戦争の大事な知識・・・病気を治すには、病気を知らんといけない。

より

上記文抜粋
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戦争に勝つということ

日本では「戦争」というとボロボロに負けて原爆まで落とされた「太平洋戦争」の事しか論じられません。

終戦の日や原爆忌に戦争について語るのは大事ですが、非常に「皮相な内容」で本気で今後起こるかもしれない戦争を避ける方策を真剣に議論している様には見えません。戦争体験者の方々は本気で「戦争はやってはいけない」と考えていると思いますが、教えを受け取る我々戦後世代、特に40代以下の若い人たちが本気で戦争を避ける方策を思案している様には見えません。

戦争を論ずる時、負けた戦争だけ考えれば良いのでしょうか、勝ったとされる戦争「日清」「日露」「第一次大戦」について深く論じられているのを見かけません。戦争の「存在自体を全否定して後は考えようとしない」で済ませてないでしょうか。本当に非戦を誓うのであれば、「戦争」という相手のある「外交の一形態」で戦争まで発展しないための方策を考える。また戦争になってしまった場合の終わり方、「戦争の勝ち方(負け方)」について検討しておくべきだと私は思います。その意味で我々にとって傍観者(第三者)的立場で見ていられる「ウクライナ戦争」について上記に関する議論を尽くす事は有用と思うのですが、メディアで出てくる話は「ロシア悪い」だの「ウクライナがんばれ」という幼稚園児レベルの話ばかりです。そこで今回は「戦争に勝つ」という内容を論考したいと思います。

Ⅰ.  戦争に勝つとは

戦争に勝つという意味には以下の3通りがあると思われます。

(1)相手が全員死亡・絶滅して戦う相手が消滅することによる終戦。

今時これはないと思われますが、「テロとの戦い」は実はこれを目指しています。

(2)相手が無条件降伏(unconditioned surrender)を受け入れて終戦。

第二次大戦がこれですが、その後の戦争も相手国の政治体制を変革させるという点ではこれに近い。

(3)自国にとって有利な条件で双方が終戦(休戦でなく)を受け入れる。

第一次大戦までの外交の一形態としての戦争の一般的なありかたでした。この場合、「休戦による相手のリベンジ」を誘発しない工夫が必要です。「次は勝とう」と思わせる終戦では平和はやってきません。そのためには「有利な条件」なるものが「誰の利益になるのか」が問われます。利益には次の3通りがあります。

a)  国民全員(将来含む)に明確な利益になる。

b)  支配者や資本家だけの利益になる。

c)  軍産複合体、武器商人だけの利益になる。

この利益は、紛争内容が自治権(領土)なのか資源なのかによっても、国民に分配されて受ける利益の内容が変わってきます。戦争で苦労するのは国民です。国民が利益を感じない戦争(士気が上がらない)に勝ち目はありません。増して「テロとの戦い」の様に一体何と戦争しているのか不明な場合は、国民の利益と言えるものがあるのかさえ不明であり、b、cの利益だけだね、という結論になります。今テロとの戦いは知らないうちに終わっているようです。

II.  戦略と戦術

戦争の目的を達成するために建てるのが「戦略」であり、個々の戦闘に勝つための方策が「戦術」です。個々の戦闘は戦略に沿って要否や戦い方が決まるのであり、戦略と戦術は関連しています。個々の兵士にとっては自分の生死にかかわる「戦術」は非常に大事ですが、大きな視野での戦略に沿って戦争は進むので兵士は「コマ」でしかありません。結局「政治」が最も優先され、大事なのです。

III.  ウクライナの悲劇(攻撃=戦争の主導権という勘違い)

1) ウクライナ戦争における戦術の大変革

ウクライナ戦争は「正規軍同士の戦争」における「戦術」の常識を大きく変えました。第二次大戦におけるバルバロッサ作戦(独ソ戦)との比較が戦車や機械化歩兵を用いた戦争の例として持ち出されますが、戦術を検討する上でのISR(情報、監視、偵察)の在り方が全く変わり、衛星、ドローン、通信傍受を用いた現在「すべての軍の移動、集合は相手に筒抜けである」という前提で戦術を検討する必要があります。

西側にはロシア軍はISR、近代装備、士気、機構ともに「西側よりも劣っている」とする神話があります。特に専門家と称する人たちや軍の上層部にもロシア軍が圧倒的に勝っている現在においても「この神話」を信奉している人たちがいます。メディアがこれらの人たちの法螺をそのまま放送するので軍事音痴の一般の人たちも「弱いはずのロシアがなかなか降参しないのはおかしい」と思っています。現実にはロシア軍はISR、近代装備、士気、機構ともに西側より優れています。劣っているのは水上海軍力位でしょう。ウクライナ戦争についての解説が現実を反映していない「ちんぷんかんぷん」な内容なのはこのためです。ウクライナの春季(夏季)攻勢が圧倒的敗退をきたしたのはロシアISRがすべてを把握して防御したからに過ぎません。ゲームボードの様に俯瞰で眺めながら相手の戦力や出方を全て把握しながら防御(攻撃でなく)を用意周到十分な戦力で行えば自軍の犠牲を最小限にして相手を全滅させる事が可能です。

2)「攻撃=戦争の主導権」という勘違い

西側は当初ウクライナ戦争支援の目的を「プーチン体制の崩壊」に置いていました。ロシアはウクライナへの「特殊軍事行動(SMO)」の目的をドンバスの独立、ウクライナの中立化、非ナチ化、に置いていました。ゼレンスキーはロシアのクリミアを含む全領土からの完全撤退に目標を定めているようです。当初述べた「戦争に勝つ」定義において西側は体制変革2)を目指し、ロシアは有利な条件での終戦3)を目指している事が分かります。

当然戦争目標に向かう「戦略」にも違いがあり、西側はロシアプーチン体制が崩壊するよう「経済制裁」を行い「ロシアの休戦提案を拒否」して、ウクライナに近代兵器を援助し続け、「ロシア軍は弱いという神話」を信じ続けてロ軍が負ける事を期待しました。

ロシアの戦略は自軍の犠牲を最小にしつつウクライナ軍を叩き、戦争継続不可能にして有利な条件で終戦締結できる様にすることです。終戦後ウクライナ国民にリベンジ心を持たれないよう民間への攻撃損害は極力避けてきました。また降伏したウクライナ兵も保護してきました。この目的を達するために、防御を完全にしつつ相手の攻撃を誘う戦略を取ってきました。この1年戦線が膠着して動かない理由を「ロシア軍の弱さ」と解説する大馬鹿者がいますが、「戦略や戦術ISRの変革」をまるで理解していない事を露呈しています。

ロシアの侵略を受けたウクライナは、自軍の犠牲を少なくしてよい条件で終戦に持ち込むためには本来「防御に徹する」必要があります。ロシアは、現在ウクライナが春季攻勢をしているヘルソン地区を2022年秋から1年かけて3重の防御陣地を構築してきました。西側が本気でロシアに勝ちたいのならば、完全な防御陣地ができる前に徹底的に攻撃する必要がありました。現在「侵略」したロシアが防御を固めて、侵略されたウクライナが「攻撃」を続けています。この戦略の違いは「攻撃を続ける側に戦争の主導権があり、勝っていると印象付けられる」という思い込みがあります。実態は圧倒的強力な米軍を相手に勝つ見込みの無くなった日本軍が万歳突撃を繰り返していた太平洋戦争末期と同じ状態と言えます。「敵が見える状態で厳重な守りに付いている側が圧倒的に強い」のです。

追記:

ほぼ毎日更新してウクライナの戦況を解説しているWeeb Union氏が2023年8月25日の解説で「何故ウクライナが勝てないのか」について今までの戦い方の誤りを指摘しながら論説していました。結論的には私と同じ「攻撃を続けている」からというものでした。ロシア軍が半年かけて攻撃をしていたバクムート攻防戦においても、ウクライナは「撤退戦術」を取らず、ワグネルの小規模な攻撃に反応して「Head to head」で戦ったので、「ウ軍の状況をISRで全て掌握したロシア軍が強力な砲撃で殲滅する」戦法を取り続けて毎日数百人の損害を出し続けたと批判しています。小国は攻撃してくる大国を撤退しつつゲリラ戦で戦う(北ベトナムやアフガンムスリムの戦法)のが唯一勝利を得る方法であると喝破しています。


Weeb union氏の解説。戦争初期にキエフに侵攻したロシア軍にウ軍は集中。その間南にロシアが進撃した後ずっとロシア側が守りを固めてウ軍の攻撃を撃退する戦法を取っている。



3) 攻撃型兵器はゲームチェンジャーにならない

オランダなど一部の国は旧式化したF-16戦闘機の供与を決めたと報道され、ウクライナはモスクワ中心部へのドローン攻撃を繰り返しています。攻撃型兵器や細々とした攻撃を続ける事が戦争の大成を変えるゲームチェンジャーになると信じている人たちがいる証拠ですが、上記の様に実現不可能な戦略に基づく政策に効果はありません。万歳攻撃を続けるウクライナは2)の国家体制の消滅に向かっていると言えます。ウクライナは全部隊を一度退却させてドニエプル河の西側で防御態勢を組めば、ロシアは当初の目的を達することになるので双方に有利な条件で終戦に持ち込むことができるでしょう。誰の利益のための戦争か、我々日本人は第三者としてよく見ておきましょう。

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抜粋終わり

現在「侵略」したロシアが防御を固めて、侵略されたウクライナが「攻撃」を続けています。この戦略の違いは「攻撃を続ける側に戦争の主導権があり、勝っていると印象付けられる」という思い込みがあります。実態は圧倒的強力な米軍を相手に勝つ見込みの無くなった日本軍が万歳突撃を繰り返していた太平洋戦争末期と同じ状態と言えます。「敵が見える状態で厳重な守りに付いている側が圧倒的に強い」のです。

用兵の王道。


より

上記文抜粋
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 この戦いぶりには興味深いポイントがある。まず機動力の高い軽騎兵で素早く動き、相手より有利な地勢を確保して陣を置き、持久戦に持ち込むことである。そして相手の食料の不足をつき、その動揺に乗じて最強の将軍たちとともに自ら先頭に立って総攻撃し、敵を潰滅させるのである。
 たぐいまれなる統率力と安定した補給をベースしたこの戦い方は、後に全く同じ戦法を用いる人物が現れる。それが唐の太宗李世民である。李世民もまた騎兵を率いて敏捷に動き、有利な地勢を占めては持久戦に持ち込み、ここというところで部下の秦叔宝や尉遅敬徳とともに突撃し大破したのである。
 この戦術はまさに真の英雄が用いる完全戦法と言えるだろう。

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抜粋終わり

戦争に勝つという意味には以下の3通りがあると思われます。

そういう定義や、その検討が、大事なのですよね。

日々学習ですし、細かい定義とか確認してないと、大きな過ちの元にある。

天皇の無い  蒼い空を取り戻す

慈悲と憐みの富む社会になりますように。

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