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(11) さらば ! 上前ハネと汚職の土建国家


 パキスタン・イスラマバードのユダヤ人宝石商のコミュニティは、次第に拡張しつつある。パレスチナ人の土地にイスラエルが建国されてから86年が経過し、ユダヤ人も中東の地でイスラム勢との関係に順応した。イスラマバードが地理的に北部にあってアフガニスタン、カシミール地方にも近く、様々な部族・民族で構成されているので他戒律の人々も過ごしやすいのかもしれない。パキスタン政府によるユダヤ人コミュニティの保護もある。
先月5月末、インド領のカシミール地方で、新たな大きなサファイア鉱脈が発見されてから、インドからパキスタンに分配される原石の量が倍になった。インド側が新鉱脈のお披露目を兼ねて宝石商から加工に携わる職人に至る関連者を対象に、新鉱脈見学の機会を提供し、ユダヤ商人達もカシミール地方まで大挙して訪れた。鉱物学や地質学を知らずともはっきりと、蒼い鉱脈が確認できた。解説役を担った学者が幾層にも重なっているものは極めて珍しく、恐らく世界最大のサファイア鉱脈だと断言する。しかも数多ある純度の低いサファイアではなく、世界で最も透明度を誇るカシミールサファイアだ。鉱脈の幅が太くなる箇所が幾つもあって、大きなサイズでの採掘が出来ると見込まれると言う。サファイアを含む地質層が波打つようになっている。プレートが押されて地層ごと地層が圧縮される過程で、層の厚い箇所が出来たとインドの地質学者が説明する。

この見学会にインド系SIS(秘密情報部:Secret Intelligence Service、通称MI6)諜報員がインド宝石商に紛れ込んで参加していた。ユダヤ人が追っている情報が「何」なのか、イギリスが掴みかけていた。歴史的にも、卑怯で卑劣な手段好きのイギリスらしい組織だ。労力を掛けずして相手の調査活動を追跡、追尾して情報を盗み採る。今となっては労を惜しまず最前線で活躍するのは、物語の中のジェームス・ボンドとボンド・ガールとごく一部の諜報員だけだ。相手の諜報機関が追っている情報を掠め取るのが、MI6の十八番へ凋落していた。モサドが追っている相手が、日本だけに好都合だった。ここまで日本の情報取得は米国CIAと同様で、全く機能していない。イギリスが十数年前にEU脱退した頃から迷走・妄想状態に突入すると、これまた時代錯誤の脱欧入亜の意思決定をして、北朝鮮に進出した。アメリカに土下座して平壌港統治権を手に入れると、港の再構築事業の為に香港企業を数多く呼び寄せた。自分達は金を使うつもりはサラサラ無かったのである。香港を失ったイギリスが、再びアジアにおける基盤を手に入れたかったのも、中国と日本を分析しながら、経済的な利益を得たいが為だった。中国政府は与し易かったものの、日本との関係は妄想した程、全く上手く行かなかった。それもそのはず、日本から見るとマスコミと大学とプレミアリーグを取ったら、EU脱退を選択する将来性の無い国なので仕方がない。お間抜けな国民投票でEU脱退を選択してからは、シティ凋落と共に英国経済も下降線を辿っていった。平壌港に繁栄を齎しているのは香港企業によるもので、英国資本は何ら活躍していない。MI6も資金難となり、曾ての輝きは取り戻せないので、諜報活動も寄生虫作戦を取り続けるしかないのが実情だ。

ベネズエラの東に隣接するガイアナは旧英国植民地で、インド系が人口の4割以上を占める。このインド宝石商に化けた人物もガイアナ生まれで、英国と2つの国籍を持つ。何度となくベネズエラにガイアナの商人として入国し、ベネズエラの広大な遊休地以外の人が集まる土地を隈なく歩き、調査してきた。異邦人系MI6構成員は自分の足で稼がないと、白人の構成員の鼻を明かす事が出来ない。そんな自力で調査する彼が、確信を持って組織に報告し続けている事項がある。「ベネズエラ経済の成長の源泉は、AIロボットによる製造生産活動だ」としていた。今回のカシミール地方での宝石発見も怪しんでいた。しかし、どう見ても本物なので困惑していた。仮説が揺らいだものとなっていた。彼は「ベネズエラはダイヤモンドの採掘などしていない」と分析していたからだ。確かにダイヤ鉱山はあり、20年前迄は金も採掘していたが、今はどちらの鉱山も操業していない。カラカス郊外にあるダイヤ生産・加工をしていると思われる工場で、人工的に生産している可能性が高いと見ていた。人工ダイヤモンドの技術では天然物とは明らかに異なるのが普通だが、ベネズエラが販売するダイヤモンドは天然物にしか見えない。このギャップを埋める製造技術力がベネズエラにはある、と判断をしていた。 恐らく、ベネズエラ以外の国、自衛隊拠点がある北朝鮮・タイ・ビルマの何れかでも工業的に宝石を生産しているのだろう。事実、ベネズエラ国内には宝石加工技術者は数名しかいない。その人数であれだけの数量の加工を施して、店頭に並べるのは土台無理がある。その一方で、日本やベネズエラが宝石の事業収益で潤っているのだろうか?と考えると、日本の工業製品と比べれば大した金額ではない。宝石の流通量をインドで増やした事により生じた変化は、パキスタンにユダヤ人コミュニティが出来たのと、欧州の貴族と中東の王族が宝石の購入量を増やしただけの違いしか生じていない。つまり、ユダヤ人をアジアに引き寄せるのが、日本の狙いだと見ていた。

砲丸投げで使われる玉のサイズとほぼ同じ大きさの世界最大のカシミールサファイアが、オークションで競売に懸けられた。落札額が23億円となり、話題となった。宝石自体の大きさもさる事ながら競売額も破格だった。その後も砲丸サイズまでとはいかないまでも、ソフトボールの大きさの原石が毎週のように採掘・供給されるようになり、常時3−4個の大きな原石が、標準的なサイズの原石と合わせて、納入されるようになった。ユダヤの宝石商はこの大きな原石を「注文加工品扱い」と定めた。大きなサイズを求める人達を集って、原石の加工方法や形状をどうするか決めてから加工し、 顧客へ届ける契約を欧州の元貴族階級や中東の王族と結んでいった。1件あたり、10億円まで行かないまでも、相応の金額で購入されてゆくようになる。
イスラマバードのすぐ隣はアフガニスタンなので、アフガン産の宝石も手に入る。こちらはサファイヤ程の価格にはならないが、新疆ウイグル自治区でウイグル人の加工職人の手によるアクセサリーなどの完成品を仕入れて販売する、薄利多売でマージンを得る形を選択した。日本では瑠璃と呼ばれるラピスラズリは蒼さが深く、アフガン産ならではの大きさと碧さを誇る最高品質だ。バレーボールやハンドボールの大きさのものが算出される。トルマリンは殆ど不純物がなく透明感に溢れ、アフガン産特有の大粒のエメラルドは応用範囲が広い。ウイグル人の加工技術レベルが高いのも、目の肥えた漢族に日々接している為だと言われている。
インド商人がカシミールサファイアだけでなく、大きなダイヤモンドやルビーといった原石をイスラマバードに運んでくる。ユダヤ宝石商にとって、南アジアは様々な宝石が取扱える貴重な地となっていた。一見、ユダヤ人が市場を抑えているように見えるのも、パキスタン北部で良い値で買ってくれるユダヤ人が、所狭しと拠点を構えているからだ。

ユダヤ人宝石商にとって大口の顧客は、やはり中東の富豪となる。宝石の取扱量もパキスタンで拠点を構えた頃よりも日々増えている。ユダヤ宝石商がアフガニスタンや新疆ウイグル自治区に行商・仕入れに向かう上で、用心棒的な護衛の必要性を感じて、中東の富豪たちに相談する、彼らが出資する反政府組織に護衛を委託できないだろうかと。パキスタンの反政府組織の支援者でもある中東の富豪が、パキスタンが中国との蜜月を解消した事で、イスラム寄りに転じたと判断し、組織の目的をウイグル人やアフガニスタン人の支援や救済に変更した。組織に課した新たなる密命をユダヤ宝石商にも了承して貰い、宝石商の仕入れ時の警備という表向きの役どころを、武装勢力が担うようになった。
アラブの富豪達はターゲットを変えた。中国寄りのウイグル人抑圧の政策へ同調していたのを改め、中国マネーを欲してイスラムの同胞を見て見ぬ振りをしていたパキスタン政府を、脅して揺さぶるのも止めていた。
ユダヤ人宝石商の護衛として、国境をバス越えて中国入りする際、行きは護衛が6人だったが、帰りは4人に減少するというように、ウイグル人社会の中に兵器を扱った経験のあるアフガン人、パキスタン人を少しづつ送り込んでゆく。漢族からすれば、誰がウィグル人でパキスタン人なのか、イスラム教徒の人種の違いを分別するのは難しい。そこを逆手に取った。ウィグル人であるID、身分証明書はイスラエルで精巧に偽造されたものが手渡されていた。交通違反などで人物照会されるような事でも無い限り、偽造IDでウィグル人として生活ができた。必ずしも銃や手榴弾などの武器を彼らは必要としない。火炎瓶や簡単な爆弾は幾らでも製造できるし、何よりもチームとして戦術を立てて行動する様々なノウハウは、ゲリラ活動では必要不可欠のものだった。新疆ウイグル自治区内の人民解放軍の配置や規模を把握しながら、中国軍の意欲を削ぎ、ウイグル人のモチベーションを上げる為の最適な方法を立案していった。

何の前触れもなく、夜間警備に当たっている人民解放軍の兵士が殺される事件が起こった。中国政府はこの事件を一切公開しなかった。中国が公開しなかった為なのか、それをあざ笑うかのように、連夜のように中国兵が殺傷される。所持していた拳銃も小銃も着用の軍服も含めて、装備の一切合切が奪い取られ、既に8つの銃と小銃が何者かの手に渡っていた。
当初は絞殺されたり、背後から槍のようなもので刺されたりしていたが、やがて奪った小銃で頭部を狙撃されるようになると、新疆ウイグル自治区に夜間外出禁止令が発令され、夜間の外出者は有無を言わずに逮捕する方針が出た。それでも中国は外出禁止令も事件の事実も伏せた、事件が続いているのにも関わらず。兵士は狙撃され、その都度兵器を奪われる。ここまで至ると、再びローラー作戦を取って武器を探し出すしかない。青海省、内モンゴル自治区の人民解放軍が新疆ウイグル自治区入りし、ウイグル人家庭内の一斉捜索を始めていった。
季節は本格的な夏に向かっている。2階や3階の窓は開いて網戸状態になっていた。人民解放軍の駐屯地の宿舎も、外気を取り入れていた。その網戸を突き破って、火炎瓶や爆弾が建屋内に投下されると、爆発により他界する兵士が出るようになる。中国は組織的な犯行だと半ば断定しながら、火炎瓶、爆弾の製造元や盗まれた武器を捜索するのだが、どこからも出てこない。曾てのウイグル人の犯行とは異なるものばかりで、仲間を亡くし続ける人民解放軍は必死になって捜索を続けていた。
犯行グループは捜査の勘所も分かっていて、パキスタン領から新疆ウイグル自治区までカラコルム峠を越えて中国入りする宝石商の護衛として4人が入り、帰りは6名でパキスタンへ出て、次第に犯人グループも中国領の外に出てゆくようになる。購入した宝石の運び手として新疆ウイグル自治区から居なくなると、今度は別の者が自治区内へと入ってゆく。今は大々的な攻撃をする必要は無かった。人民解放軍の兵士たちが夜間の警備に怯えながら、少しづつ減少するだけで十分だった。

ウイグル人にしても、誰の手によるものなのか分からないまでも、少数でも漢族の兵士が殺められる度に噂が広がった。その噂を耳にして、溜飲が下がったような気分になるのを人々は感じていた。
中国政府はこの事件を一切公表しないままでいた。それでも威信を掛ける。犯人逮捕と武器奪還、武器製造場所の確保する為に、中国陸軍のエキスパート5千人を新疆ウイグル自治区へ投入する決定を下した。何故、中国が兵士殺害を秘匿したのかは推測するしかなかないのだが、やがてそれも闇に葬られてしまう。パッタリと中国兵の殺害が止んだからだ。

後に自衛隊がこの事件が生じた背景を分析する。中国の不安定な状況下で犯行を公表し、ウイグル人に対して弾圧行為を取っていたら、国際世論は誰を、どちら側を信じただろうと考えると「犯行自体を中国が創作、捏造したもので、ウイグル人に圧力を加える為の方便だろう」と、中国が悪役になっていた可能性が高い。何よりも新疆ウィグル自治区に世界中の視線が集まるのを避けたかったのが本音だろう。収容施設が存在した過去を追求されれば、現政権は瞬時に終わってしまうからだ。

ユダヤ商人達がイスラム教徒の護衛と共に新疆ウイグル自治区を訪れていた頃、北朝鮮で鉄鉱石や銅の試掘調査が行われていた。どうやら金の鉱脈が鉄鉱石の傍で見つかったらしいとモサドの情報網が察知した。3月の資源探査衛星やロボット探査では金は該当資源の項目に含めていない。その為なのか日本政府も、北韓総督府も金発見を全く報じていなかった。情報は日本の資源探査を衛星でフォローしているイスラエル軍からのものだった。宝石商人達が政府やモサドの要請を受けて、表向きは護衛役のテロリストを受け入れてカモフラージュしながら日中はチームで行動し、新疆ウイグル自治区の状況を報告する。その見返りとなるのが、この未発表情報だった。日本が公表しないので、資源の奪い合いも受注競争も生じない。先んじて接触することで、独占して扱えるよう日本側と交渉してゆく。宝石商の先遣隊がイスラマバードから北朝鮮・平壌まで目指して飛んでいった。MI6は、先遣隊として北朝鮮へ向かったユダヤ人2人の情報を、平壌港の拠点へ連絡する。今度は朝鮮人の諜報員がユダヤ人の追跡を行う。
イスラエル軍から齎された情報を見たモサド長官は、北朝鮮における鉄鉱石・銅・金の埋蔵量の多さに目を見張る。この埋蔵量が事実ならば、石油・LNGに続いて日本が地下資源を輸入する必要性が益々無くなる。日本の鉄鉱石・銅・金の主力調達先オーストラリアには大打撃となる。小麦に引き続く輸出停止となれば、オーストラリアと日本の関係は更に希薄なものとなる。それこそ、残るのは観光収入くらいになるだろう。
これまで国内向け需要が大勢を占めていた日本の鉄鋼会社が、原料コストの低減で輸出競争力が高まると輸出攻勢へ転じ、国際入札で勝つ場面が増えるかもしれない。日本政府がどんな手を講じてくるのか、会議を招集して作業分析を決めると、モサドはチームごとに動き始めていった。

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4月に北韓総督府の閣僚に日本の大臣が就任してから、矢継ぎ早に開発とプロジェクトが進行している。石油とLNGの出荷に続いて、世界6位の埋蔵量があると推定される鉄鉱石の出荷を始めた。日本の2大製鉄会社と台湾の製鉄会社とその子会社であるベトナム工場へ供給を始める。
鉄鉱石の運搬コストが大きく下がった。日本海、東シナ海を経由するだけなので、運搬船の燃料代が大幅に低減する。同時に「国内向け特別価格」的な扱いをして、市況価格よりも下げた。鉄を必要とする自動車・家電・造船橋脚・建設・住宅等の日本と台湾、ベトナムの企業は、鉄鋼の仕入れ価格が下がり価格競争力が増した。資源の投げ売りと言うわけではないが、中国とアメリカの市況が低迷し、世界同時株安になっている状況下であっても、アジアの経済需要に関しては活況が続いていた。アジア各国に重要素材である安価な鉄鋼を提供して、各企業の価格競争力と利益幅確保を狙う。韓国の製鉄会社の子会社がインドネシア、マレーシアにもあり、その2社にもイレギュラー的に鉄鉱石を供給してゆく。韓国の製鉄会社自体は、中国資本が残っている為にチベット問題を盾に供給を見送ったが、インドネシアとマレーシア企業には罪はないと判断し、特例措置を講じた。
チベット問題・シーレーン問題で、中国との間がギクシャクした時期で、世界最大の鉄鋼生産量を誇る中国への鉄鉱石輸出を見送ったのが大きかった。中国の鉄鋼メーカーに価格で勝負できる環境が訪れたからだ。日本・台湾・ASEANの製鉄会社が、鉄の国際入札で中国を抑えて勝利していくようになる。ここぞとばかりに、各国の鉄の生産量が増えてゆく。

北韓総督府は中国との協業中止期間を利用して、次の手を打った。金と銅の提供も始めた。中国の停滞期に乗じて、中国に成り代わって半導体・電子部品に欠かせない原料・素材を提供し、北朝鮮の資源がアジア製造業へのカンフル剤となる役割を担う。北朝鮮・新浦港の第二埠頭は資源搬出専門の埠頭となり、活況を呈するようになっていた。日本が北朝鮮産の資源を使って、中国・韓国以外のアジア経済需要を維持する動きを始めると、対中、対米の投資マネーがアジア市況に流れ込んで来る。東京、台北、ムンバイ、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタの市場は上昇に転じた。

北韓総督府の次は、日本政府が呼応する動きを見せる。アジア市況を上昇させるだけではなく、株価が高止まりしたまま推移するようにしなければならない。モリ顧問はチベット政府に働きかけて、中国のゼネコンへの作業委託を打ち切らせた。チベット政府はタイの建設会社3社とビルマの設備工事会社にラサ市内の下水道整備と橋脚類を中心にインフラ整備と都市建築を要請する。鉄鋼価格が安くなったので、中国企業よりも安価に建造出来る。既に都市デザインは決まっているので 図面の変更は生じない。建築素材の用意から施工まで全てを再見積してゆく。また、アジアでは初めての試みとなるが、建築労働力は人では無く、日本製のAIロボットが担う。各建設会社は現場監督者を用意するだけで事足りる。ロボット作業により、24時間体制で建築作業に従事するので完成までの時間が大幅に短縮され、建築コストが大幅に下がる。まさにゼネコン革命だ。 PB Burma、PB Siam両社はビルマとタイのゼネコン・設備会社を買収して傘下に収めると、ASEAN、南インド、朝鮮半島での建設需要に打って出ようとしていた。日本国内ではゼネコン企業の商圏を荒らしてしまうので、次元的な措置を講じる。そのー方で韓国・ソウルでの北韓総督府とプルシアンブルー社の再開発事業では、入札価格で日本と韓国のゼネコンは、タイ・ビルマのゼネコンに勝てずに敗退した。 今後、北朝鮮における開発事業は目白押しの予定だが、タイとビルマのゼネコンの受注は規定路線となる。今まで十数年に渡って北朝鮮の建築需要を一手に担ってきた日本のゼネコンは、以降はお役御免となる。建設見積額も完成までの時間も、半分以下になるので当然と言える。

日本と韓国のゼネコン各社は、プルシアンブルー社がASEAN企業を傘下に収めて建設事業に乗り出して来たので覚悟を決める。国内以外の建設事業は今後は見込めなくなると日本の経産省やメディアが言及していたので、準備は出来ていた。そもそも、労働力や下請け企業を必要とせずに建造出来るのだから 勝ち目は無い。大手ゼネコンが上前を撥ねる建築コスト構造と企業体質に、日本政府がメスを入れるのは時間の問題だった。既存の広告代理店、放送・新聞社潰しや警視庁排除等、従来の政官癒着構造体質を払拭してきた経緯を見れば一目瞭然、土建国家ニッポンの破壊は既定路線だった。昭和・平成の与党の岩盤支持層でもあり、献金と癒着のカネまみれの温床となった業界なので、現与党は真っ先に破壊したかった。しかし、中小企業が全国に広がる裾野の広い業界なので、一気に潰す訳にも行かない。それで長年に渡って北朝鮮での建設需要を与えつつ、段階的に撤退する方向へと導いていった。日本のゼネコン各社は北朝鮮の特需を十数年間にわたって受けながら、事業転換を経産省から言われ続けて来た。その黒船が同盟国であるタイとビルマから遂にやって来た。事業の分担を日本政府が計る意向でいるのも分かっていた。住宅事業もプルシアンブルー社傘下の企業に集約されていたので、ビル建設や橋梁やトンネル等の道路事業も、人手を必要としなくなる構造変化が訪れる。福島の廃炉作業をロボットが担った経緯を見ながら、ゼネコン各社は腹を括るしかなかった。次元措置だった北朝鮮での建設需要は終わり、日本国内の建設需要がまだ残っているとは言え、マンション販売会社やビル管理会社にすれば、建設コストが安いほうがいいのは自明の理なので、ASEANのゼネコンに建設委託する傾向が一気に進むだろう。北朝鮮で上げた収益を原資として業態転換してゆくしかない。転換する業種は各社各様だが、救済策を一切用意しなかったマスコミ・広告業界とは異なり、日本政府が猶予期間を用意した極めて特殊なケースとなった。

アジアにおける建設コスト減少が今後の既定路線となる。建設コストが下がればマンションやオフィス等の費用も下がる。固定資産税のような建物への課税も見直されるだろう。企業もオフィスの賃料下がれば、収益が改善し、サービスや商品の価格改定が可能となる。個人は高級路線を求めたり、住宅の複数所有に乗り出すかもしれない。「経済発展をし続けるアジアで、建造コストが半減する」これは、計り知れない影響を及ぼすだろう。
日本政府は自国のゼネコン企業を切り捨てる姿勢を世界に示して見せると共に、アジア経済の発展拡大に打って出た。これでゼネコンに依存し土建国家ニッポンを作った政党は、完全に終焉を迎える。最後通牒は遂に放たれた。

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中国が大人しくせざるを得ないこのタイミングを見計らったかのように、台南に農園と自宅がある柳井純子が日本の首相として、初の訪台を行っていた。しかし、周囲が騒ぐ「初・訪台」というのがどうしても腑に落ちない。3月は首脳会談はしなかったが、コーヒー豆の収穫作業をしていたからだ。「3ヶ月ぶりに台湾に帰って来ました!」とSNSに投稿する。長男の嫁のヴェロニカと孫2人を連れて、次男の邸宅がある台北市内で待っていた次男の嫁と孫と数日を過ごしながら、その家から台湾政府に通って会談に臨んだ。
主題は中国の新造潜水艦の動きについて、市ヶ谷に居る防衛大臣とネットで繋いで対応策を協議していた。両首脳の会見では防衛協定には触れずに、台南市にある高速鉄道用に建設した水素発電所の電力を利用する海水浄化装置を建設し、渇水問題で悩む台湾南部の水資源問題を解決すると表向き発表を行った。この建設資金を、台南市の郊外に建設する介護老人福祉施設を中心とする都市人口10万人の建造物の自家発電で賄うとした。浄水設備と都市の建造、建設は台湾のゼネコンと、プルシアンブルー社傘下のタイの建設会社のJVが施工する。プルシアンブルー銀行とPB Enagy社が台湾に拠点を構えて、建設資金の融資と太陽光発電によるエネルギーの管理と台湾電力への売電を行うというものだった。

日本の首相が流暢な中国語で会見し、会談するのは台湾のマスコミには大受けとなる。「30年以上台南で生活し、子育てしたんです。台湾の問題を解決するのは私の責務なんです」と言わせて拍手喝采を受けていた。
ウクライナ・オデッサのプルシアンブルー社の工場で製造される海水浄水機はUAEドバイ市に納品されるものと同型機となる。ドバイでは15年前に設置した既存の設備では飲用にも使われているが、台南市では工業用水としてプールされ、農業用水として河川へ循環させる。
中東の砂漠地域と亜熱帯圏の利用用途の違いとなる。この台南と同じ設備がベトナム・ハノイとホーチミン、タイ・チョンブリとラヨーンで建造する計画がある。

日本の総理が台湾を訪問し、チヤホヤされている映像が中国内で視聴できる「United Nations」のニュース番組で詳細の解説を含めて報じられる。3月は露出が足りなかった分、中国大陸向け24時間ニュースチャンネルを使って偏向報道ではないかと思われる位に報じた。中国の人々は、中国の放送局が放映しないニュースが多岐に渡るのを知り始めていた。要は共産党に都合の悪い情報は、一切流さないのだと今更ながらに理解する。台湾は中国の領土だと言っている割には、台湾の方が進んでいるように見えるし、景気も良さそうだ。
曾ては台湾に関与しただけで騒いでいた共産党が、日本の首相が訪問しているのに黙り込んでいる。何が起こっているのか?と疑問に感じていると、台湾メディアの解説者が湾曲な表現ながらもコメントした。これが西側諸国の報道なのかと、感心する。

「中国共産党は、台湾と日本の接近を苦々しい思いで見ていることでしょう。日本政府は台湾を国家として見做すとは一言も口にしていません。しかし、台湾に自宅が有って、親類も住んでいる人が今の日本の首相なのです。「自宅に帰ってきた」と言う首相に、共産党は口出ししたいのでしょうが「自宅へ帰るのは罷りならん」と流石に言えないのでしょう。今回の日本首相の「帰宅」「里帰り」を参考にして、各国の政府は台湾に大使館を置くのではなく別荘や保養所を構えるのはいかがでしょうか。そして、休暇や休養で台湾を気軽に訪れて、のんびりとゆったりと台湾を愉しんで頂くのです。日本の内閣総理大臣のように」

柳井家の全員が、台南市の自分達の農園に集合していた。コーヒーの木々の間に植えているマンゴーが熟れ頃・収穫期を迎えており、家族総出で収穫作業に臨もうとしていた。

(つづく)

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