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もう何も疑うな Part.2

前回の記事では、ローマで行きたかったレストランが目の前に現れて来てくれたことについて書いたけれど、今度は場所をフィレンツェに移して話を進めていこうと思う。

フィレンツェはトスカーナ地方にある街で、街ごとユネスコの世界遺産に指定されている。
周りは美しい丘陵地で絶景が広がっていて、「トスカーナ」と検索すれば、だいたい高原に細長い杉の木や葡萄畑のある景色を見ることができるはず。
僕もトスカーナと聞くとそんな景色を思い浮かべていたので、そこで写真の撮影でもしたいなと思っていた。

フィレンツェではファッションデザイナーの友人宅に泊まっていて、その友人が「トスカーナっぽい風景」のある場所を知っているということで、ある日彼が車でそこまで連れて行ってくれることになった。
その日はキラッキラに晴れていて、想像していたトスカーナの風景の中で撮影ができることにワクワクしていた。

フィレンツェにて

フィレンツェからはだいたい1時間弱くらい車を走らせただろうか、グルグルと山の中の細い道を進んで行くと、どこかで見たことあるようなトスカーナの風景が目の前に広がって来た。
さらに友人曰く、目的地側には湖もあるという。
湖で撮影するのも面白そうだなと思った。

そして僕たちは目的地に着いた。
僕たちは車を降り、心を躍らせ目の前に広がるトスカーナの草原に駆け出して行った。
数枚景色の写真を撮った。
すると何だか雲行きが怪しくなってきた。
あんなにも快晴だったにも関わらず、突然空が曇り始めたのだ。

辺りもどんどん暗くなってきて、ついには雨が降り始めた。
まだ少しの雨だったので、折角来たのだからと撮影を進めて行った。
ある程度草原で撮って、湖の方へ向かった。
この頃には雨は止んでいた。

フィレンツェにて

オリーブの並木が車を停めていた場所付近にあったので、最後に僕はそこで撮影がしたいと思っていた。
そうして来た道を戻っていると、また急に雨が強く降り始めた。
強いというよりも、もう土砂降り。
この状態では撮影もできないので、しばらく木の下で僕たちは雨宿りをした。

立ち往生して降りしきる雨を眺めていると、ご縁のあった映画作家・大林宣彦さんがよく仰っていた「恵みの雨」という言葉が頭に浮かんできた。
映画の撮影では、天候も撮影を動かす大きな要素になる。
しかしシーンが晴れの設定であっても、雨が降れば、その雨すらもシーンに活かそうというのが、「恵みの雨」という彼なりのとてもポジティブなフィロソフィー。

雨がある程度止んでからは、足を土の中に泥濘ませながらオリーブの木に光る雨粒を撮ったり、雨の匂いを感じるような画を撮っていった。
ひと通り撮影し終わったら、帰路に着き始めたのだが、空はまたみるみるうちに快晴に戻ったのであった。
というよりも、山を下って行くと雨すら降っていなかったことがわかった。

ミケランジェロ広場から見たフィレンツェの街

イタリアには9日ほど滞在し、ニューヨークに戻った。
そしてあの雨のトスカーナで撮った写真を編集していると、ふと『Blue Toscana (青いトスカーナ)』という言葉が思い浮かんだ。
僕が思い描いていたトスカーナとは全く違う景色と体験。
だけど、何だかあの青い時間を表現するにはそれ以上ないような言葉。

現実で起こることは全て自分の意識と連動している。
過去も未来も知っている意識の表れが現実。
過去しか知らない頭は、予定通りに行かないとき、「もう!」と突っ込みを入れたくなるけれど、それこそが実は用意されていたことだったりする。

雨のトスカーナで撮った写真は後々『Blue Toscana (青いトスカーナ)』というタイトルで、海外の雑誌に掲載されることになった。
そう、これが前回から続く「もう何も疑うな」の続きなのであった。

あの日の雨もきっと本当は降ってくれたんだ。

太陽


2週に渡り『もう何も疑うな』の記事を読んでいただきありがとうございました。
次回もまたここでお逢いできることを楽しみにしています。

あとがき
『青いトスカーナ』は現在Louscious Magazineにて、オンライン限定で7月10日に解禁になりました。
よかったら掲載されている写真に触れて、青を感じてみてください。
次回はより詳しく『青いトスカーナ』について記事を書いてみようと思います。

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