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遊動的生活記

茅葺職人見習いとして働き始めて今年の春で2年目となった。技術や経験はまだまだこれからであるが、働き方については少しわかってきた。

今年の4月から、会社の拠点である東広島に家を借りた。家といってもアパートではなく、90近い大家さんがセルフビルドで建てた山小屋にひとり暮らしている。山小屋がある土地はもともと松林であった土地を大家さんが開墾したらしい。水は山から引いているので水道代はかからない。大家さんは百姓というかなんでも自分でやってしまう仙人であり、この人から生活面でいろいろ学べるとおもしろいなと思ったので、駅前のアパートではなく、不便な山小屋を選んだ。

山小屋生活は予想不能な出来事の連続で楽しい。しかし、広島を拠点としていても、ずっと定住して仕事ができるわけではない。ときには住み込みで県外出張に行く必要がある。我が国から消滅しつつある茅葺屋根によばれ、その地に赴いて仕事をする。

参考に1年目の居住地を列挙する。

2022年
-3月 滋賀,彦根市 (大学院修了)
4-5月 広島,東広島市(社会人スタート)
5-9月 大分,中津市 (出張01)
9-10月 福岡,中央区(出張02)
10月 岡山,真庭市(出張03)
11月 福岡,早良区(出張02続き)
12月 大分,中津市(出張01続き)
2023年
1-3月 広島,東広島

去年のスケジュールを見てもわかる通り、拠点であるはずの広島にはほとんどいない。こういう働き方をしているとまわりから、大変だねと心配される。しかし、働いてみると案外いけるものである。自分は学生のころから、旅が好きだった。一人で見知らぬ土地に行き、その地に住んでいる人に出会って話をするようなことを好んでしていた。ある時、大学のあった和歌山で旅する大工という肩書の持つ、いとうさんという大工に出会った。これまで見ていた大人とは違った人間的情熱を持ついとうさんというひとりの人物を目の当たりにして、興奮したことを思い出す。自分がいまこの生活を受け入れられるのは、いとうさんのような働き方をする大人に憧れていたこともあるし、ときに出稼ぎに行かなければならないというネガティブなことすらも旅に近い感覚でとらえることができるからかもしれない。でも、心の中では自分の根付く場所を求めている。ただ、とにかく20代は、仕事の技術だけでなく、この遊動的と言える生活を楽しもうと考えることにした。現代の茅葺職人の職能を通して自国日本の文化、食、人、建築に出会っていく中で、これからの建築の在り方や生き方を考えていく。焦らずに地に足のついた生活を送りながら、死ぬ気で生きる。

誰も興味がないかもしれないが、ざっくりとこんな感じの生活を送りながら生きている。せっかくならこの遊動的生活を記録として記そうと思ったので、気まぐれでnoteに書いていこうと思う。去年の刺激的な出張記についても落ち着いたら書きたいが、まずは直近のことについて書く。次回の投稿は、宮城県・石巻市へ仕事に行ったときのはなし。1か月という短い滞在だったが、忘れもしない現場となった。

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