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【カンボジアの学校へ行こう!5】校長先生たちの苦悩 #熱血先生応援プロジェクト

■ 教員たちの勤務時間

カンボジアで公立の小中学校の教職になるには、高校卒業後に各地にある教員研修所(日本で言うところの教育学部)で2年以上のトレーニングを受ける必要があります。小学校の教師は各学級担任制で全教科を担当しますが、中学校教師は、専門教科を担当します。教員の数が足りないため、2年制の中学教員養成では、1人が2教科を専門に習得します。しかし実際、僻地で2~3人の教員しかいない学校では、専門外の教科も担当している状況です。

■ 教員の不平等

生徒に対する学校の数が不足している事から、午前と午後の2部制がとられています。小学校教員は担任制なので担当した教室の始業から就業まで在籍します。それに比べ、一般に中学校教員は担当する授業の時間だけ登校するという慣習が定着しているため、制約される時間に差があります。多くの教員が副業を持つため、不平等感が生まれます。更に公立教員の月収が、担当授業にしか登校しない中学教員の方が、拘束時間の長い小学校教員よりも条件が良いため、2重の不平等を生む構造になっています。

■ 校長先生の仕事

勤務時間で言えば、校長先生は中学校であっても、終日の勤務時間が課されます。業務内容としては、学校の運営や、政府教育局、地区の学校との会合、更には日本とは違い、学校と地域の政党との繋がりが強いため、政治がらみの業務にも、時間外で従事する必要があります。他の教員たちの勤務時間についても、校長は管理する立場ですが、教職員の給与は低く、各教員たちの生活を思えば、むげに副職を禁ずることも出来ないと言います。それなのに校長の業務手当ては、スズメの涙。。。

■ 校長の苦悩

どの国の公務員もそうですが、たとえ頑張っても、手を抜いても、給与が同じであれば無難に業務を遂行してしまう、というのは世界共通です。新任の時にあった情熱も、家庭を持ち、地域の権威主義の中で生活していると、朱に交わり赤く染まってしまいます。多くの学校が、政府を介して行われる国際助成を、努力する事も無く、口を開けて待つ、というスタイルが定着している現実があります。

■ 学校長評価が開始

そんな中、教育改革の一環として、学校評価の制度が始まりました。地方レベルの教育局に、評価する高い能力は望めないためか、教育局と接点のある、学校長評価を、学校評価とすることになりました。カンボジアの近代教育史上、はじめて教職として社会に脚光を浴びるチャンスが到来したのです!

■ 若手校長先生の情熱

学校長評価の開始をうけ、弊団体も、元奨学生の教員のワークショップに学校長も招いて、学校改善のワークショップを始めましたが、やはり年配の校長先生たちは、もはや既に自分の頭で考えようという習慣を放棄している事に気がつきました。

■ カンボジアの熱血先生応援プロジェクト

そこで、改めて弊団体が始めたのが、元奨学生の若い校長たちを対象にしたリーダーシップ養成ワークショップです。カンボジアを日本の戦後復興期に例え、日本の「学校評価システム」や「PTAシステム」導入を目指しています。しかし、始めてみれば、自分で考えたり、本から学んだり、計画を立てたり、といった基本的な体験に乏しく、それらの習慣を身につけることからの開始となっています。はじめは「一般的正解」ばかりを選んで、全員が同じ事を口にしていた状況から、自分たちの学校の状況や、思いを口にし始め、それらの思いを、学校の教員や、保護者の方々に語りかける事で、自分の意見に賛同してもらえたなど、短期間に努力が実る実感を得ているようです。始め30人で開始した、ワークショップも、モチベーションの高い校長12人に絞込み、現在は、教員養成学校向け「読書リテラシー教科」の開発に取り組んでいます。

■ Phnom掲載記事(2019年8月号)

学校へ行こう05校長研修

リンク:プノンペンで唯一の月刊誌「プノン」web版

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