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(後編)【Z世代とかんがえる】支援の先にみえてきたものーとあるフィリピンの小さな学校より

前編はこちら🍙ˎˊ˗
▷▶︎https://note.com/tablefor2/n/n30917e1caacc

〜後編〜

驚きの食習慣 

柏木 続いてフィリピンの食生活についてお伺いします。バライバイ小学校では、保護者向けに栄養セミナーも開講していましたよね。どんな実態がみえましたか。
村田 フィリピンで聞いた食生活を紹介します。 フィリピンでは、食事は1日3食ではなく、間食を取ることが当たり前です。 バライバイ小学校の子どもたちの場合は、学校に併設している売店で、フルーツやお米を材料にしたお菓子を買う子がいたり、家庭からスナック菓子を持ってきている子がいたりしました。

学校の売店でスナックを購入する子どもたち


柏木 日本ではそもそも学校にお菓子が買えるような売店が併設されているのは高校からが多い印象です。
村田 子どもにおねだりをされるとついあげてしまうこともあるようで、難しいですね(笑) 小学校高学年くらいの子どもの靴紐を、笑って話しながら結んでいる保護者さんの様子を見て、大人の子どもたちへのおおらかさを感じました。 私だったら「靴紐縛りなさい、危ないでしょ。」と言ってしまうだろうなと感じて、反省した部分もあります。
一方で、衛生週間については少し気になることも。手洗いや歯磨きはあまり定着をしていない様子でした。
柏木 あたたかい家族にほっこりする一方、虫歯になってしまったら苦しんでしまうのは子どもだなとも思いますね。
村田 そうですね。栄養セミナーの中で、保護者さんたちが糖分のとりすぎで虫歯になる、という意見も出ていました。また、衛生教育の授業もあると聞いています。
柏木 なるほど。健康のためにも今後改善してくとよいですよね。
話が変わりますが、給食プログラムでは参加している家庭の保護者が、給食の準備や片付けを担っていますよね。お母さん方は皆さんコミットされているのでしょうか。
村田 仕事をしている保護者の中には、調理や準備を担当することが難しい家庭もありますが、担当している保護者さんたちは、とても前向きでしたよ。料理のレシピが増える、一緒に料理ができるから楽しいなど。残った学校給食は持って帰ってもらっています。

手際よくお肉を捌いていくお母さんたち
優しいまなざしで子どもたちにご飯をよそっていきます

家庭に入ってみえたもの

柏木 今回は学校だけでなく家庭訪問にも伺われたと思います。学校とはまた違うことも見えてくるかと思いますが、どのようなことを感じられましたか。
村田 行かせていただいたのは給食プログラムの参加家庭だったんですが、仕事事情だけでも本当に様々でした。共働きの家庭もあれば、保護者の片方が働いてる家庭もありました。父親が仕事を失い、母親が家計を支えている家庭も見かけました。

大家族のみなさんと村田さん。はじける笑顔が印象的です!


柏木 本当に多様な形があって素敵ですね。日本は他国と比べてみたときに夫婦のうち女性のみが働いている形は少ないかもしれないです。他にどんなことが印象的でしたか。
村田 お金に対する価値観の違いも感じました。お金を貯めるという意識より、お金を使うことへの関心が高いようで(裏を返すと、収入を得ると使ってしまう)、フィリピンでは、学校でいわゆる「マネー講座」のような授業も始まったと聞いています。
柏木 日本人は逆に貯金のし過ぎと言われているのでまさに真逆ですね。
村田 本当にそうですよね。さらに、お金の価値観に加えて「ないものを望むのではなく、あるもので幸せを。」といったような彼らの"幸せ"の価値観にも触れられたような気がします。
柏木 大学で"幸せ"を研究している身としてもその点は大変興味深いです!人々と関わるにしろ支援をするにしろ、その土地や風土ごとの幸せの形があるということを決して忘れず、自分たちの幸せを押し付けることでそれらを侵害することはあってはならないことだなと改めて感じさせられました。

多様な家族の形。それぞれとっても素敵です!

これからの支援の在り方とは

柏木 全体を通してどのようなことを感じられましたか。
村田 大きく分けて二つに集約されるかなと思います。一つは、「パートナーシップ」です。給食プログラムをバライバイ小学校で自走しようとなったとき、学校だけ、現地の支援パートナーだけが、一生懸命頑張ることが本当に持続可能性のある状態といえるのかなと思っています。だから、非営利組織だけの力とか学校だけの力とか、単体で実行するのが難しいときに、例えば国や自治体の支援があったり、産業、政治、福祉など教育以外の分野が力を合わせたりして、課題解決を行っていく。こうしたスペシャリスト同士の連携が、本質的な豊かさの実現のためには必要なのではないかなと思いました。
二つ目は、「支援から協業へ」ということです。支援がある程度行き届いて効果が出だしたら終わりなの?と考えたときに、「支援の先」というのは、必ずしも「自立」だけではないのかな、と感じました。この先栄養失調の子どもたちがどんどん減っていったとき(実際に支援先では年々減少している)のパートナーシップや支援者との関係性について、手を放すのではなく、協業していくという選択肢も考えられるのかなと思いました。

元気いっぱいの子どもたちと村田さん

消化タイム(編集後記)

今回のインタビューを通して自分の頭の中をめぐったのは、"「幸せ」とは"という、恐らく人が人生を送るにあたっての永遠のテーマ。個人個人でその価値基準が異なるのはもちろん、その土地の風土や文化、歴史に沿って根付いたある程度共通した価値観のようなものもあります。地域性といったところでしょうか。そしてそれらは時に、自分が無意識的に当たり前と認識する価値観と180度異なります。これは常日頃から意識し、念頭に入れていないとかなり恐ろしいことになるのではないでしょうか。自分が「こうされたら嬉しいはず」と思ってやったことが実は逆効果だったり、単なる押し付けになりうるからです。もっといえば、事態を悪化させたり、相手の気持ちを不快にさせる可能性も孕みます。実際にこれまで読んだ文献の中では、先進国が不要な服を集め寄付として途上国に送ったところ、地元産業の衰退を招きかねないためゴミの山になっている、といった事例もみたことがあります。いわゆる"ありがた迷惑"状態です。
そして、このような事態を防ぐために、この途上国支援の分野で大切になってくるのが、村田さんのおっしゃっていた「支援から協業へ」というところなのではないでしょうか。分野を横断し、それぞれのフィールドのスペシャリストが被支援者とともに協業していくことで、抜かりのない、彼らが本当に望む形での一助となりうるのではないでしょうか。私もそのいずれかのスペシャリストになれるよう、日々勉強・経験に励みたいと思います!

ここまで一緒に考えてくれた読者のみなさん、
そして村田さん、本当にありがとうございました!


今後みなさんの人生の中で少しでもフィリピンに思いを馳せることがございましたら、是非本記事を頭の片隅に思い出してみてください🌟


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