一つである。重要だと考える理由は様々なものがあるが、観光地のまちづくりという文脈で考えると、景観が観光客の満足度に与える影響が大きいからということが、景観が大事であると考える一つの理由となる。 しかし、通常の施設等と違い、景観の保全は難しい。多くの場合、その所有はバラバラの人に属しているし、そもそも景観と言われて何を指すか、不明確なことも多いからである。 一部の地域では、景観の重要性が議論され、その保全のための取り組みが行

          景観の保全:地域ルールの明確化を考える

          景観政策としての屋外広告物対策:京都市の成功要因は?

          京都市と景観政策京都は日本を代表する観光都市として、国際的にも認知されている。米国の旅行雑誌である「Travel + Leisure」の観光都市ランキングにおいて、京都は2014年に1位に選ばれており、2021年も5位に選ばれている。歴史・文化的な側面での評価はもちろんであるが、京都の魅力はそうした側面が景観としても具現化されている点であろう。 こうした京都の景観は、自然に保全されてきたわけではない。昔から京都市は景観保全に取り組んできたが、常に景観が問題なく保全されていた

          景観政策としての屋外広告物対策:京都市の成功要因は?

          まちづくりとスラップ訴訟

          はじめにスラップ訴訟という単語を聞いたことがあるだろうか。スラップ(Slapp)とは、strategic lawsuit against public participation の略であり、デジタル大辞泉によると「個人・市民団体・ジャーナリストによる批判や反対運動を封じ込めるために、企業・政府・自治体が起こす訴訟」を指している。別名として、恫喝訴訟、威圧的訴訟、嫌がらせ訴訟といった単語もあげられている。 まちづくりにおいて、住民参加の重要性は言うまでもないが、かかる住民参

          まちづくりとスラップ訴訟

          アドベンチャーツーリズムとフィールド管理者の責任:どの程度の措置が求められるか?

          はじめにコロナ禍の影響もあり、アドベンチャーツーリズムの人気は世界的に高まっている。日本でも、インバウンド誘客という目的もあって、コロナ前から、アドベンチャーツーリズムへの期待が高まっており、その勢いはコロナ後も加速していくことが期待される。観光庁でも、アドベンチャーツーリズム(観光庁による定義は以下)へ支援を強化している。 アドベンチャ―ツーリズムへの注目が集まる一方で、野外でのレジャー・スポーツ活動における課題として、誰が事故やトラブルの責任を負うべきかが曖昧という点が

          アドベンチャーツーリズムとフィールド管理者の責任:どの程度の措置が求められるか?

          マウンテンバイク(MTB)振興と権利調整

          はじめに世界的にマウンテンバイク(MTB)市場が拡大している。世界でMTBはロードバイクとほぼ拮抗する市場規模となっており、特に山岳エリアでは、核となるレジャーアクティビティとなっている。 日本でも、多くのスキーエリアで、MTBは需要平準化の手段として期待されている。例えば、ニセコにおいてMTBコース整備計画ができている。ニセコエリアマウンテンバイク協会のインスタグラムを確認(2022年7月12日確認)したところ、「双子山トレイルパーク」に関する許可は既に出て、トレイル造成

          マウンテンバイク(MTB)振興と権利調整

          まちづくりと裁判例:景観とメガソーラー

          はじめに全国各地でメガソーラー(大規模太陽光発電所)に関する紛争が生じている。土砂災害等の危険が大きくなるという批判もあるし、まちづくりの文脈では景観が破壊されるということが問題となる。 そして、こうした問題が生じたことで、メガソーラの設置を規制する条例が設置される自治体も出てきた。地方自治研究機構によると、令和4年6月15日時点において全国で196条例が成立している。 こうした条例の先駆けとなったのが、平成26年に制定された由布院温泉で有名な由布市での条例である。かかる

          まちづくりと裁判例:景観とメガソーラー

          公的財源によるまちづくりとガバナンス:長門湯本温泉の事例

          はじめにまちづくりにおいては様々な財源が必要となるが、その中でも景観保全やインフラ整備といった公共の財産に関する投資が必要となる場合には、公的財源の確保が課題となることが多い。 そして、観光地における公的財源の確保としては、法定外税の導入や分担金・負担金の制度導入等が考えられる。上記の財源の中でも、宿泊税の導入は多くの地域で検討が進んでいるが、これは、京都市や金沢市、倶知安町(ニセコ)といった有名観光地で実際に導入されたことが影響していると考えられる。 なお、個人的にはB

          公的財源によるまちづくりとガバナンス:長門湯本温泉の事例