Taiki Kawabata

茅葺職人見習い3年目の手記。東広島の山小屋に住みながら、日本全国を駆け巡る遊動的生活を…

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茅葺職人見習い3年目の手記。東広島の山小屋に住みながら、日本全国を駆け巡る遊動的生活を送っています。

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2024年 開幕 ①

あけましておめでとうございます。 年始に起きた能登半島大震災のニュースを聞いてつらい年はじめ。被害に遭われた方のご冥福をお祈りいたします。 今年は茅葺職人見習いをはじめて2年目の年。あと3か月もすれば3年目となり時のはやさにおどろいている。この二年間はしんどいこともあったが、振り返ってみると刺激的でたのしいと思える。 一昨年くらいから、年はじめには目標を掲げ、それが達成できたか確認するようにしている。 今回の投稿では、去年の目標は何であったのかについて、これまでの思考と選

    • 遊動的生活記 アイヌ 二風谷コタン

      2023.08.27(日)天気:くもり 神戸での仕事が終わり、広島の家に帰ってきて3日が経った。さてこれから、広島の新たな現場がはじまるところだが、自分は少しチームから離脱。なぜかというと、今年は新人研修に行くことになっていたからである。毎年研修の行先は変わるのだが、今年はなんと、北海道・アイヌ。かなり興味深い場所にあたったのである。去年からこのことはちらっと聞いていたのでずっとワクワクしていた。そしてついにこの時がやってきた。 往路 広島空港までは家から車で37分。空

      • 遊動的生活記

        茅葺職人見習いとして働き始めて今年の春で2年目となった。技術や経験はまだまだこれからであるが、働き方については少しわかってきた。 今年の4月から、会社の拠点である東広島に家を借りた。家といってもアパートではなく、90近い大家さんがセルフビルドで建てた山小屋にひとり暮らしている。山小屋がある土地はもともと松林であった土地を大家さんが開墾したらしい。水は山から引いているので水道代はかからない。大家さんは百姓というかなんでも自分でやってしまう仙人であり、この人から生活面でいろいろ

        • 茅葺職人見習のはじまり 第13話

          22.04.17(日) 今日は、世間一般では日曜日らしい。しかし、今日も仕事である。今日は、7段目の茅を葺いていった。7段目は、おさえのベニヤ板を使わずに、裏茅と4尺の茅で葺いていく。そして、「トラ縄」と呼ばれる麻糸を使った締め作業を行っていく。とっくり結びもこの作業では、一重で結んでいく。古茅を少し持ち上げ、4尺の茅をいれこんでいくことで、茅がずらない仕組みで葺いていく。場毎の葺き方で作業していく様はとても面白い。まずは、いろんなパターンを学んで、経験していきたい。 仕事

        2024年 開幕 ①

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          茅葺職人見習のはじまり 第12話

          22.04.16(土) 今日も親方の屋根との対話からはじまった。昨日に葺いた裏茅と4尺の茅を部分的に抜くところから指示されたので、その作業をまず行った。どうやら一部分だけ屋根が膨らんでいるのを見て、親方が抜くように指示した。 その後、ワークショップが開催されると聞いていたので、少し胸がざわついていた。自分も茅葺を習いはじめて2週間しか経っていないので、指導できるか不安であったが、純粋に茅葺を楽しむ姿を見て心が温まった。 親方が作った茅葺の帽子は、つけた人がみんな笑顔になる

          茅葺職人見習のはじまり 第12話

          茅葺職人見習のはじまり 第11話

          22.04.15(金)天気:くもり 雨明けの仕事。昨日は雨で休日になったので、十分に休息が取れた中での仕事。現場は、雨の影響でジメジメとしていた。 今日は、5段目を葺いていった。親方の仕事前の計画では、この段は、裏茅→3尺→4尺→裏茅→4尺の流れで葺いていくと話されていた。それを聞いて「これは親方と茅葺屋根との対話なんやな」と思った。屋根を葺いていく際に作る茅は、3尺や4尺の長さで整えていくが、その際に、裏茅と呼ばれる長さの茅が端材として生まれる。(Fig1)裏茅は、もちろん

          茅葺職人見習のはじまり 第11話

          茅葺職人見習のはじまり 第10話

          22.04.13(水) 今日は弁当をつくる当番だったので、6時ちょうどに起きて豚肉を炒めることからはじまった。 今日から親方が復帰したので、いつもよりも緊張感があった。前日に研究室時代のボスと親方が打合せの機会で初対面したみたいで、なんだか不思議な感じがした。前ボスから現ボスに、遠慮なく鍛えてやってくれ的なことを言われていたみたいで、気が引き締まった。 久しぶりの親方の第一声は、てぬぐいのプレゼント。(Fig1) てぬぐいにも大きく描かれているが、社名が好きだ。Earth B

          茅葺職人見習のはじまり 第10話

          茅葺職人見習のはじまり 第9話

          22.04.12(火) 休日明けの新たな1週間がはじまった。昨日は休みで、図書館、喫茶店を回って久しぶりに自分の時間を過ごせたので、心も体力も回復した。 今日は、3段目を葺いていった。「3寸→4寸→3寸→4寸」で一葺きの段取りであったが、今日は「裏茅」と呼ばれる穂先の部分をまず配っていった。先輩に理由を聞くと、どうやら勾配を取るために3段目の最初に入れたとのこと。茅葺をやっていくには、茅葺屋根と対話する必要があると言われた。「対話」という表現は、常に考えるということでもある。

          茅葺職人見習のはじまり 第9話

          茅葺職人見習のはじまり 第8話

          22.04.10(日) 今日は日曜日。本来ならば休みのはずだが、当然のように仕事があった。2段目のおしぼこを取る際に、これまでは、はりを通して自分自身で取っていたが、下屋部分がなくなり屋根裏空間に通じるようになったので、はりを通す作業を2人で行うようになった。一人が屋根裏空間に行き「はり受け」の役割を担う。 今日は、掃除の時間が多く、また翌日雨が降る可能性があったのでブルーシートで屋根と茅束を覆った。古茅の下に眠る既存のおしぼこに対してPPを通し、ブルーシートを古茅に差し

          茅葺職人見習のはじまり 第8話

          茅葺職人見習のはじまり 第7話

          22.04.09(土) 連勤が続き、やや疲労がでてきたので、2日後の11日に更新。 今日は2段目の茅を葺いていった。仮押さえ→おしぼこ→おくのほこ取りといった具合に葺いていく作業も少しずつ覚えてきた。おくのほこには、太い竹を採用するのだが、現場の竹はどれも同じ径の竹しかないので判断が難しい。 午後から茅の搬入等の作業があったので、午前で現場は切り上げになった。400束の茅を搬入し、丁寧に倉庫に並べていく。茅は茅先と根本部分では径や状態が異なるので、縦方向横方向にバランス

          茅葺職人見習のはじまり 第7話

          茅葺職人見習のはじまり 第6話

          22.04.08(金) 今日は平日最終日。現場作業を生業とする茅葺職人にとって曜日はもはや関係のないものだ。雨が降ると休みになるので、土日も仕事になる。なので華金という言葉は存在しない。今日は1段目の仮押さえをはずし、おしぼことおくぼこを取っていった。おしぼこは、直線に並べるためにも下の方で結ぶ必要があるが、ついつい上で結んでしまうので気をつけよう。 今日は現場でさつまいもをもらった。しっとり系でおいしい。 午後からは、120束の長ものを3尺80束、4尺40束に切ってい

          茅葺職人見習のはじまり 第6話

          茅葺職人見習のはじまり 第5話

          22.04.07(木)天気:晴れのち雨 昨日は0時近くまで、同期のケンちゃんと話をしていたので若干寝不足の状態で起床。朝起きて、ヨーグルトと甘夏を食べ、いつものようにお弁当を用意して、家を出た。今日はダイナ(1.25t トラック)で現場に行くので、MT車を運転することができる先輩がこちらに来てくれた。そろそろ自分もMT車を練習しないとな。今日は代表の方が出張で不在だったので、3人での現場作業。 午前は、1段目の茅の叩き直しをした。一か所に集中して叩いていた様子を見て、先輩

          茅葺職人見習のはじまり 第5話

          茅葺職人見習のはじまり 第4話

          22.04.06(水)天気:快晴 今日も結びの作業から始めた。不安だったとっくり結びは記憶をたどりにできるようになっていたので一つ成長を実感。そして、今日は結びをした後に、屋根を触る機会をいただいた。3尺と4尺の茅を足場にあげて、屋根面に配置していき実際に葺いていった。葺くまでの段取りをその都度思考していく必要があり、やや困惑した。徐々に行動に移していかないといけない。 長方形の板は、茅がずってこないように、また、揃って葺けるようにするための仮設の装置であるが、垂直を維持

          茅葺職人見習のはじまり 第4話

          茅葺職人見習のはじまり 第3話

          22.04.05(火) 今日から現場が始まった。寮から自動車で1時間ほどの場所にあるとある現場へ。 着いて早速足場を登って茅葺屋根と対面した。現場の茅葺民家は、宮本常一の民族のふるさとの表紙に載っている茅葺屋根そっくりだった。経年変化の度合いやプロポーションから見てそう感じた。かっこいい佇まいをしている。 今日は、結びの指導から始まった。とっくり結びや男結びはかつて教えていただいたのだが、とっくりの結び方は完全に忘れていた。茅葺は糸偏が付く仕事=裁縫的な所作が多いことを

          茅葺職人見習のはじまり 第3話

          茅葺職人見習のはじまり 第2話

          22.04.04(月)天気:快晴 今日は8時半に起床。社会人1日目ということで、職人の生命線である工具を買いにホームセンターに行った。購入時の参考にするために、先輩のベルトを借りて訪問した。 ハサミは親方が譲ってくれるとのことだったので、それ以外のペンチや鋸、そしてそれを入れるものを購入した。 先輩からは、自分がいいと思ったものを買うようにとのことだったので、個人的に好きな黒色で揃えたかったが、鋸を入れるケースだけ、黒色が無かったので茶色のケースを選んだ。(また仕事をし

          茅葺職人見習のはじまり 第2話

          茅葺職人見習のはじまり 第1話

          2022年4月3日(日) 3月末に大学院を修了し、明日から新社会人。 大学院で過ごした彦根の下宿先を退去し、10日ほど大阪の実家で生活をしていたが、ついに今日、新天地である広島に来た。 新たな職場では、自動車が必要になるので、大阪で新古車を買って荷物を詰め込んでやってきた。 少しの不安はあるけれども、やはり期待の方がでかい。自分で選んだ道だからと思う。院卒で職人になるという選択肢をした自分。やはり「普通」のミチではないから、親を含め、理解はされない。でもそれでもいいと

          茅葺職人見習のはじまり 第1話