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イスラエルの水関連技術スタートアップについて

私は5〜6月の間イスラエルに滞在していたのですがそこで、日本ではあまり聞かなかったけれど向こうでは熱い分野、というのをいくつか知りました。

代表的なところではサイバーセキュリティなどがありますが、それ以外にもブレインテック、ウォーターテック、デジタルヘルス、ブロックチェーンといった様々な領域においてスタートアップが挑戦しているのです。


その中でも今回はウォーターテックと呼ばれる領域におけるスタートアップを取り上げたいと思います。


イスラエルのスタートアップについてまとめてあるサイト、START-UP NATIONでも、主要なイノベーション領域の中の1つにウォーターテックが含まれています。



Watertech(ウォーターテック)

ウォーターテックとは、読んで字の如しで水に関わるテクノロジーの領域です。取り組みが盛んに行われているテーマとしては、

・水質評価・モニタリング

・海水の淡水化などの膜技術

・Iot・AIを用いた水のネットワーク管理システム

・廃水処理と再利用

・農業向けの水利用技術(イスラエルでは灌漑技術が発展)

があります、多分他にもいっぱいあります。


要は、水✕IT(テクノロジー)で何かしようとすることです。



なぜ水なのか

エネルギーや食料問題と同様に、今後世界で深刻な水不足が起きると言われているからです。人口爆発、森林伐採による砂漠化、氷河の減少など原因は様々あります。

2020年には、世界の人口のおよそ3分の1が十分な淡水を確保できなくなるというデータもあるのです。


2015年9月の国連サミットで採択された2030年までの国際目標、SDGs(持続可能な開発目標)の17の目標の中には、水に関わる問題が数多く含まれています。

控えめに見ても1、2、3、6、11、13、14、15あたりは水と関わってきます。


次の石油はパーソナルデータだと言われていますが、おそらく同時並行で水の奪い合いが生じることも予測されます。

市場規模としても将来100兆円を超えると言われており、十分な大きさがあります。


しかし、イスラエルにおいて水不足はもう既に語り尽くされたテーマとなっており、20世紀に水不足の問題は解消されています。


70年前、イスラエルの初代首相であるデビッド・ベン・グリオンは、まず砂漠のような地域だったイスラエルに最先端の灌漑技術を適用することで、砂漠に花を咲かせることを最優先政策にしました。 イスラエルは建国以来、水の確保・管理に注力してきました。

水が無い地域だからこそ、水の問題を解決しようと取り組んできた結果が今のイスラエルのテクノロジーに繋がっています。


水分野においてイスラエルには多種多様な技術が存在していますので、以下で紹介していきたいと思います。



イスラエルの水関連スタートアップ7選

WaterGen

安全できれいな飲み水を空気から生み出す技術を開発している会社です。空気中の水分を高効率で抽出する設備を取り扱っています。同社の製品は、インドなどで導入が進んでいる模様です。

もともとは軍が水をどこから持ってくるべきかについて悩んでおり、特に長期作戦行動中の隊員の給水が問題でした。そこで「空気中の湿気を集めて水を作り出す」という発想に至ったのがきっかけで誕生した技術です。


Lishtot

エルサレムにあるこの会社では、大腸菌や水銀、塩素などで水が汚染されていないかを数秒で検出することができる水質検査機器を提供しています。細菌、有機物、重金属、毒素といった汚染物質が水の中で作る電場の歪みをセンサーで検出する仕組みとなっているとのことです。

キーホルダー程の大きさなので持ち運びができ、テスト結果は写真や場所のデータと合わせてスマホに送ることも可能です。

地震などの災害で水道が壊れ、水質汚染の恐れがある場合にも、このデバイスからデータを集めることができれば、いち早く近くの住民にどの水が安全かを伝えることができるようになると考えられます。


UTILIS

ここでは人工衛星を使って漏水を検出し、水道管に漏れがあった場合は即座に発見・修理できるようになるシステムを構築しています。

衛星からの画像をマイクロ波でイメージングすることによって漏水を検出しており、漏水が見つかった場合は水道当局に通知して迅速な対策を支援し、漏水によって水が無駄になることを防ぐようにしています。

一部の国では老朽化した水道管により3分の2以上の水が漏れて無駄になっているというデータも存在していますので、想像以上にニーズは高いのではないでしょうか。


TaKaDu

漏水や水道管破裂など、水インフラに問題が起きた際にすぐ水道局に通知がいくような技術を開発している企業です。

TaKaDuでは、センサーを利用したIoT技術に基づく水道ネットワークから得られるデータを解析し、漏水やメーター故障などの異常を検出して、水道局に提供するSaaS型ソリューションを提供しています。

すでに10カ国で導入されており、大きなイニシャル費用をかけずに導入が可能な点が顧客から好まれています。


Fluence

Fluence社は2017年に水処理ソリューションプロバイダーであったEmefcyとRWL Waterの合併により設立され、世界各地で排水処理や海水の淡水化、水の再利用のためのソリューションを提供する企業です。水処理以外にエネルギーの効率化などにも取り組んでいます。

現在は約70カ国で水処理サービスを展開しています。


Indegy

この会社はサイバーセキュリティの産業用IoTプラットフォームを提供しています。工場内のネットワークを監視し、リアルタイムで状況を可視化します。そして攻撃を受けた際には事態を警告して被害の拡大を防ぎ、迅速に原因を特定することができるようになります。

近年、社会的なインフラや産業がテロリストに狙われる事件が世界で起きており、2015年にはトルコ、2016年にはウクライナで大規模の停電を引き起こすサイバーテロがありました。IoT機器の脆弱性をねらったサイバー攻撃は急速に増加しているのです。

Indegy社のサービスはイスラエルとアメリカのプラントで約40社の導入実績があります。監視コントローラの数によってライセンス数を変えられるため、コストの適正化も可能となっています。


Desalitech

Desalitech社は逆浸透システムで、閉回路式淡水化プロセスを備えたコスト効率の良い浄水装置を提供しています。

イスラエルで創業した後、2013年にはアメリカのボストンに移転し、工場、市町村、農業に向けて効率の高い水処理施設を供給しています。



今後の水ビジネスの動向

世界の人口はまだまだ増加していく傾向にあり、人口が増加すれば様々な問題が生じます。人が利用できる淡水は地球全体の水のわずか約0.01%に過ぎないので、必然的にこの水を奪い合うという状況が生まれてしまうのです。

希少資源である水の不足は大きな問題となり、かつ水道業界にはこれまで大きな技術転換が無かったこともあり、水問題を解決するところには大きなビジネスチャンスがあると考えられます。例えばアメリカだけでも、今後35年間で水道配管の交換だけで100兆円も使わなければならないことが既に分かっているのです。


現状、海水を淡水化する企業の台頭や、上下水道管理・運用のノウハウを地方公共団体が輸出するなどの動きはありますが、水ビジネスはまだまだ成長市場であると言えます。

今後はAIやIoTを使った水インフラのシステムの構築が進み、より高度な水処理や運用が可能になっていくことでしょう。


ここには当然世界中のスタートアップも参戦してくることが予想され、イスラエル以外の国でも、人工衛星画像を解析することで洪水の発生を予測する会社や、配管内を魚の形をしたデバイスを泳がせて内側から状態を測定する会社などが存在しており、今後もユニークな技術を持った企業が出てくることが予想されます。


最後に日本についてですが、世界的規模で大きなチャンスが広がる水ビジネスにおいて、最も注目されている国の1つが日本になります。高い技術力を武器に世界に対してアドバンテージを持つ日本企業には、多くの期待が集まっているのです。


ということで、最後に日本で水ビジネスに取り組むベンチャーも紹介して終わりにしたいと思います。(調べてみても全然出てこなかったので、詳しい方がいらっしゃいましたらこんなんあるでと教えて頂きたいです)



水ベンチャー〜日本編〜

AIエンジニアリング

AIエンジニアリング社(以下、AIE)は、AI・IoT技術を活用したスマートファクトリー化を進める会社で、2017年12月に設立されました。食品工場の水処理設備を主なターゲットとしており、IoTによる可視化からAIによる分析、予知保全、自働化までを行っています。

AIEは福岡発AI・IoTスタートアップのスカイディスクと提携して、1924年創業の大阪にある工場設備の施工・メンテナンスを得意とする中島工業のIT専門の子会社として設立された会社です。現在は大手食品メーカー工場向けにサービスを提供しています。


フレンドマイクローブ

この会社では驚異的な油分解能力を有する微生物製剤による排水処理事業を展開しています。まずはこの微生物製剤の技術をパワーアップしていき、そこから様々な排水、汚染環境、廃棄物や悪臭の浄化に効くバイオ製剤の開発を進めていくとのことです。

同社は名古屋大学発のベンチャーであり、本技術は大手化学メーカーに導入されており、両社が提携して事業を進めることとなっているようです。


HOTARU

水を再利用する移動式のシャワー設備を提供しています。

折りたたみ式シャワーは複数の水タンクを使って、水を貯えたり浄化したりすることができます。シャワーに使用した水の内、95〜98%を回収、再利用することができる模様です。

東京大学発のベンチャーであり、東京大学大学院生が世界の水不足を解決すべく2014年に設立した会社です。




以上、水みたいな名前のやつからのブログでした〜



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