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ホスピタリティは自分のために

「ホスピタリティ」という言葉についてです。

ホスピタリティ(hospitality)
親切にもてなすこと、歓待、厚遇。
――研究社 新英和中辞典 より引用。

あ。
念のため、おことわりですが……
「おもてなしの気持ちを忘れるな!」みたいな、語気強めの自己啓発やクレームではないので、安心してくださいね。笑

結論はタイトル通り、ホスピタリティは自分のためにあるという話。

「ホスピタリティ」が自分のことになった日

前職の上司は、褒め上手な人でした。

私が、社内SEとしてヘルプデスク業務をやっていた頃の失敗談です。
慣れない相手に過度な気遣いをして、遠回りな仕事の進め方をしていた私。
たとえば、メールでの伝え方が気になって、どうもレスがワンテンポ遅れてしまったり。
忙しい時期には、その迷いや選択ミスが積み重なり、チーム運営の妨げになったことがありました。
そんな時、上司は私の元へやってきて、真っ直ぐにこういうのです。

「あなたって、ホスピタリティが抜群にいい人だよね」

驚きました。
過剰な気遣い。丁寧過ぎて遅く、逆に慇懃無礼とも取れる仕事ぶり。
あまつさえ、チームの駆動力を下げてしまっている場面です。
そこで「ホスピタリティが高い」と励ます、上司のネガポジ反転具合に。

そして、上司に言われるまで「ホスピタリティ」という言葉には縁がないと思って暮らしてきた私。
その言葉は営業職や、接客業(特にホテルマンや家政婦といった人たち)に求められる考え方だと思っていました。

だって、
システムエンジニアに「おもてなし」なんていう概念はないでしょう?

そんなふうに完全に勘違いしていた私は、予想外に褒められたその日から「ホスピタリティ」という言葉を褒め言葉として咀嚼し、考え始めました。

ホスピタリティって、なんだろう?

相手へのおもてなし、満足度を上げるため?

上司から褒め言葉をもらってから、自分にあるホスピタリティ(丁寧な仕事の進め方)を、長所として意識するようになりました。

ただ、この段階でもまだ僕は「ホスピタリティは相手の満足を引き出すためにある」という勘違いをしていました。
それが誤解だと気づいたのは、皮肉にも会社を辞める直前でした。
きっと、多忙な仕事を冷静に振り返る余裕ができ、客観的に見られたのでしょう。

ホスピタリティは自分のためにあるのでした。
今なら、はっきりと分かります。

それは「相手を蔑ろにして、打算や自己満足でおもてなしをしろ」ということではありません。

懇切丁寧に進めることで、相手と快い関係になり、互いに信頼しあえる。
それはなにより、自分がストレスなく仕事を進めるために大切なこと。
だから、巡り巡って、ホスピタリティは自分のためにあると思うのです。

上司が言った褒め言葉「ホスピタリティ」を、そうして客観的に捉えられるようになってから。
私は元来の過剰な気遣いにも自信が持てるようになり、結果的に仕事の速度が上がったのでした。
惜しむらくは、先述の通り、もう会社を辞めてしまったのですが。

そっちのほうが気が楽になる

でも、この「ホスピタリティは自分のために」という考え方。
どんな職種でも、あるいは仕事以外の場面でも役に立つと思うのです。
冒頭にも言ったとおり、「おもてなしの気持ちを忘れるな!」という意味ではありません。

自分が、相手と気持ちよく接するために。
自分にとって息の詰まるような状況で、少しでも風通しをよくするために。
ホスピタリティ、おもてなしや親切は、自分自身のためにあるのだと。

そう思っていたほうが、気が楽になるはずです。きっと。

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