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めちゃくちゃに欲している

「うぉぉぉ!!!彼女が欲しい!!」
「なんだ急に!?」
「うるさっ!」

ここは昼時の学生食堂。周りは集合場所として大学生たちがウロウロしている。人が多くゴミゴミしていて、本当にご飯を食べるところなのかと考えてしまうくらい落ち着けない場所だ。

全体的にフワフワした雰囲気が漂う食堂で、俺は内から湧き出る衝動のままが口からでてしまった。

一緒に食事をしている友人たち3人は食べる手を止め、全員が俺の方を見ている。少し申し訳ない。
辺りを見渡すと、他の席の人間たちもチラホラこちらを見ている。
先ほどまでの食堂の雰囲気と違い、少しピリついた。
若干気まずい。

「彼女が欲しい!」
「本当になんだよいきなり、二回言わなくてもいいし。うっせ。」
「大学入ってもう一年、こんな男ばっかでいて何が楽しいだ。お前らもそう思わんかね。」
「ま、まぁ」

俺の言葉で最初は皆疑惑の目をして見ていたが、彼女欲しいという一声は皆の共感をくすぐったようだ。
皆その言葉を聞いた後、食事を再開した。

「いきなりうるせぇよ。もうちょっと静かに言えって。」
「それはごめんて。でもお前らもそう思わん?ずっと同じメンツの男ばっかで昼飯食って、授業でて、帰って寝て。つまらんくないか」
「それもそうか。でも俺は男ばっかでつるんでも楽しいけどな」
「いや、俺はいやだね。強がんなって」
「いやいや彼女は欲しいだろ」

一人味方がいた。

否定した友人が一度ため息をつき、辺りを見回しながら口を開く。

「あのなぁお前ら、そんな彼女欲しいんだったら作ればいいじゃん。そこらへんに女なんてたくさんいるぜ?別に声かけりゃ彼女なんてすぐできるだろ」
「それができたら苦労しない。」
「そうそう、お前も声かけなんてできないだろ」
「じゃあもうこの話は終わりだな、チキン共」

話も終わりというように食事を再開する目の前の友人に少し腹が立った。

「そんなに言うんだったら、やってやるよ!」

緊張しながら席を立ち窓際の女子会グループの席へ向かう。

「見てろよ!?」

自分たちの席から様子を見る友人二人はニヤケ面。

「あれ成功すると思うか?」
「いや、百パーむりだろ。見てみろって。」

それら予想は的中。
しばらく眺めていると、肩を落とした阿呆がこちらに向かってくる。

「ダメだった・・・・・」
「そりゃああんな大声出したやつ怖いだろ。」
「でもお前はよくやったよ。」

席に座ると、笑いながら友人たちが迎えてくれる。

「で、なんて言われたんだ?」
「いや、一回食事でも行かないかって言われた・・・いきなり彼女は難しいって・・・」
「「は!?」」

予想外の返答に二人の阿呆は驚いた。

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