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複製できないもの

かつて本は一部の王公貴族や特権階級のためのものであった。
しかしグーテンベルクの発明した活版印刷によってそこに秘められた知は広く大衆のものとなった。

産業革命後の車、今では家電と言われるテレビや冷蔵庫、洗濯機などの発明も、最初は高級品で一部の人達のものであったが、テクノロジーの進歩によって、大量生産が可能になり、大衆のものとなった。

同じものをたくさん作ること、複製できること、ものに価値があったため、その精度と生産性の向上は高まり続けていた。

だがあらゆるものが簡単に複製できるようになり、日常の中での物質の所有への欲望が減ると、高めてきた生産性で大量に作られたものたちは価値そのものを失い、売れなくなった。

極端に言えば複製できるものの価値は年々落ちてきてしまっているということ。

そうなるとじぶんの生み出したものを届けたいと思う人はテクノロジーが発達した時代に、複製できないものとは何か?ということを考えるようになる。

効率、能率、コスパ、多動と言われる時代に一見逆行しているようにみえるが、僕は、「あなたのために」×「(じぶんのできることに)時間をかける」ではないか、と思っている。
マスの時代だからこそ、わざわざ、わたしのために、というところに人の感情や心に届く何かがあると感じている。

5/25 根津にあるカレー屋さんラッキーで、漫画家のこしのりょうさんの個展のオープニングパーティーに参加する機会をいただいた。

このパーティーでは、こしのさんの今後の展望や作品に対する想い、そしてこしのさんと一対一でお話しできる時間もあり、すでに満足度の高いイベントなのですが、さらにこしのさんが一人一人の似顔絵を描いて判子にして来場者の皆さんにプレゼントして下さるというサプライズがあり、僕を含めた皆さんにとっても忘れられない思い出、プレゼントになったはずだ。

来てくれた人への感謝と、楽しんで、喜んでもらいたいという思いが、効率や能率やコスパを上回り、わざわざとも呼べる時間を、手間をかけることで、より一層人々の心に届くものになる。

それをベテランと言われるプロの漫画家のこしのさんが淡々と出し惜しみしないで行うことで、それは複製できないもの、そこにしかない時間、空間になっていて、作品やこしのさんは、人々にとって忘れられない特別な存在になっていく。

時代が変わっても、目の前の誰か一人のために、じぶんのできることをすることの大切さを、そのあたたかさを身を持って学んだ貴重な時間になりました。
ほんとうにありがとうございます。

6/14まで開催されているので、お近くにお立ち寄りの方はぜひとも。

今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。
ラッキーというカレー屋さんのお料理もほんとうに美味しい。

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