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どうしても眠れない夜にとるべき行動

1.眠れない人の2つの原因

皆さん、夜はぐっすりと眠れていますか。

医者をしていると眠れなくて困るという患者さんに結構な頻度で遭遇します。

布団に入ってもなかなか寝付けなかったり、眠ったと思っても途中で目が覚めたり、

あるいは長い時間眠っているはずなのにぐっすりと寝た感覚が得られずまだ眠いなどとパターンは様々です。

一般的に眠れない状態の人の中では、次の2つのことが起こっていると言われています。

①体内時計のバランスが崩れる

②交感神経過緊張状態になっている(自律神経が刺激され過ぎている)

人間に限らず動物の身体には体内時計と呼ばれるシステムが備わっていて、

それは脳の中の視交叉上核(しこうさじょうかく)と呼ばれる場所にあると言われています。まぁ、細かい名前はどうでもいいです。

この体内時計を司る脳の場所は、朝に光を浴びると活性化され、また体内時計の調整に関わる「メラトニン」という物質に分泌のリズムを作ります。

従って、①の問題があって眠れないという人は、部屋の中に閉じこもっている時間が長く日中の光を浴びていない可能性があります。

また「メラトニン」という物質はトリプトファンと呼ばれるアミノ酸を材料にして作られます。肉、魚、卵、豆類などタンパク質が足りていない人にも①の問題がある可能性があります。


2.眠れない原因別の対処法

①の問題に対する対策は、朝起きたら光を浴びてなるべく外で過ごす機会を作ること、それが無理なら室内でもカーテンを開けるなどして光の当たる場所で過ごすこと、

そして栄養面ではタンパク質が不足しないように心がけることとなります。

もう1つ、②の交感神経過緊張状態であっても眠れない原因になります。

交感神経というのは自律神経のアクセル役です。それが過緊張ということは自律神経が過剰に刺激され過ぎているということです。

自律神経については以前も記事で紹介しましたね。

実は私が普段診療で見ている不眠症の患者さん達は圧倒的にこちらの問題が多いです。

なんでわかるかと言いますとね、そうした人の首の後ろを触るんです。

そうするとたいていガチガチに硬くなっているんですよ。

それでわかるんです。「あぁ、この人の自律神経は常に緊張しているんだな」って。

そうした人はもれなく肩も凝っています。自律神経の過剰刺激は肩こりとしても出やすいんですね。

要するに身体が興奮し過ぎていて眠れなくなっているということです。

なので、ここでは②の問題に対するとっておきの方法を2つ紹介します。

それは「深呼吸」「瞑想」です。

まず「深呼吸」を行うことによって、副交感神経を刺激することができます。

先ほど交感神経は自律神経のアクセル役と言いましたが、副交感神経はその逆でブレーキ役ですね。

交感神経過緊張状態というのはいわばアクセルを踏み込みすぎている状態ですから、ブレーキを効かせることによってその状態を緩和させてやろうというわけですね。

深呼吸のやり方にはいろいろなパターンがありますが、私は細かい方法にはこだわらなくてよいと言っています。

要するに身体がリラックスすればそれでいいんです。

たまに深呼吸を指導すると首に力が入りながら一生懸命やっている人がいますけれど、

それでは本来の目的を見失っていますし、残念ながら副交感神経を刺激することもできません。

私が少しアドバイスするとしたら、まず目を閉じて鼻から大きく息を吸って、吐くときは鼻と口のどちらでもいいから大きく息を吐きだします。

それをできるだけ1回の間隔が長くなるようにゆったりと繰り返していく。だんだん長くゆったりとできるようになればうまくいっているはずです。

この深呼吸の良いところは、場所を選ばずに実践することができること、そしてまず副作用がないことです。

ご高齢の方でよく、眠れないとどうしても睡眠薬に頼ってしまうという人がいますけれど、

睡眠薬は脳を無理矢理鎮静させてしまうものが多く、副作用として日中にふらついたり、長く使っていると物忘れが進んだり、軽い錯乱状態になる危険性もあって実は怖いんです。

だから睡眠薬を飲むくらいだったら、深呼吸をしましょうって私はよく患者さんに勧めています。

もう一つの「瞑想」も「深呼吸」に負けないくらい重要なことです。

「瞑想」というと修行のようで難しいと感じるかもしれませんが、要するに頭の中を空っぽにしましょう、ということです。

でもやってみるとわかりますが、頭の中をからっぽにするって結構難しいんですよね。からっぽにしようとしてもすぐに雑念が浮かんできてしまいます。

だから私は何も考えないのが難しい人には「深呼吸のことだけ考えて」って言うようにしています。

つまり寝るときに「吸って、吸って、吸って……、吐いて、吐いて吐いて……」と声に出さずに頭の中で思い続けながら「深呼吸」を繰り返すんです。

そうすると「瞑想」とまではいかないけれど、「瞑想」に近いくらい雑念が少ない状態を作ることができるので、これすなわち脳を休ませることができるっていうことなんです。

私たちが頭の中でいろいろなことで悩んでいたり、あれこれと考えていたりすることは内容によっては無意識の小さいストレスを身体に与えてしまい、

その蓄積が自律神経を過剰に刺激して眠れない状態を作ってしまっているんです。

だから「深呼吸」と「瞑想」を組み合わせれば、過剰に刺激された自律神経をゆっくりと休ませる最適な環境を整えることができるというわけです。


3.眠れない自分が意味するもの

そしてもう一つ、私がお伝えしたいのは「どうしても眠れないなら、眠くなるまで起きていればいい」ということなんですよね。

「眠れない」ということが「悪」だとは思わないでほしいんですよね。そんな風に思うとそれがまたストレスになって眠れなくなる原因となってしまいます。

だから眠れないのであれば、その時間に本を読むとかして有効に使えばいいと思うんですよ。

そうこうしていたらまた眠たくなってきますから。眠気を感じたら改めて布団に入ればいいんです。

とは言え、仕事をしている人なんかは「そんな風に夜更かししていたら明日の仕事の効率に支障が出てしまう、なんとしても〇〇時間は眠らなければならない」とか思ってしまうかもしれません。

そんな風に「〇〇時間は眠らなければならない」という考えがまたプレッシャーとなってストレスを感じ続けてさらなる不眠を呼び込んでしまいますし、

それだけ仕事にプレッシャーがかかっている状況そのものが不眠の原因となっている可能性もあります。

まずは仕事でお休みをもらってでも、睡眠リズムを整える必要があるかもしれませんよ。

眠れないという時は、それくらい身体が頑張っているかもしれないと気付くチャンスだと思ってほしいです。

それがわかれば今日の話を参考にして、身体を精一杯いたわってやってほしいと思います。

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