出版業界のハッキングとは何だったのか 06/10
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出版業界のハッキングとは何だったのか 06/10

イヤな質問するなァ。自分もこないだ気づいたんですけど、箕輪さんとお仕事ご一緒したことありますからね。

「お前、箕輪さんと仕事してたよな?」って言われてつらつら箕輪さんのプロフィール見てたら、確かにしていたし、与沢翼の元ライブドアがあった六本木の事務所で与沢翼待ちしていたことを思い出しましたよ。その時の会話の内容もぼんやり思いだしたのですが、そちらは伏します。え?なんで与沢翼の本の仕事を請けたのかって? そんなん、面白そうだったからに決まってるじゃないですか!

で、なにが天才的かというお話でしたね。簡単に言うと、1 著者の稼働ナシで本を作るシステム と、 2 これら著者の褒め合いによって読者を誘導し、一種の読者層を作った。さらに、 3 読者層を組織してネットでの購買運動を作り、販売前にランキングをジャックした。 4 幻冬舎のイマドキ珍しいイケイケの販売方針により、大量に印刷して、配本制度とそれにともなう歩戻しを積んでチェーン系書店に本を積み上げ「売れている本」の体裁を演出した。これにより、「売れている本だから売れる」という循環にもっていったということにあるのではないでしょうか。

1 著者の稼働ナシで本を作るシステムとは?

こちらはゴーストライターや箕輪さん本人が、著者の過去本の山から新しい切り口を考え、数回のインタビュー(ない場合もあるかも)を実施して本を制作することです。いわゆるゴーストライターですが、これはビジネス書では普通のことで、特に新しいということはありません。まあ、本の内容を見ると、そのインタビュー稼働もかなり少ないのではないかと感じたりはしますが。このゴーストは箕輪さん案件ではありませんが自分も何冊も手掛けています。

2 著者の褒め合いによって読者を誘導し、一種の読者層を作った。

出版社は、いつも想定される読者層のことは気にしていて、帯には、その想定される読者層が食いつきやすい大物を起用して推薦文を書いてもらうことは日常業務としてやっています。その結果、あるジャンルの本の帯は軒並み同じ人が「今世紀最高の傑作」「20年に一度の傑作」「私が涙した推薦作」などなど並んだりしてるわけです。新規性としては、帯に推薦文を寄せるのは、必ず複数人起用して、そのうちの一人をこれから売り出したい人を配すところでしょうか。そうすることで、売り出したい人にある種の権威性をまとわせていこうということですね。権威性があるから帯を書く、から、帯を書く人だから権威がある の逆転があります。これはちょっと新規性があるかなと思います。しかもそのシステムに編集者である自分本人も組み込んじゃう。外部の下請け編集である自分がこれしようとしたら、版元の編集さんに「ふざけてるんですか?」と真顔で言われちゃいますな

3 読者層を組織してネットでの購買運動を作り、販売前にランキングをジャックした。

これは結構凄いよ。NewsPick Bookというラインを作ったり、箕輪編集室というオンラインサロンを組織したり、Twitterの施策を通じて、amazonなど販売前にオンライン書店を中心に予約を一気に積んでしまう。

普通の著者も(もちろん自分も)、事前予約積まれて発売前に重版決まったりしてほしいですけど、いざ金を出して欲しいっていうと、いつもはいいね!にRTをガンガンしてくれてるはずのTwitterのフォロワーは「応援してます!」の言葉を残してスッといなくなりますからね。1~3%も買ってくれたらバンザイですからね。超シビア。

それを、自己啓発系ビジネス書という、あらかじめ踊らされてる読者層を相手にイベント化して煽ることで、一種のお祭りに仕立てて、「なんか買っておくべきかな?」と商品を買うというより流行に乗るためのチケットとして売るサイクルを作ったわけです。

一番度肝抜かれたのがこれ​

完全にアイドルのCD発売に伴うオリコンデイリー入り施策やんけ! 美少女じゃなくてもしていいのか! 

で、そんなこんなで日時を決めて一気に販売数を積んでamazonなどのランキングをあげるわけです。ここでも読者は「いい本だから買う」というロジックから、「ランキングを押し上げるゲーム」に参加するに変わってる。新世代のコト消費ですね……。100回買ったらAKB48は100回握手させてくれるけど、箕輪本は100冊買ったら、「講演会の主催」という文化的な役割を担えるような気がするというワケ。

amazonのランキングジャックは、箕輪さんの前は情報商材系の方々がよくやってましたね。それを組織化して大規模化したんでしょう。そういうの俺好きです。

今はリアル書店も、amazonなどの事前ランキングを参考にしますし、さらに発売時に本の帯に、発売前から大ヒットとか迅速に刷って巻かれてます。

4 幻冬舎のイマドキ珍しいイケイケの販売方針により、大量に印刷

で、発売前から華々しい売れそう感をまとった本になりました。帯にいっぱい推薦文やamazonでどんだけ売れたかがバッチリ光を放っております。

最近の出版社は、企画を出しても類似書の売り上げを調べて、それの6割うれたらペイするかどうかを計算して、その予算感に応じた企画としてGOをするんですけど、箕輪さんの所属する幻冬舎は違う。(これはこれで取次からの入金で自転車操業して点数を揃えることが第一という出版業界の闇が別に一個ありますが、一旦措いておきます)

違うっていうか、他の部署はそんな感じも多いと思うんですけど、見城さんお気に入りの箕輪本は違う。箕輪本ではないけれど幻冬舎の百田尚樹『日本国紀』も違った。とにかく刷る。多く刷る。うらやましい。

書店からの注文がなくても、取次が新刊を自動的に配本する配本制度を活用して、バキっと多く刷ることで(歩戻しという一種の販売奨励金も取次に積みつつ)、チェーン系の書店に自動的に平置きのタワーを作り出すことが可能になります。そこに踊るのが、同じシステムで平置きになった本の著者たちの帯推薦文のエンドレスチェーン。ビジネス書の一角をこうしてジャックすることで売れている本を演出できます。売れている本は売れているということ自体が価値なので、さらに売れます。

『日本国紀』なんて、返本して返本しても、ネットの指摘を受けて修正された増刷分がどんどこどんどこ送られてきて、書店員の腰を破壊したとか何とか……。幻冬舎の売るで!と決めた本に対してのアクセルの踏み方はスゲーなあ。自分の本売るときだけそれやってくんねぇかなあ……。

5 まとめ

というわけで、箕輪さんの本が売れていた理由は、従来的な編集という意味よりもマーケター的な手法が功を奏していたといえそうです。

で、著者よりも、そのマーケター的手法で売ることができるという自負が、オンラインサロン・箕輪編集室などへのビジネス書ワナビーを呼び込む原動力になっていたとも思います。なぜなら、自分のスキルや実績に自信が持てなくても、そこで箕輪システムに乗ることができれば、内容に関係なく一躍スターダムにのし上がれるかもしれないじゃないですか……。

で、今回のセクハラパワハラ問題の結果、NewsPicks Bookは終了。これ、去年の2月にはすでにNewPicks側は終了したいと幻冬舎に打診していたシリーズ。それを幻冬舎見城社長が激怒して、

NewsPicksが今までパートナーシップを組んでやって来たNewsPicks Bookを突然、自分たちだけでやると通告して来た。どれだけ幻冬舎を利用して来たと思っているんだ。この会社には義理、仁義、礼儀、恩義といった「義」に関するものが一つもない。今は勢いが良くてもこういう会社は必ず滅びる。

とTwitterで大暴れ、株価まで下がって、NewsPicksが折れた格好で存続していたもの。これが箕輪さんの問題で終了を迎えたってことは、見城社長がどう思うか……、どんな叱責があったのかちょっと考えただけで怖いですね……。

また、箕輪さんの販売手法は、幻冬舎のやったるでエンジンを効率的に回して、書店にタワーを作るのが最重要のキモであったはず。つまり見城社長の覚えがめでたいかどうかがカギなエンジンなので、これまで以上に社内の立ち回りが重要になりそうですね……。反省文の中には、とくに左遷的な言葉がなかったのでどうなるかちょっと内部を知らないのでわかりません。

ちなみに、NewsPicksが幻冬舎を切って自社で始めたNewsPicksパブリッシングですが、こちらもヘッドハンティングしてきたのが元ディスカヴァー21という出版業界をザワつかせた販売手法をとってのし上がってきた出版会社出身者。幻冬舎の配本制度を利用してのガツガツ配本から、ディスカヴァー21式直取引も取り入れていくのかな……と想像しています。

直取引の雄と言えば、ハーレクインロマンス! その流れをもし踏襲したとしたら、チェーン書店に棚を毎月いくらかで確保して、直販に誘導していく、そして、何冊セットなどで自己啓発ビジネス書を送付するというNews Picksアカデミアの施策とピッタリ合う感じになるかもしれませんね。

って! いまハーレクインの公式サイトを見たら、いつの間にか販売元SBクリエイティブになってんだけど! えっ身売りしたの……? ちょっと知らんかった情報欲しいです!

※追記 そして、フォローアップ記事も書きました。

今日はこの辺で。


久保内になにか質問などあれば、マシュマロを投げるといいですよ。答えたり答えなかったりします。


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編集・ライター。編プロタブロイド代表取締役。デジタル系からオタク系コラム、経済にコピーライティング全般。著書多数。企業系オウンドメディアからニュースサイトまでよろずご相談ありましたら、 tabloidpro@gmail.com までご連絡ください。