人が集まらないリフォーム会社を、広告コピーで救った話。
挨拶
こんにちは、採用コピーライターのオヤマダです。
小学校の卒業式の時、校長先生が僕たちに贈ってくれた言葉が素敵でした。
「たった一言が人の心を傷つける。たった一言が人の心を救う。みなさんは多くの人を救える人間になってください」。
この言葉の本当の重みを理解したのは、大人になってずっと経ってからでした。コピーライターになって、たった一言が生み出す力のすごさを、僕は日々感じています。
とあるリフォーム会社さんの採用相談
採用コピーライターとして働いている僕のところに、そのリフォーム会社様から採用相談の依頼があったのは、数年前のちょうど夏が終わって秋の訪れを感じさせる頃だったと記憶しています。
そのリフォーム会社様(仮にA社とします)は、これまでいくつかの求人メデイアに求人広告を載せたそうですが、どこでも応募がほとんど集まらなかったそう。募集職種は、リフォームアドバイザー。いわゆるリフォームの営業職です。
リフォームアドバイザーは人気がない職種です。というのも、一軒ずつご家庭を回って「リフォームにご興味はありませんか?」と聞いていく訪問営業のイメージが強く、またその営業が過酷ということもあり、求職者は避ける傾向にあるんですね。ただし、応募が集まるリフォームアドバイザー募集もあります。その場合は、インセンティブ(契約貰った時に入るボーナス)が高額で、未経験から一発逆転が狙えるチャンスがある場合だったりします。
いくつかの求人メディアに掲載されたA社の求人広告を見て、僕は特徴をまとめました。
ざっくりこんな特徴でした。まとめると、営業職としては給与は高くなく、インセンティブのうま味もなく、残業だけは多い仕事だったわけです。応募が集まらないのは当然だったんですね。
だが、離職率が低い
営業としてメリットが感じられない職場のはずですが、「なぜか人がほとんど辞めない」という特徴がありました。求人広告を出す理由も、新店オープンのために、立ち上げのためにいなくなった既存店舗の人員補充。なぜ、人が辞めないのか。僕は、ここに求人広告の効果改善の突破口があるような気がしました。
ところが、その理由を聞いても核心っぽい答えが出てきません。
「みんな、楽しそうに働いている」
「ウチは気のいい人が多い」
たしかに魅力的なポイントですが、本質的な感じがしない。なぜ、楽しそうに働いているのか。なぜ、気のいい人たちが集まるのか。その理由こそが、A社ならではの魅力に違いません。
辛抱強くお話を聞いていると、興味深い話が出てきました。
「ウチは他のリフォーム会社が絶対にやらないことをやっているから。全然効率的じゃない。だけど、それが正しいこと、お客さんから本当に求められていることだって信念があるから」
くわしく聞いてみました。
実はこのA社、「お客様からのちょっとしたリフォームの相談にすべて応える」ってことをやっていたのです。
地域のリフォーム相談屋さん
普通の会社ならば、受注見込みの高いお客様に積極的にアプローチして、見込みの低いお客様にはあまり接触しない、といった営業スタイルを取ると思います。そのほうが効率的ですよね。
でも、このA社さんは会社にかかってきた「ちょっと水回りのことで聞きたいんだけど…」といった、受注から遠そうな問い合わせにもすべてきちんと対応する。場合によっては訪問して現場を見てお答えする。こういうことをやっている会社だったんです。普通の営業会社だったら先輩から「ちゃんと考えて行動しろよ!」という見込みの薄いアポも、A社の場合は「行ってこい!」と喜んでOKが出る。
ここにはA社の強い思いがありました。それは、「お客様はリフォームがしたいんじゃなくて、暮らしの中の不安を取り除きたい。リフォームはあくまでその手段である。だから、地域のリフォーム会社としては、地域の人たちからリフォームに関連する悩みを気軽に聞ける存在にならなければならない。営業をされると気軽に聞きやすい存在じゃなくなるから一切営業はしない。相談に乗って、とことん乗って、納得いただいたらお客様からリフォームの注文をしていただく」というもの。
この姿勢を10年貫いてきて、地元では「相談のしやすいリフォーム屋さん」というブランドが確立されているらしいんですよ。で、この地域では主婦の横のつながりがまだ強くて、「リフォームの相談をするならA社」というクチコミがすごいそう。残業が多かったのも、平日会社から帰ってきた旦那さんも交えて相談に乗るようなことも多々あるからだとか。大手リフォーム会社の営業所ができたけど、A社が強すぎて撤退したというエピソードもあって、僕は驚きました。
社長の体験談と思い
「相談のしやすいリフォーム屋さん」を社長が作っていこうと思った体験談がまた面白かったのです。
社長が家を建てようと考えたとき、「一流のサービスを見てみたい」と思い、TVCMをガンガン流している超大手有名ハウスメーカーに依頼をしたそうです。ところが、その営業の対応にガッカリしたのだとか。こっちは一生に一度の大きな買い物をしているのに、営業さんはいくつか動いている仕事の一つといった感じの対応だったそう。たしかに立派な家は建った。でも、いい気持ちで竣工を迎えられなかった。その時、住まいに関わる仕事に必要なことが分かったそうです。
それは、お客様と真剣に向き合うこと。
超大手有名ハウスメーカーの営業さんの対応でカチンときたことをエネルギーに、自分が正しいと思う営業スタイルを正解にするために、社長は頑張ってこられたそうです。
めちゃくちゃいい話じゃないですか、と僕は思いました。しかし、A社さんはこの話をそんなにいい話だと思っていなかったのです。そして求人広告を見直すと、A社さんらしい営業スタイルや社長の思いがどこにも書かれておらず、普通のリフォーム会社の営業募集のように書かれていました。
A社さんは分かっていらっしゃらなかったようなので、僕は言いました。
「他のリフォーム会社と御社では、同じリフォームアドバイザーでも活躍できる人材が違うと思います。A社さんは他のリフォーム会社さんとは違うユニークさと強さを持っているので、それが分かるような採用ブランディングをしたほうが絶対にいいですよ」
「絶対に営業をしないリフォーム会社」
僕は、このような(↑)採用ブランドをA社に提案しました。
自分たちから絶対に営業をしない。これはA社が行なっている事実です。そして他社にはない特徴でした。僕はこの言葉でA社が大切にしている思いや姿勢を分かりやすく伝えました。
営業をしないA社のリフォームアドバイザーに求められているのは、お客様の相談に乗ることです。ただ相談に乗るだけではなく、お悩みを解決しなければなりません。つまり、リフォームや住まいに関する専門知識を身につけていく大変さがある仕事です。しかし、相談に行ったからには何かしらの成果を求められない仕事でもあります。
A社のリフォームアドバイザー募集は「お金を稼ぎたい!」という人にはヒットしない求人でしたが、「人の役に立ちたい!」という人には大ヒットする求人でした。そして、A社で活躍できるのは「人の役に立ちたい!」という人だったのです。
A社が求人広告で自社紹介をするときに「絶対に営業しないリフォーム会社」を使って、そしてその理由を伝えるようになってから、求人広告の応募が変わったそうです。まず応募数が増えた。そして、A社の営業スタンスを理解したうえでの意欲的な人からの応募ばかりになったとのこと。
新店をオープンさせたものの、人手が足りなくて疲弊していたA社は、意欲的な新人が入ってきたことで、その教育で一時期は大変だったそうですが(笑)、採用に困らない会社になったそうです。
さいごに
たった一言で、会社のイメージが変わる、気になる会社になる、ということは往々にしてあります。「自分たちには突出した強みがない」「魅力がない」と思っている企業様は多いですが、掘り出してみれば意外な魅力が出てくるものですし、ターゲットを変えればなんでもないと思っていたことが魅力になることもあるのです。
こんな企業様を1つでも増やしていきたい。
それが、「採用コピーライター」を名乗っている僕の夢です。
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