小説『三分間』最終話

 灯りの方へ向かって歩いていくと、足元に線路のようなものが見え、線路に沿って灯りも並んでいたので、辿っていくことにした。
 進んでいくと、駅のホームが見えた。駅には、人影が並んでいたが、どの人も石のように固まって動かなかった。あくびをしている人、スマホを見ている人、新聞を読んでいる人、いろいろといたが、どの人も完全に固まっていた。
 そんな人たちを見ていると、電車がやってきて停車したので、乗ってみることにした。車内の人たちも、やはり止まっていた。窓の外を眺めてみたが、真っ暗な景色が変わることはなかった。何も見えない景色。変わることはあるのだろうか。そう考えていると、突然視界が真っ白になった。
 気づくと僕は白い空間の中をふわふわと浮かんでいた。上に上がっていくようだ。ぼんやりとその空間の中に身を任せていると、上の方に何かが見えた。白ウサギだ。白ウサギが、ぴょこぴょこと駆け回っている。なんだか、久し振りに会うような気がした。 懐かしい思いを感じ、目を閉じる。
 目を開けると、綺麗な青空が広がっていた。僕は、草むらに寝転がっていた。
「何やってんだ! そんな寝っ転がって! ほら、あの、宿題とかやらなくていいのか? え?」
 白ウサギがやかましく騒いでいる。
「そういえばそうだね。宿題とか、全然やっていなかった」
「もう帰んなよ! 親御さんも心配しているだろ!?」
「そうかもしんないね、まあ、うちの親たちは外に食べに出ていたけどね」
「お前、呑気だよな! おい!」
 白ウサギはなんだか怒っていたので、僕はもう帰ろうと思った。
 この世界から僕の世界に帰るには、森の奥にある階段を登って、その上にある扉を開くとよかった。そうすると、異次元から帰れるようになっていた。僕は、扉を開いた。
 気がつくと、カップラーメンはすでに出来上がっているようだったので、夜ご飯を食べることにした。麺は、少し伸びていた。

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