暇つぶしにどうぞ。ショートショートを書いていきます。

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最近の記事

フィクション

出会いは大学時代のアルバイトだった。 当時の俺は金欠で、何事をするにもお金が頭の片隅にある状態。 いくら焦らない性分の俺でも、(これはいけない)と思い、アルバイトを始めることにした。 先輩からの紹介で入ったバイト先はとても楽で、立って同僚と雑談しているだけでお給料がもらえる呑気な職場。入って一ヶ月は楽しくお話ししているだけで最高であった。 すぐに馴染めたのは幸運だった。 しかし、いきなり状況が一変した。 「はじめまして、今日からお世話になります。吉田です」 いつも

    • めちゃくちゃに欲している

      「うぉぉぉ!!!彼女が欲しい!!」 「なんだ急に!?」 「うるさっ!」 ここは昼時の学生食堂。周りは集合場所として大学生たちがウロウロしている。人が多くゴミゴミしていて、本当にご飯を食べるところなのかと考えてしまうくらい落ち着けない場所だ。 全体的にフワフワした雰囲気が漂う食堂で、俺は内から湧き出る衝動のままが口からでてしまった。 一緒に食事をしている友人たち3人は食べる手を止め、全員が俺の方を見ている。少し申し訳ない。 辺りを見渡すと、他の席の人間たちもチラホラこちら

      • 夏休みの一幕

        のどかな田んぼ道を歩く。二人の麦わら帽をかぶった少年。 空は晴れ、山の向こうには入道雲が見える。 夏本番ということもあって、気温は暑い。しかし、吹く風が体を優しく撫でることで不快感を覚えることはなかった。 「何する?」 「川でも行く?」 すでに夏によって上がっているテンションはこの何でもない会話すら楽しくさせている。 「昨日も行ったじゃんか、最近毎日行ってるし。」 「そうだっけか、まぁ楽しいからいいじゃん!」 「まぁそれもそっか! じゃ行こうぜ!」 毎日同じ提案を

        • むずかゆい

          7月の昼下がり、散歩に来ている親子がベンチで座っている。 「かゆい〜」 少女は腕を掻き毟っている。 掻いた部分は赤くなっており、蚊に刺されたようだ。 「大丈夫?薬塗ろうか?」 「うーうん、痛いからやだ」 隣で母親らしき人が少女を心配して声をかけている。 「でも、それじゃあ治らないよ?それでもいい?」 「だめ。かゆいのや」 「じゃあ薬塗ろうね」 「それもいや」 二人の意見は食い違っている。 片方は痒いけど痛いのも嫌であるから、薬は塗らない。 もう片方は、痒いのが嫌であ

        フィクション

          孤独な人間達とイルミネーション

          空を眺める。 何もない。 「私たち何やってんの?」 「もちろん、夜空を見てるだけだよ。一緒じゃんか」 「こんな何もない夜空見て何が楽しいの、星も何もないじゃない。これだったら来なければよかった。」 「まぁそんなこと言わないで。一緒にみようよ。」 この二人の男女は何も見えない夜空を公園のベンチから眺めている。 周りに人はいない。 住宅街の隙間にあるような公園に二人はいた。 「この時間に呼んで何か話あると思ったのに。公園で空を眺めるだけ?つまらない。」 「そんなかっかしないでっ

          孤独な人間達とイルミネーション

          ルーチン

           男は独身であった。 また、男は若く健康的な体を有していた。朝はやくから労働に勤しみ、夜遅くに帰宅する勤勉な青年であった。 男は家賃5万円のワンルームに住んでいた。部屋には最低限の家具しか置いてはおらず、 普段使わないものは全てクローゼットに収納している。そのせいか、味気のないような部屋で生活していた。    いつものように男は寝るために部屋の隅で畳んであった敷布団を出し、部屋の真ん中にその布団を敷いた。  殺風景な部屋の真ん中に敷布団があると、その部屋が寝るために存在してい

          ルーチン

          とある人間の一日とその全て

          どこへ向かうか。 今、ずっと願っていた人生が否定された。目指すべき何かは手の届かない場所にある。 そのきっかけは生活のそこら中に落ちている。 気づかないだけだ。 俺は布団にくるまり考える。 退廃的な人生。外が怖い、内が無い。 頭の中で、無と有の中を彷徨う。 考えれば考えるほど。他人が考えていることが分からなくなる。一応妄想するが、正解か否か。思い込んでいるだけではないか。 周りの目を通した自分がどう見えているか分からない。 自分の判断の良し悪しも。 何も、分からな

          とある人間の一日とその全て

          カイクジェンナ

          見知らぬ草原にいる。 なぜここにいるかは分からない。 夢だろうと考えるにはあまりにも感覚が刺激される。 足元ではしっかりと土を感じる。 吹く風は皮膚を優しく撫で、心地よさを感じる。 顔を上げると見渡す限り緑の草原、連なる黒がかった深緑の山々、その後ろにたたずんでいる巨大で雄大な入道雲、それらを全て包むただただ広い青。 鼻から空気を思い切り吸う、緑の香りが全身を巡る。 耳を澄ますと、風がなびく音が聞こえる。 不快感というものを全て排除し、全身で心地よさを味わっている感

          カイクジェンナ