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【観劇レポ】これぞエリザ ミュージカル「エリザベート」リプライズ

観劇レポ、またまたミュージカル「エリザベート」です。遠征観劇第3弾。今年2回目のエリザベート。

キャストのファンクラブなどに入っていないにも関わらず、2回もチケットをGETできたのは奇跡。10月にもはるばる東京まで観に来ましたが、再び帝劇でエリザを観れるとは。

さて、キャストはこちら。なんとWキャスト組は前回とちょうど全員入れ替わりで、トリプルキャストのゾフィ(と福岡公演だけの芳雄さんトート)以外はこれでコンプリート。ダブりなし。こんなことがあっていいのか…!!

帝劇のA

前回初めて帝国劇場に訪れ、会場としての素晴らしさに心打たれたわけですが、もう一回改めて言わせてください。

帝劇のA席はホンマにAか?

うん、Aも本来十分いい席なのですよ。A席はええ席。ですが、会場によってはAって、ちょっと見えづらい、音の響きが微妙なんてこともざらにあるランク。しかし帝国劇場、Aでも十分、いや、最高の観劇経験を与えてくれる。

今回は2階席なのですが、全体も見れながら頑張ればキャストの顔を見れる。音の響きはいわずもがな素晴らしく、さすが帝国劇場。S席でもピンキリな某劇場にも見倣っていただきた…ゲフンゲフン。

余談ですが、オペラグラスでステージの大道具を見ていたところ、男性が去ろうとする女性を引き止めるような像が舞台の下手側に…神話か何かがモチーフかもしれませんが、去りゆくエリザベートと引き止めようとするフランツに見えて、開演前から心ざわつきました。もしかしてちゃんと調べれば、全部に意味があるのでしょうか。

主要3キャスト

エリザベート

今回のエリザは、宝塚時代を含めると実に四半世紀に渡ってエリザベートを演じてきた大女優・花總まり。存在そのものがエリザベートとも言われる、もはや生ける伝説。生で謁見かなうとは。以下、花シシィと呼びます。

「私だけに」のラストサビはもう圧巻。冒頭は触れたら壊れてしまいそうなか弱い声だったのに、ラストサビでは、世界を敵に回してでも自分のために生きるという決意…いや、決意という言葉では足りない、まさに命預けるという強い意思。少女の底に眠る自由への翼が大空へ飛び立つようなパフォーマンスでした。

そして1幕ラストの「私だけに(リプライズ)」での、肖像画と見間違うような美しい白ドレスの姿は、声や歌なしで見る者を魅了する。まさにエリザベートが自身の武器として磨き上げた美貌を纏った姿。思わず嘆息する。歌い上げながら扇子で顔を隠す、エリザベートの代名詞とも言えるシーンは、幾度も演じ研鑽を積んだ花シシィだからこその唯一無二のシーンです。

自分の語彙力のなさを呪いたいくらい、あの存在感をなんと形容すればいいのでしょう。10代から60代までを一人で演じわけるというのはエリザベート役に必須の壁ですが、もはや別人かと思うほどの見事な憑依。そして一貫して気品があり、雲の上の存在のようで。

ちゃぴザベートは「強さ」が似合うエリザベートで、自信に満ちた表情は世界遺産級なのですが、花シシィは「弱さ」が似合う。精神病院のシーンやルドルフの死など、磨き上げた美貌と同じくちょっとしたことで崩れてしまいそうな…「繊細」という言葉とはまた違う、そんな弱さがよく似合う。それは前段で書いた「私だけに」のような「強さ」の鏡として映し出されているのかもしれない。

トート

今回唯一、全拠点での公演でトートを務めあげる古川雄大くん。通称ゆんトート。育トートが紫っぽいイメージだったのに対し、ゆんトートは灰がかった水色っぽいイメージで、髪色にも編み込まれています。

実は生で古川くんを見るのは初めてだったのですが、今までの映像作品やDVDで見ていたイメージをいい意味で覆されました。
僕のなかの古川くんは、わりと楽譜に忠実でまっすぐな歌声、自分の内で練り上げたものを出そうとするイメージだったのですが、ファルセット、フェイク、溜め…ここまで遊べるとは。そしてもっと「シュッ」としたイメージでしたが、存在感のあるしっかりした体も作られていて、激しいダンスナンバーでもぶれない、声に太さが加わった気がします。

陰のある役が似合うのは今までもこれからも、というところ。情熱的な育トートを見たあとなので、よりゆんトートの陰りある妖しさが際立って見える。でも決して静かなトートというわけではなく、うちに秘めた青い炎が揺らめいて見えるトート。

今更ですが、古川くんの顔ってすごく整ってますね。

フランツ

皇帝フランツ・ヨーゼフ演じるは、我が!尊き!マイフェアプリンス万里生、もとい田代万里生。まりンツ陛下。

やはりクラシカルでロイヤルな役はお手の物。歩き方が皇族のそれなのよ。方向転換するときの「キュッ、キュッ」って直角に動く感じ万里生くんっぽくて好き(伝われ)。

若い頃のシーンは、ルドルフを演じられるのではないかと思うくらい若々しい。お見合いのシーンの「僕らこの子がいい!」は純でちょっと抜けた感じがかわいくてもう悶えるし、その前の狩りのシーンで銃声を響かせたあと花シシィを見て「やぁ!」という満面の笑みは全世界を救う。おかしいな…銃声のあとに「やあ!」なんですが、「やあ!」のあとにも僕の心に銃声がもう一発響いたような…これは…僕の中に偉大なる愛が芽生えた…?!

と思いきや、晩年の渋みのある声は皇帝としての苦労と、愛する妻に愛が届かない切なさが滲んでいて、まさに喉に皺が刻まれていくとはこういう感じ。
そしてラストの悪夢のシーンは慟哭。このときばかりはゆんトートを恨んだ。まりンツを苦しめないで!!

シュガー陛下は包容力のある陛下でしたが、まりンツはどこまでもまっすぐな陛下。花シシィしか見えてない感じで、ラストシーンもずっと花シシィにまっすぐ顔、手、体を向けているのが、演技演出ではなく自然のあるべき姿としてしっくりくる。

他キャストの見所

いやほんと、前回に続き「他のキャスト」なんて言うのは失礼なんですが、いいまとめ方がなくて…許して。

涼風真世ゾフィ。支配力がMAX値をカンストしてる。前回は香寿さんのタータンゾフィでしたが比べると、息子への愛と皇太后としてオーストリーを率いてきた自負に溢れていて、エリザベートを危険因子とみなす感が強い気がします。「皇后の務め」の歌声はさすがのかなめさん、というところですが、フランツがエリザベートを諭すシーンで「そう、我が息子はそう答えるのです」と言わんばかりの自信と満足に満ちた表情が忘れられません。

甲斐翔真ルドルフ。ちょっとびっくりしちゃった。甲斐くんこんなルドルフが似合うとは。彼も陰りのある役が似合いますね。立石くんのルドルフは本当に突いたら壊れそうな繊細さ映えていましたが、甲斐ルドルフはより母への依存と皇太子の責任感が表れていたように感じました。以前別作品のプロモーション映像見たときよりも歌声に芯があって、背も高くて舞台映えするので、将来トートやりそう。

上山竜治ルキーニ。さすがの安定感と舞台回し。楽しそうに演じますよね、いや、演じるというかルキーニが降りてるのか。黒羽くんのルキーニもぶっ飛んでいて良かったですが、上山ルキーニは遊びと可愛らしさがあって、クラスのお調子者感がある。牛乳屋さんからナチの軍官まで幅広くなりきり、地獄の裁判官をステージ演出でからかっている感じ。何より上山さんの声好き…もっと上山さんの舞台を見たい。

未来優希さんはシングルキャストですが、前回よりパワーアップしている気がする。特にマダム・ヴォルフのパワー。出番は実質ワンシーンだけやのに、脳に声を刻み込んでくる。夢に見そう…(褒め言葉です)。

今回2回目なので、ちょっと細かいところを。
シシィパパ。結婚式で妻のルドヴィカは喜んでいる横で、娘のシシィを心配し、なんなら結婚を取りやめにしたほうがいいのではと思っているくらいに娘の背中を見つめているのがぐっときました。パパ…。

あと精神病院でシシィのマネをする女の子、扇子で顔を隠す「私だけに」のラストのマネをしていますが、あれってトートとフランツ以外は見たことある光景なのかしら。老いを厭って顔を隠すこと自体はシシィあるあるなんですが、顔を横向けて手首を返して隠すのはあのシーンだけで、世間に知られている光景なのかなぁと、ふと不思議に思いました。新たな発見。

アンサンブルでいうと、カフェのシーンから登場する革命家トリオも好きなのですが、端っこで踊ってるウエイターも好き。なんかダンスが目を惹くんですよね…。かわいらしくて、かっこいい。

カーテンコール

今回も3回。ラストは花シシィとゆんトートの二人です。この日はマチネもあったので、2ステージのメンバーはだいぶおつかれだったはず。

シシィの後姿からの見返り美人図は、何回見ても嘆息ですね。主役に負けじ劣らじで拍手が大きかったのが涼風真世様。かなめさんファンが多かったのかしら。カテコではめっちゃ優しい顔をしてくれますよね…好き…。そしてマイフェアプリンス万里生はいつ見てもお辞儀と足の角度が美しい…。ちょうど真ん中で分けて対称の位置にいた甲斐くんも同じ感じのお辞儀してて、絶景でした(絶景という言葉の意味とは)。

ちなみにトートダンサーのパフォーマンスが星型から変わったのは11月からですかね?横に並んでしなやかな美を魅せてくれました。

自由に、永遠に

前回に続いて余韻が良いん良いんで、遠路はるばる来て良かったと思えるステージ。

偶然ですが、この秋に見たミュージカルは「アナ雪」「エリザベート」「キンキーブーツ」「アラジン」と、自由や解放をテーマにした作品が多くありました。ここ最近の僕が心豊かに過ごせているのは、観劇に感化されて自由な心を手に入れているからなのかもしれません。

さて、エリザベートはもう少し東京が続き、名古屋、大阪、福岡と全国公演に切り替わります。ちょうど僕が観た今回の前公演が数日、流行り病によって中止を余儀なくされました。今回も前日まで中止か再開か、ドキドキしましたが、再びエリザベートは無事に動き出しました。

とにかくカンパニーが無事に、毎公演毎公演を全力でやりきり、大千秋楽を迎えるその日まで羽ばたき続けることを祈ってやみません。そんな時勢の中、素敵な舞台を魅せてくれて本当に感謝です。

エーヤン(万歳)!エリザベート!

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