求人広告ライターと求人広告コピーライターの違い。
こんにちは、採用コピーライターのオヤマダです。
今回は、タイトルに書いた通り、「求人広告ライター」と「求人広告コピーライター」の違いについてお話しします。ちなみに僕は、求人広告コピーライター側の人間です。
両者、日本語だと分かりにくいので「求人広告ライター(W)」と「求人広告コピーライター(CW)」と表記しますね。
この記事を読むメリット
採用担当者は、「求人広告ライター(W)」と「求人広告コピーライター(CW)」とは、異なる職種であることを知っておくべきです。
なぜか。
分かりやすいところから話すと、
求人広告ライター(W)はギャラが安い。
求人広告制作1本あたり7000~15000円あたりが相場でしょうか。
求人広告コピーライター(CW)はギャラが高い。
求人広告制作1本みたいな単位で仕事を受けることはあまりないのですが、あったとしたら1本あたり50000円以上です。
この差は何なのでしょうか。
それを知るためには、コピーライターが作る広告コピーとはどういうものかを理解する必要があります。
広告コピーとは
広告コピーとは、クライアントの望む成果を出すために、読み手(ターゲット)に意識・行動変容を起こさせるものです。
もう少し分かりやすく説明すると、
読み手が本来知らなかったことで、買い物に行ったときに購入する選択肢になかったものを、知ることによって選択肢の一つに加わえさせて、購入することもあり得る状態にすること。これが、読み手(ターゲット)に意識・行動変容を起こさせるということです。
「旅行に行こう」と考えている人がいて、気持ち的にはハワイやグアムといった海外旅行の気分だったんだけど、「そうだ。京都、行こう」という広告を見ることで、「京都もアリだな!」と思わせる文章が広告コピーなんだ、と認識してください。
で、
これ(↑)、存在を教えさえすれば、誰でも旅行先に京都という選択肢に加えられるってものじゃないんですよ。
ターゲットである「気持ち的にはハワイやグアムといった海外旅行の気分の人」に対して、「その人は、そもそも京都をどういう風に思っているのか」、「その京都をどう見せれば「おっ」と思ってもらえるのか」、「選択のライバルであるハワイやグアムをこの人はなぜ選ぼうとしているのか」。「どういう価値提示をすれば、京都もアリと思ってもらえるのか」……などなど。
このあたりをよく考えて、ボディコピーの一行ごとに「この一文を読んだらターゲットはこう思う」「次の一文を読んだらこう思う」という計算をくり返し、読み終わった後の読み手の心の持ちようまで持ってくるのが広告コピーであり、コピーライターの仕事なのです。
では、求人広告コピーライター(CW)の場合はどうかというと、
「新しい仕事は何にしようかな?」と考えている人がいて、いろいろな求人サイトやエージェントに登録しているんだけど、クライアントの求人広告を見ることで、「これまでは選択肢になかったけど、こういう仕事もアリだな!」と思わせる求人広告を書ける人が、求人広告コピーライター(CW)ということです。
では、ライターとはどういう仕事をする人なのでしょうか。
ライターとは
ライターとは、依頼された企画内容に合った文章を書く人のことです。
ただ書けばいいわけではなく、読者が理解できるように書かなければなりません。したがって、それなりの日本語作成能力が求められます。「てにをは」を正しく使えることはもちろん、句読点の位置などを正しく扱えることは、最低限求められるスキルです。
企画内容に合った記事を執筆するために取材や調査をしたり、資料を収集したりすることもあります。場合によっては、取材対象者にインタビューをすることも。ライターが書く媒体は、紙であれば書籍や雑誌、フリーペーパーなど。Web媒体としては、ニュースサイト・企業のオウンドメディアもあります。
で、
求人広告ライター(W)とは、求人広告を書くライターのことです。
ここで一つ問題です。ライターとコピーライターとの違いが分かりますか。それは仕事のゴールです。
ライターの仕事のゴールが「文章を書く」なのに対し、コピーライターの仕事のゴールは「クライアントの望む成果を出すために、読み手(ターゲット)に意識・行動変容を起こさせる」です。
で、
求人広告ライター(W)の仕事のゴールは「求人広告を書く」。
求人広告コピーライター(CW)の仕事のゴールは「ターゲットが応募する」。
だから、仕事が違うのです。
このような論調で書いていると、ライターはコピーライターの「下」という印象を受けるかもしれませんが、僕が言いたいのはそういうことではなく、「ライターとコピーライターとでは、得意なことと活躍できる仕事が違う」ということです。例えば、ライターは前提として一定の読者がいるメディアで長文の文章を書くことに長けています。コピーライターは読者がいない、むしろ読むことを歓迎されていない広告で、短い文章で意識・行動変容を起こさせるのが得意、という感じです。
ところが、
求人広告という分野で言えば、求人広告ライター(W)と求人広告コピーライター(CW)とでは上下関係が存在します。それは手がけるものが求人「広告」だから。コピーライターが得意としている分野で、ライターが苦手としている分野だからです。
端的に言えば、
これくらい違います。
この記事の冒頭で「ギャランティが違う」という話をしましたが、その理由をなんとなく分かっていただけたでしょうか。
求人広告ライター(W)の特長と有効活用
求人広告ライター(W)は、「会社や仕事のことを分かりやすく書いて応募を集める仕事」です。
会社や仕事が求職者にとって分かりにくい業種や職種だった場合、この分かりにくいことを分かりやすく書くことで、求職者に「そういう仕事だったのか!」と思っていただいて応募者を集めることを得意としています。
逆に言えば、この戦い方しかできません。
そのため、世間的にイメージが悪い業種・職種、他社との差別化が難しい業種・職種、給与や福利厚生で不利な会社、ターゲット人材が少ない職種、経験者採用といった、難易度の高い採用では成果を出せないことが多いです。なぜなら、難易度の高い採用では、会社や仕事のことを分かりやすく書いても、ターゲットに応募しようと思わせることはできないから。
もうちょっと厳しいことを言うと、会社や仕事のブランディングができません。「分かりやすく伝えること=採用ブランディング」と勘違いしていることも多いです。
求人広告ライター(W)にはどんな人が多いかというと、まずは広告代理店で求人広告制作に関わっていた方。別のライターの仕事をしつつ、求人広告を書く仕事もしている方。企業側の採用担当者だった方がフリーランスになってライターにもなった方。あとは、コピーライターから求人広告も手がけるようになった方、といったところでしょうか。
いろいろネガティブなことを書きましたが、
世の中の多くの採用が上手くいっていない企業の主な原因は、伝えることが下手なため求職者に伝わらなくて採用機会を逃していることです。そのため、求人広告ライターの「会社や仕事のことを分かりやすく書いて応募を集める仕事」で解決できることは多いと思います。
また、取材ができる人が多いため、採用広報記事として社員紹介的なインタビュー記事を書くことも得意な方が多いです。経営者の言葉をまとめるトップインタビュー記事のライティングなどで活躍できます。そしてギャランティが安く、たくさんいます。
ただし、採用ブランディングはできないため、ダイレクトリクルーティングでは成果を出せないことが多いのでご注意を。スカウトメールは文字数を少なめの勝負であり、会社や仕事をどう見せるかが勝負のため、求人広告コピーライター(CW)は超強いです。求人広告ライター(W)はていねいに長い文章で説明しようとします。そのため、全文読まれない&返信率も悪いといった結果になりがちです。
ちなみに、採用コンサルティング会社や採用ホームページ制作会社が謳っている「社内にいるプロのライター」というのは、この求人広告ライター(W)であることがほとんどです。
求人広告コピーライター(CW)の特長と有効活用
求人広告コピーライター(CW)は、「クライアントの採用力でできる最大限のブランディングを行ないつつ、ターゲットとベネフィットを考えたクリエイティブで応募を集める仕事」です。
端的に言うと、採用難易度の高い案件に強いです。
世間的にイメージが悪い業種・職種、他社との差別化が難しい業種・職種、給与や福利厚生で不利な会社、ターゲット人材が少ない職種、経験者採用といった、求人広告ライター(W)では成果を出せない難しい案件で、成果を出すことができます。
もちろん、採用とは運と縁が関わってくるため、成果を100%保証することはできませんが、高確率で成果を出せる人たちです。
なぜ、そのようなことができるのでしょうか。
それは、求職者心理を熟知し、さまざまな業種・職種の知識があり、クライアントの採用力を踏まえて要望を調整し、会社や仕事をどう見せることで応募を促せるかという経験値が高いからです。自分で言うのもなんですが、職人芸の域に達していると思います。
求人広告コピーライター(CW)は、求人メディア運営会社の社内コピーライターを最低3年以上勤めていないとなれません。というのも、求職者心理、さまざまな業種・職種の知識、クライアントの採用力を踏まえて要望調整に必要な相場観、求職者に「この仕事もあり」と思わせるコピーのクリエイティブスキル、といった求人広告コピーライターに必要なノウハウは一朝一夕で身につくものではないからです。社内に振り返り文化があり、すべての仕事で何を狙ってどんな成果を出したかを追っていないと、そして求人広告コピーライターの先輩がつきっきりでフィードバックし続ける教育環境がないと、一人前の求人広告コピーライター(CW)になることは不可能だったりします。
コピーライターが採用業界に出稼ぎに来て求人広告制作を行なう時、求人広告ライター(W)レベルの仕事しかできないのは、このジャンルはニッチなのですが、成果を出すために年単位で積み重ねないといけないものが結構多いためです。
そんなわけで、
求人広告コピーライター(CW)は、求人広告ライター(W)にできる仕事はすべてできます。上位互換と言っても過言ではありません。そのかわり、ギャランティが高いです。そして、あまりいません。
求人メディア運営会社に所属している時は外部の仕事はしませんし、辞めた後は別の業界に行く人が多いです。さらに言えば、近年、求人メディア運営会社各社では業務効率のために分業制を敷いているところが多く、この環境が求人広告コピーライター(CW)を育てにくくしているのです。
採用は「戦略」だけでなく「戦術」も大事
採用戦略とは、「自社の採用計画を実現するためにどんな採用活動をしていくべきかという方針と行動を決めること」ですが、採用戦術とは、「会社や仕事のことをどう伝えるか」ということです。
あまり世間一般では語られてないのですが、採用では「戦略」だけでなく「戦術」も大事です。
なぜでしょうか。
それは、人間が感情の生き物であり、会社や仕事の印象は伝えかた(戦術)で大きく変わるものだからです。
「絶対にないわ」と思っていた会社・仕事も伝えかたによっては「ありかも…」と思わせることが可能です。この部分を得意としているのが、求人広告コピーライター(CW)だったりします。
求人広告コピーライター(CW)の仕事(採用戦術)に、採用戦略が乗ることで大きな採用成果を上げることができるのですが、一流大手といわれているコンサルティング会社でもこの採用戦術を重視していません。難易度の高い採用で戦術が有効なことを分かっていないと感じます。
採用コンサルティング会社も、求人広告コピーライター(CW)の重要性を分かっていないところが多いです。今回の転職活動でよく分かりました(笑)。求人広告ライター(W)のSEOライティングでなんとかしようとしている傾向があるんですよね。成果を出せない採用コンサルティング会社の成果を出せない理由は、採用戦術レベルが低いからです。
求人広告コピーライター(CW)を育てられる唯一の環境である求人メディア運営会社も、採用戦術の有用性は知っているものの、自社の売上に大きく貢献できる要素と見ていないからか、求人広告コピーライター(CW)の価値を軽視しているように感じます。自社出身者の求人広告コピーライター(CW)がフリーランスになった後に、専属ライター契約を結び、ただ求人広告を作るだけのマシーンとしての求人広告ライター(W)としてこき使っていたりします。
そのようなわけで、
採用難易度が年々上がっている今、求人広告コピーライター(CW)の活躍の機会は確実に増えているのですが、これまで求人広告コピーライター(CW)の価値をきちんと評価してくれる受け入れ先があまりなかったこともあり、多くの求人広告コピーライター(CW)たちは別の業界・別の仕事にに流れてしまっている……というのが現状です。
もちろん、フリーランスの求人広告コピーライター(CW)として活躍している方も多いのですが、これは別の問題もあって埋もれてしまいがちです。ここについては後述します。
愚痴っぽくなってしまいましたが、
採用担当者の方には、「求人広告ライター(W)」と「求人広告コピーライター(CW)」を自社の採用状況に合わせて、上手く使いこなしてほしいと、僕は思っています。そのほうがコストを抑えて成果が出やすく双方が幸せだからです。
ところが、チト面倒くさい問題があったりします。
偽コピーライターが結構いる問題
コピーライターという仕事は、自分が名乗った時点でコピーライターになれてしまう仕事です。そのため、コピーライターの仕事ができる実力ではないのにコピーライターを名乗っている人がたくさんいます。
また、そういう人が副業向けのライティングウェビナーの講師をやっていたり、独立して個人事業主としての看板を掲げていたりして、コピーライターの仕事ができるコピーライターを見つけるのは、素人にはちょっと難しかったりします。
で、
求人広告コピーライター(CW)でも同様のことが言えます。求人広告コピーライター(CW)の仕事ができる実力がないのに、求人広告コピーライター(CW)を名乗っている人もいるわけです。
ところが、
それは何か法律に違反しているかというと、そんなことはありません。合法です。今回、僕は自分の考えとして「求人広告ライター(W)」と「求人広告コピーライター(CW)」の仕事を定義しましたが、本来そんな定義もありません。そのため、コピーライター界隈は混沌としています。
混乱にさらに追い打ちをかけているのは、
求人広告コピーライター(CW)自身が自分の価値を知らないということです。そのため、求人広告ライター(W)レベルの安いギャランティで、求人広告コピーライター(CW)レベルの仕事をしてしまっていることも散見されます。さきほど少しだけ触れた、フリーランスの求人広告コピーライター(CW)が埋もれてしまって見つけにくい理由がこれです。
もっと言えば、企業の採用担当者が求人広告ライター(W)と求人広告コピーライター(CW)の違いを分かっていないことが多いです。
それによって、
企業の採用担当者が、求人広告ライター(W)に求人広告コピーライター(CW)の仕事を求めてしまったり、単価が安いことで求人広告コピーライター(CW)の仕事の価値が低く見られてしまったり、そんなことが採用界隈のいたるところで起きています。
先日、とある企業の採用担当者のツイートで、
……みたいな内容を見かけました。
推測するに、これは求人広告コピーライター(CW)です。計算して作った求人広告コピーを他人に崩されたくなかったから、自分で修正をやりたがっており、採用担当者の勝手な修正に怒っていると考えられます。
注目すべきは、採用担当者は分かっていないという点です。ライターが自分で修正をやりたがっている理由も、自分が勝手に修正したことの効果への悪影響も、分かっていないのです。
ちなみにこれ、この後どうなるパターンが多いかというと、「あのライターさんは面倒くさい」という評価を採用担当者が下して、仕事の依頼がされなくなります。希少種である求人広告コピーライター(CW)と出会っているのに、その機会を潰してしまうのです。そして、そのことにも気がつかないことが多かったりします。
では、本当の求人広告コピーライター(CW)はどうやって見分ければいいのでしょうか。そのコツをお教えします。
求人広告コピーライター(CW)の見分けかた
「① ターゲットへの取材を求める」理由は、求人広告コピーライター(CW)は自分で見聞きした一次情報を大切にするからです。自分の足で現場に行き、実際に自分が話して、広告制作に必要な情報を集めます。他社が制作担当した求人広告をもとにしたリライトや、メールやオンラインツールで質問に答えてもらうといった情報収集も基本的には好みません。
「② ターゲットとベネフィットの精度が高い」理由は、広告を制作している認識が強い人間はターゲットとベネフィットを当たり前のように考えます。打ち合わせでは、「この求人広告では、誰に、何を伝えて、どう感じてもらうか」という会話があるはずです。
「③ 自分で修正をやりたがる」理由は、前述したとおりです。ボディコピーの一行ごとに「この一文を読んだらターゲットはこう思う」「次の一文を読んだらこう思う」という計算をくり返し、読み終わった後の読み手の心の持ちようまで持ってくるため、他人にコピーをいじられるのを嫌います。
「④ 効果の振り返りを求める」理由は、仕事のゴールが「ターゲットが応募する(採用できる)」だから。書いたものを納品しただけでは仕事は終わらないと考えており、自分の仮説や仕掛けが狙った通りの結果を生み出しているかを気にします。
「⑤ 断言しない」理由は、きちんと採用の仕事に向き合っている人間は、採用とはさまざまな条件が複雑に絡み合っていることを熟知しているため、安易に断言することが危険であることを知っているからです。実力と経験が少ない人間ほど断言したがります。自信がないように思われるかもしれないですが、断言しない人のほうが信用できます。
ぜひ、試してみてください。
さいごに
冒頭で、僕は求人広告コピーライター(CW)側の人間だという話をしました。では、なぜ、採用コピーライターを名乗っているかというと、求人広告にかぎらず、あらゆる採用コミュニケーションに関わっているからです。なので、採用広報もやるし、採用動画も作るし、採用ホームページも、採用パンフレットも、会社説明会も、社員定着のための各種ツール制作にも関わっているからだったりします。
今回の記事を書いた理由は二つ。
一つ目は、採用サービスの多くは効果を出せない企業・人は継続利用によって稼げて、一発で効果が出せる企業・人は稼げないという歪な構造になっているから。採用担当者の方々に、本来あるべき成果とそれを実現できる人の存在を知ってほしいと思いました。
二つ目は、採用コミュニケーション界隈が混沌としているから。求人広告コピーライター(CW)が自分の価値を分かっていない。実力のない自称求人広告コピーライター(CW)が自分の仕事はこれでいいんだと勘違いしている。かつては求人広告コピーライター(CW)だった人が生活のために求人広告ライター(W)になってしまっているけど気がついていない。このような状況に整理してあるべき姿をきちんと示したいと思いました。
「偉そうに」「お前は何様だ」と言われることは承知していますし、記事で書いたことが自分の仕事に跳ね返ってくることを書いている自覚もあるのですが、それでも今回の内容については記事にして伝えたほうが良いと思いました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
この記事が、採用広報のお役に立てれば幸いです。御社の採用活動が上手くいくことを願っております。
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