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想いは旅路を彷徨う。(『漂流』あとがき)


初の試みですが、今回、短編小説『漂流』のあとがきを書いてみることにしました。そもそも、あとがきって何を書くのかよくわかっていませんが。

漂流』は、もともと『恋愛妄想作家』のサイドストーリーとして、書き始めたものです。本編では、恋愛妄想作家の主人公であるキャロライン本郷氏の名前もところどころで登場します。

主人公は、人間ではなく、一冊の文庫本です。文庫本視点で物語は進んでいきます。小説で、ちょっと変わったこと、他の人がやらなさそうなことに挑戦したかったのです。

今年の6月頃から少しずつ少しずつ書き進め、気がつけば一万文字を超えていました。もはや、どちらがサイドストーリーかわからなくなってしまいました(汗)。

noteの性質上、長すぎる文章は好まれないので、前編後編一章二章のようにいくつかに分けて公開しても良かったのですが、思い切ってまとめました。
小説を読まず、このあとがきを読んでいる方いるかもしれないですね。やっぱり一万文字はハードルが高いです。ええ、わかってますとも。

漂流』というタイトルは、『書物の漂流』という言葉が元になっています。書物の漂流とは、旅人から旅人へ、そしてその旅人からまた別の旅人へと、世界を旅するバックパッカーたちの間で、一冊の本がどんどんリレーされている状態を意味します。つまり、書物そのものが、ずっと旅の移動空間の中で浮遊していて、目的地のない旅をしているということです。

この『書物の漂流』という言葉に出会ったのは、私がバックパッカーとして世界を旅していた学生時代のことです。旅先で人から聞いたのか、本で知ったのか、はっきり記憶に残っていませんが、この言葉だけはずっと頭に残っています。旅好きな人間からすれば、とても興味深くドラマチックな現象です。

二十年前、南インドの安宿で出会った旅人に渡した一冊の文庫本は、私の代わりに、今も世界のどこかで漂流しているのかもしれない。そういうふうに想像すると、なんだかとても嬉しくなるのです。


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