採用ブランディングを成功させるには、代償と覚悟が欠かせない。
最近、採用ブランディング系の書籍を読んでいて絶望しています。それは、一番大事なことが書かれていないからです。
意図的に隠しているのなら、それは採用に困っている企業を騙す行為だと僕は思いますし。もしかして、著者も気がついていないのでしょうか。いや、まさか、そんなことはないだろう。と思いつつも、本を出していながらも意外と薄っぺらい人って多いので、本当に知らないで書いているのかもなぁと思ってみたり……。
こんにちは、採用コピーライターのオヤマダです。
今回は、採用ブランディング会社が隠しているか、もしくは気がついていない、採用ブランディングを成功させるには、企業はある覚悟をしなければならないって話をします。
この記事を読むメリット
この記事は、中小ベンチャー企業の経営者・採用担当者向けに書いているものです。記事を読むメリットは、採用ブランディングとはどういうもので、何が変わることで採用効果が上がるのかって理由と、そのために企業が払う代償について知ることができます。
経営者・採用担当者向けの記事だと書きましたが、採用に関わる仕事をしていて担当企業の採用が上手くいっていない人たちも読んでおいたほうがいい内容かもしれません。
では、本題に入りましょう。
採用ブランディングの不都合な真実
効果が出る採用ブランディングには「代償」がつきます。必ず代償を払うことになります。
なぜならば、
効果が出る採用ブランディングとは、「ターゲットを絞ることで応募対象となる求職者を減らし、求職者にとって都合がいい何かを企業が許すことで入社メリットを作ること」だからです。
採用ブランディングを、「会社の持っている良さを言語化して、ビジュアルとコピーで分かりやすく魅力的に求職者に見せること」と思っていたら、その認識は改めたほうがいいと思います。だってそれは、ただライティングの力で企業と仕事をいい感じに見せるだけですよね。
以前、求人広告ライターと求人広告コピーライターの違いについて書いた記事でも触れていることですが、上記の採用ブランディングはライター(W)の仕事です。
もちろん、意味がないとは言いません。多くの企業様が「よく分からない会社説明」と「よく分からない仕事説明」によって機会損失を起こしているのは事実です。でも、上記のようなライティングで何とかする採用ブランディングでは、たぶん、お金をかけた割には採用効果が向上することはないと思います。実際、そういう話をいろいろ聞きますしね。
会社や仕事をなんとなく「いい感じ」に見せただけで、今現在、応募が来ない企業の募集に応募が来るようになるのなら苦労はしません。就職とは生活と未来がかかった大きな選択です。みなさんに置き換えて考えてほしいのですが、なんとなく「いい感じ」になっただけで、
車を買いますか?
結婚相手を決めますか?
マイホームを買いますか?
社員の給与をアップさせますか?
新事業を立ち上げますか?
しませんよね。
人間は重要な決断をするときに必ず「実益」を求めます。実益とは「自分が欲しがっているものが手に入る」ということです。就職・転職とは人生における重要な決断。分かりやすい、雰囲気が良い、といったなんとなく「いい感じ」だけでは求職者の行動変容は起こせないんですよ。
求職者には必ず、御社と比較している別の選考中の会社があります。今現在、応募が来ない、応募が来ても辞退される企業様は、その比較検討で負けているわけです。比較検討されるのは「実益」です。求職者は「どっちの会社に入ったほうが自分にとって得があるか」を考えて選択をします。「実益」で負けている企業様は選ばれないのです。
「会社の持っている良さを言語化して、ビジュアルとコピーで分かりやすく魅力的に求職者に見せること」を目的にした低レベルな採用ブランディングを行なうと何が待っているのか。
それは、
「会社の持っている良さを言語化して、ビジュアルとコピーで分かりやすく魅力的に求職者に見せても、自分たちの会社には応募が集まらない」という現実です。
きっつー。
採用ブランディングしたら、自分たちの会社の求職者からの人気のなさがはっきりしてしまった……なんて笑えないことが結構起きていたりするんですよね。
で、上記の採用ブランディングを行なった会社から、「定期的に情報発信していかなければ、今の時代の採用は難しい」といった話が来て、採用広報記事制作プランとか、採用代行プランとか、さらにお金がかかる新しい提案をもらっていませんか。まあ、その提案にはたしかに一理あるのですが、僕は「そこじゃねえ」という意見です。
ポイントは「実益」なんですよ。この「実益」をマーケティング用語で「ベネフィット」と言います。要は、「入社することで求職者が得られる恩恵」ということです。
採用ブランディングに必要な「代償」と「覚悟」
結論から言うと、効果を出す採用ブランディングには「代償」と「覚悟」が必要です。
なぜか。
その話をするために、まずは起きていることの整理からしていきましょう。今現在、求人を出しても応募が集まらない、採用ができないのは、比較検討で採用上の競合企業に「実益」が負けているからです。ここで勝つためには、勝てる「実益」を作る、もしくは見つけなければなりません。
じゃあ、どうするのべきなのでしょうか。
採用難易度が高いITエンジニアや施工管理職の場合は、「給与の金額」や「福利厚生の充実」で争っていたりします。でもこれは、資本力の強い企業が圧倒的に有利なゲームです。中小ベンチャー企業が同じ方法で戦うことは出来ません。別の軸で「入社することで求職者が得られる恩恵」を作っていく必要があります。
その一つが「許す」です。
・明るくハキハキした対応をしなくていい。
・会社の飲み会に参加しなくていい。
・主体的ではなく、受け身でいい。
・仕事上の人間関係は最低限でいい。
・オフィスに出社しなくていい。 など
上記のように、一般的には「社会人としてそれはアウトだろ!」と思われることをあえて会社が「許す」ことで、「入社することで求職者が得られる恩恵」を作っていくというものです。
分かりやすく極端な例を挙げましたが、世の中には「給与が下がっても出勤したくない」「仕事は優秀だけど、職場の人間関係に余計なパワーを使いたくない」といった人は結構います。多くの企業が求めている「ふつうの人」の「ふつうなら当然できるだろ」と思われていることを「しなくていい」と会社がお墨付きを与えることで、採用における競合優位性が生まれます。
もう一つは「弱点を伝える」です。
・組織の中間層がいない。
・20代若手の教育が追い付いていない。
・営業手法が属人的。
・人手不足。
・仕事意識の幼い人間が多い。 など
会社の弱点は、求職者にとって必ずしもマイナス情報にはなりません。「組織の中間層がいない」から「すぐにポジションにつける」といったメリットと紙一重だったりします。しかし、会社として自社の弱点を表に出すことは抵抗があるでしょう。他社はやりたがりません。でも出すことで情報に信憑性が増すとともに、他社がやらないから競合優位性にもなります。
今ご紹介した「許す」「弱点を伝える」は、効果を出す採用ブランディング手法のほんの一例です。
ここで、この記事の本題に戻るのですが、
効果を出す採用ブランディングに「代償」と「覚悟」が必要だといった意味がお分かりいただけたと思います。
人間は分かりやすい「実益」に惹かれます。「給与」「福利厚生」といった分かりやすい「実益」に流されている人間に、「こっちにもいい会社あるよ!」と振り向いてもらうには、相応の対価を用意する必要があるわけです。お金と手間もかけたくない、かけられないのだとしたら、何かを捨てる決断をする必要があります。それが、僕がこの記事を伝えようとした「代償」と「覚悟」です。
採用ブランディングは戦略・戦術だ
採用ブランディングは、自分たちは何も変わらなくていいけど、採用効果だけがかわる魔法なんかではありません。自分たちが変わらなくていい施策は、結果も変わりません。それくらい、2022年における日本国内の採用は難しくなってきています。
この記事で僕が言っていることは、奇抜なことでもなんでもありません。
「彼を知り己を知れば百戦殆からず」とは、「孫子・謀攻編」にある格言の一つで、「敵を知り、己を知れば、どんな戦いも負けることはない」の通り、「採用という戦いで勝つためには、勝てる相手(自社に応募してくれそうなターゲット設定)と、勝てる手段(そのターゲットが惹かれるベネフイット)を用意する」という至極当たり前のことを言っているだけです。
「ふつうの人」を「採用したい」と考えている企業様は多いと思いますが、価値観の多様化が広まった今、「ふつうの人」はもういません。これまでの「ふつう」は通用しない時代です。
だからこそ、「自社にとって必要な人にどんなスキルと志向性の人なのか」を明確にして、余計な採用要件(こういう要素もあったらいいなぁ的選考基準)を設けず、求める人材の興味を引かせるネタを作る・探すことが大事であり、効果が出る採用ブランディングだと僕は思います。
かっこいいホームページを作って、それっぽいキャッチコピーをつけても、存在しない虚像に人の心は動かされません。求職者(その中でも自社がほしいターゲット)にとって確実に手に入る実益(入社することで求職者が得られる恩恵)を追求していく。この痛みが伴う面倒くさい作業から逃げていては、採用ブランディングは成功しません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
この記事が、採用広報のお役に立てれば幸いです。御社の採用活動が上手くいくことを願っております。
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