45歳はじめての転職 第4話 五奉行の話

第4話 五奉行の話

企業に人材を供給するというのはなにも今に始まった仕事ではない。何十年も前からこの仕事は存在する。従って純日本的なスタイルのヘッドハンターも存在する。

PCに関係する技術で急速に大きくなった会社を紹介してきたヘッドハンターがいた。そのヘッドハンターはみた感じ50歳半ば。仮にAさんとする。でっぷりとした外見は中小企業オーナーか、その参謀。

彼は私にオファーしたいポストについて語り始めた。

Aさん「この会社の社長はカリスマ、ワンマンタイプですよ。中小企業であった会社を今の一部上場にまで押し上げました。しかし人が育っていない。そこで彼は将来を見据えて会社の抜本的な構造改革を決意したのです。まず組織を5つのカテゴリーにわけて、それぞれのトップを据えることにしたんです。そのトップたちは社長直下生え抜きの専務にレポートするのですが、すべて外部から採用することにしたのです。私はね、この人たちを五奉行って呼んでいるんですよ。五奉行がこの会社を改革するんです。どうですか、その1つにチャレンジしてみませんか。」

私「五奉行ですか、、、、、。どんな仕事をするんですか?」

Aさん「いわゆる事業部制をひいて事業部長になります。その人たちが競って成果をだしてもらうつもりです。その中からいずれ次の経営者がでてくることを期待しているんですよ。例えば事業Xでいえば、、、、」

私「まぁ、社長とあってみてですね。波長があわなければダメですね。」

Aさん「私はこの会社との付き合いは長いんですよ。社長ともよく話しています。一緒に考えているといってもいいかもしれません。」

私「そうですか。ちょっと考えさせてください。」

こんな感じで会話は進んでいった。

五奉行を引き合いに出してきた話には面食らった。「五奉行が仕えるなら専務はさしづめ老中か、社長は殿か。テレビの大岡越前をもっと見ておけばよかった。」

次に感じたのは彼らの発想の危うさである。事業部長を全部外からもってきたらプロパーはやる気をなくすだろう。しかも事業ユニットを縦割りにしてそれぞれの外部からとった事業部長に競わせたら会社はぎすぎすするだろう。専務にレポートしてもその上にカリスマ社長がいる。本当に早い、的確な意思決定ができるのだろうか。表面的にはわかりやすいがこの発想はうまくいかないように思えた。

あまりにも単純なロジックで組織を考えており、チームワークやモチベーションを考えていないように思えた。

私はこの不安をぬぐえなかったので、後日丁重にお断りの連絡をした。まだまだ先は長い。


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