外資系企業人事部長の部下へ宛てたHR Letter「グローバル企業での働きかた」 第17話 一歩先を読むこと

第17話 一歩先を読むこと

仕事を行う上でもう1つ上のレベルの仕事をしたいと思うなら、一歩先を読んでスピードを持って動くことが重要です。次に何が起こるのか、その対策はどうしたらよいのかを見越して次の一手を打つということです。

もちろん、与えられたこと、やるべきことをやるのが通常の第一の目標ですが、これはあくまでも「期待に応える」レベルです。ここでは1つ上の仕事、つまり「期待を超える」レベルの仕事について考えます。

先日、当社が約半年後にS社を買収するという発表がありました。この発表は米国本社で行われ、その後社内ニュースでアナウンスされました。その時、私がまず思ったのは「日本において外部へのアナウンスメントをどうすべきか」ということです。プレスの発表はすぐにマスメディアに伝わりました。日本のネットにも瞬時に情報は流れます。しかも、S社は日本でもプレスリリースを行いました。一方、米国本社からは何の指示もありません。米国本社はローカルが単独に動くことを禁止しているので、我々はこの事態に対処することができません。

本来、プレスは2社がタイミングを合わせて行うものです。弊社が対応していないことは大きな問題になると感じました。事実、ネットでは「S社がxxx事業を某社に売却した」というS社主体のアナウンスが出ていました。

そこで、私は米国本社のプレスリリースに対する翻訳版(併記)を準備し、弊社のホームページにのせることにしました。タイムリーに対応するために米国本社版の翻訳を使い、また英語を併記することで米国本社からの批判を避けるためです。そして、社内には、お客様からの問い合わせに対してはホームページ記載の趣旨を説明してもらうことを通達しました。同時に米国本社にもこの内容の対応を行ったことをレポートしました。

次に、お客様向けのあいさつ文の作成に取りかかりました。ここでも米国本社からは何の指示もありません。そこで、今までの英語のプレスリリースをベースに日本語の案内文を作成し、そのポイントを英語に直し、本事業の責任者である米国のトップに送り、承認を得ました。営業はこのあいさつ状を持ち、お客様一社一社に説明にいく必要があったからです。

一連の対応の中で重要なのは、S社買収の発表という動きの中で次に何がおきるのか、お客様はどう思われるか、そのためには弊社として(もしくは、自分の立場において)どのようなアクションが必要か、想定されるリスクや困難とはなにか、それらを回避する(乗り越える)にはどうしたらよいか、といったことを考える「一歩先を読む力」です。その対応を、迅速に行わなくてはなりません。

個々の仕事の中でも、一歩先を読まなくてはならない場面はあるはずです。そのタイミングをのがさず、一歩前にでる習慣をつけたいものです。


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