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小説『三分間』

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高校生の「僕」が異次元で出会った不思議な青年「ロングコート」と紫色の世界で過ごす話です。
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記事一覧

小説『三分間』全編

 夕日が沈んでゆく。夕日が沈む際は、空がオレンジ色に見えるよな、とふと思った。昼頃には、空は青く見える。夜は、太陽が昇っていないから黒だな。そんな当たり前のことを思うのだが、理由はなぜだろう。きっと世界のどこぞの国の科学者がその理由を解明していて、インターネットで調べたりしてみたら、その理由が出てくるのだろう。ただ、僕はそんなことで理由を知りたくはなかった。理由とは、人間がでっちあげた概念にすぎな

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小説『三分間』最終話

 灯りの方へ向かって歩いていくと、足元に線路のようなものが見え、線路に沿って灯りも並んでいたので、辿っていくことにした。
 進んでいくと、駅のホームが見えた。駅には、人影が並んでいたが、どの人も石のように固まって動かなかった。あくびをしている人、スマホを見ている人、新聞を読んでいる人、いろいろといたが、どの人も完全に固まっていた。
 そんな人たちを見ていると、電車がやってきて停車したので、乗ってみ

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小説『三分間』第九話

 ベッドから起き上がって窓の外を見てみると、雨が降っているようだった。それもかなり激しく。嵐が来たようだ。
「どうも嵐が来たようなんだ。こんなことはしばらくなかったんだけどもね、嵐が来ると、鳥たちが混乱して街へ向かってくるんだ。とにかく、早く避難しないといけない」
 ロングコートは慌てた様子で、コートを羽織りながらそう言っていた。「さあ、君も着替えて、外に避難しよう。俺の、このコートを着るといい」

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小説『三分間』第八話

 風呂場に着くと、大きなバスタブにお湯がなみなみと入っていた。やはりお湯はすでに沸いていた。なによりも目を引かれたのは、バスタブの周りに置かれていた本棚だ。風呂場で本を読んでいるのだろうか。
「ここが俺ん家の風呂場だよ。広いだけが取り柄だけどもね、ああ、そこにある本も読んでみるといいよ。濡れたりしないから、大丈夫さ」
 そう言われたので本を手に取ってみたが、なんの文字が書いてあるのかさっぱりわから

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小説『三分間』第七話

 塔に着き、中に入るのかと思ったが、入り口らしいドアはなかった。
「これに乗るんだ」
 ロングコートはそう言って、僕たちは外付けのリフトに乗った。リフトに囲いはなく、一歩踏み外すと落っこちてしまいそうだったが、ロングコートは平然と街を眺めていた。
「こうやって、家に帰る前に、景色を眺められるんだ。いいだろう」
 ロングコートは、街を見ながらそう言った。
「ロングコートは、どこかを眺めるのが好きなん

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小説『三分間』第六話

 駅のホームにつくと、僕はやはり、時間という概念があるのかどうかが気になり、時刻表を探したが、やはりなかった。そんな素振りを見せる僕のことがやはり気になったのか、ロングコートが話しかけてきた。
「何を、やっているんだい?」
「いや、時刻表はないのかなと思って。そういえば、時計なんかも見当たらないし」
「時間を確認するものかい? ないよ、そんなもの。機関車が、来たときに乗るんだ。そういうものだろ?」

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小説『三分間』第五話

 紫色の世界の海は、真っ黒だった。まるでゼリーのように、ゆらゆらと揺れている。
「そんなところで倒れているから、びっくりしたよ」
 ブルーの眼の青年が話しかけてきた。
「列車が到着しても全然起きないもんだから、どうしたもんかと思ったよ。しかしまあ、君もなんだ、変わったやつだな」
 そう言って彼は手を差し出した。僕はその手を取り、ようやく立ち上がった。彼は、列車で見たときと変わらず、洋服を着たままだ

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小説『三分間』第四話

 車内で目が覚めると、周りの乗客はもういなくなっていた。ブルーの眼をした彼も、すでに降りてしまったようだ。ふと窓際に目をやると、置き手紙と共にクッキーが置いてあった。手紙には、こう書かれていた。
——親愛なる友人へ、君と少しの間話せてよかった。お礼にクッキーをあげるよ。食べてみるといい。また、どこかで会えるといいね。
 クッキーには、青や赤の模様が施されていた。独特な見た目をしていて、この世界で作

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小説『三分間』第三話

 白ウサギに別れを告げた僕は、この世界での街に向かうことにした。街はいつも賑わっている。サンバカーニバルが開催されていることを期待したが、ここでも開催されていないようだ。空を見上げると、シロナガスクジラがふよふよと浮かんでいた。どうもこの世界では、生き物が宙に浮かべるようなのだ。
 僕も以前浮かべるかどうか試してみたのだが、無理であった。その代わり、宙を走れる自転車があり、それに乗って空中散歩をす

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小説『三分間』第二話

 街へ降りると、すでに家々の明かりが点々としていた。サンバ隊が、サンバを踊っている。とても楽しそうだ。ブラジルではきっとこんな光景を毎日見られるのだろうなと思うのだが、現実はそんなに甘くはない。
 僕の街では、サンバカーニバルが毎晩開かれてはいないのだ、という事実に気づくまで、二、三分かかった。なんとまあ愚かな人間がいたものだ。サンバを踊っていたのは、僕の空想の中だけであった。脳内では、いつもサン

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小説『三分間』第一話

 夕日が沈んでゆく。夕日が沈む際は、空がオレンジ色に見えるよな、とふと思った。昼頃には、空は青く見える。夜は、太陽が昇っていないから黒だな。そんな当たり前のことを思うのだが、理由はなぜだろう。きっと世界のどこぞの国の科学者がその理由を解明していて、インターネットで調べたりしてみたら、その理由が出てくるのだろう。ただ、僕はそんなことで理由を知りたくはなかった。理由とは、人間がでっちあげた概念にすぎな

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