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フィリピンパブが、気になります。

昨日、深夜24時に最寄駅に着いた。僕の最寄り駅は山手線の駒込駅。山手線沿線、そういわれると、言葉の響きは良いけども、駒込はそのイメージとは全く違い、かなりの下町だ。

駅周辺には高層ビルもなければ小洒落た店もなく、古びた中華料理屋と飲み屋が数件あるだけで、駅前は少しもの寂しい。昼間は地元の高齢者達がやたらゆっくりと駅前の通りを歩いている。

夜になろうものなら、駅前の店はほとんど閉まるし、駅前で酔っ払ったリーマンや学生がたむろしている姿を見ることもない。キラキラ光っていても大体がチェーンの居酒屋で、美味しいラーメン屋もことごとく移転してこの街を出て行ってしまった。

だから、夜、駒込に帰って来る度に「まっすぐお家に帰りなさい」と言われている様な気がする。しかし、ぼくは天邪鬼。そう言われると、なんとかして寄り道する場所はないかと、探したくなる。

以前なら、決まったラーメン屋に立ち寄っていた。そこの店はいつもブルーハーツが流れていて、日曜日の夜中に行き、ブルーハーツを聞きながら美味い坦々麺を食うと力が湧いてくる。ブルーマンデーなんてぶっ飛ばせ、そういう店だった。年末に川崎に移転してしまったのだが。

それ以来、この街には何かないものか、と探していたが、やはりそう簡単に見つかるわけもなく。ブサイクな姉ちゃんが呼び込みをしているガールズバーくらいしか見つかっていない。それなら帰って寝た方がいい、それかポテチとコーラを買って家で映画を見た方がいい。

昨日も諦めて、まっすぐ帰ろうとしていた。でも、いつも通る道は面白くないので、敢えていつも通らない道を歩いて帰ることにした。

そして、知らない角を曲がってみると、ネオン輝くフィリピンパブなるものが目の前に現れた。

フ、フィリピンパブだ……!!!思わず生唾を飲んだ。

いつもの僕だったら、大して興味は示さなかったと思う。普通に家に帰って風呂に入って寝てたはずだ。

ただ、その日は違った。山手線で、可愛い上にボンキュッボンな東南アジア系の女性を見てしまったのだ。あれは反則だ。そう、僕は数分前に東南アジアは最高であると、気付かされたばかりだったのだ。

フィリピーナ、知り合いてぇ…。財布には金はほとんどなかったが、3000円で国際交流ができると考えたら、日本の将来の平和の為にもこの出費は必要なのではないか。未来ある若者(もはや中年)の僕はそう考えた。

僕は店の前に立つ。

「このドアを開けたら、さっきみたいな女の子とイチャイチャ(国際交流)できるんだぞ、お前!」僕の頭の中にいる悪魔が囁いた。

うおー、間違いねぇー!ドキドキは加速していく。うおー、全然金ないけどノリで行くかー!

ドアノブを掴んだ。その時僕の頭の中にいる天使がささやく。

「待ってください。ここは駒込ですよ?しかも住所的にここは北区です。それに昼間は高齢者しかいない街なんですよ?こんなところに若くて可愛い女の子が集まるとでも思いますかあなたは?」

た、たしかにっ!僕はドアノブから手を離した。

「いやいやいや、駒込は文京区と豊島区の境目で、金持ち多いやんけ?金持ちのジジイ目当てにわんさかフィリピーナが来るはずやぞ!?」僕は再びドアノブを掴む。

「1セット90分3000円ですよ?あなたがもし容姿に自信があるなら、もっと値段が高くて収入の良い店で働くと思いませんか?」ドアノブを離す。

その後、僕は1人で何度も店のドアノブを掴んでは離し、掴んでは離し、掴んでは離した。気付いた時には既に1時だった。

なんだかめんどくせー!ただでさえ疲弊しているのに、こんなんで楽しめるわけもなさそう、、、ってことでその日は諦めた。

しかし、帰り道にあまりにフィリピンパブが気になり、僕はまずwikipediaでフィリピンパブを調べた。

フィリピンパブは、日本において主にフィリピン人が接客するパブ、飲食店。フィリピン人ホステスとの会話や飲酒、食事の他に、ダンサーによるショーやカラオケなども楽しむことができる。(Wikipedia "フィリピンパブ"より)

Wikipediaによると、フィリピンパブの最盛期は、2004年だったらしい。年間8万人以上のフィリピン人が来日し、全国各地にフィリピンパブがあったとのこと。丁度僕が中学一年生、友達から回ってきた洋モノのAVを、親の目を盗んで夜中にコソコソ観ていた頃である。

しかし、その後、アメリカから「日本人は人身売買を公認している」と名指しされたことから来日数は減っていき、2006年には2004年の10%程の来日数になったそうだ。丁度、僕が高校生になった彼女に「そろそろキスをしたい」と面と向かって言って振られた年である。

その後、フィリピンパブの存在がアンダーグラウンドになっていくにつれて不法滞在や、偽装結婚、受け入れ側の賄賂など、様々な犯罪が行われる様になったという。

結婚さえすれば、滞在ビザが下りるので、今では、すでに日本人と結婚している者が多くなりそれに合わせてエンターテイナーの平均年齢は急激に上昇しているとのことだった。

………えっ?既に結婚?えっ?平均年齢が急激に上昇?えっ?どゆこと?

一瞬、目を疑った。
これはあってはならない事態である。

僕がフィリピンパブに求めたのは若さであり、あわよくば!なんちゃって!みたいな疑似恋愛(国際交流)だったはず…。一般的な男の人がキャバクラに求めるものと全く同じだった。フィリピンパブに対する熱が急激に冷めていく。

変な期待してドアノブ触ったり離したりしてたのがめっちゃ恥ずかしい…!!

「いや、でも、あそこの店に限ってそんなことありませんって。絶対若い子がいるはず。」

そう思った。調べよう。絶対若い子いるだろ、絶対いるはず。そう信じていた。運が良いことにHPが見つかった。早速働いている女の子一覧を見てみる。

…………。

一番上に表示された女の子の年齢は23歳、と書かれているではないか。めっちゃ良い感じだ!当たりだったんだ!と思ったのも束の間。

写真に写っている女性は紛れもなく、どこからどう見たって、明らかに23歳ではないのだ。美人だけど、衰えのある、いや、でもこれ、23歳じゃなくね?いや、でも可愛いのか、いや、でも23歳じゃないだろ?

それ以外の女性に至っては、ギャグなのかと言いたくなるくらい、あからさまな年齢詐称がひどかった。他の店もこんな感じなのか?深夜のネットサーフィンは終わらない。

結局その後、フィリピンパブとはなんなのか、フィリピンパブにハマった男性の末路、都内のフィリピンパブでは何が行われているのか、様々なことを調べた。

そして、朝4時、僕はある結論にたどり着いた。

フィリピンパブの聖地、竹ノ塚はマジでハンパない。

生きます。