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[懐嘆市叙景]

僕の負けなのさ
どうしようもないな
想いの丈を 思っていたら
身の丈は行方知らずさ

僕の負けなのさ
何もかも桜も
抱き合わせの梅すらも待たずに
ある朝 君は消えた

僕の隣には
いつも君がいて
朝の電車の冷えた窓辺で
温だまっていた

僕はほうじ茶を
大事な魔法瓶の蓋を
君はイヤホンの片方を
分け合っていたよな

下海岸緩やかな波間
立ちぼうけてるうちに 君は
上磯なんて振り向きもしないまま
トンネルの先 薄にじむ山並

僕の負けなのさ
どうしようもないな
想いの丈を 思っていたら
身の丈は行方知らずさ

銭亀の墓場
星を見にゆけば
あれが杓子座 見えてるかな
決まって叫んだものさ

僕の負けなのさ
君は逆向きを向く
南の星を 知らない空を
イヤホンに閉じ込めた

南風の噂 海を渡る
待ちぼうけていたら 君は
怠け者の僕もたどり着けるかもね
シモキタの先 ヨコハマの服屋

僕は決めたんだ
君を探し出す
身の丈より高い想いの丈を
伝えにゆくんだ

僕のじじの船
大畑までなら
ゴッコついでに乗せてもらうのさ
ヨコハマはほんの1日さ

僕が見つけたら
君は喜ぶかな
寒くなる前に股引
買っていこうかな

銭亀の墓場
一人上るんだ
七つの星すら呼ばないような
惨めな男なのさ

仕方がないから
南を向いたら
じじの船が ほんの沖合で
揺れる明かりが見えた
惨めな男なのさ
惨めな男なのさ
僕の負けなのさ

ほんの地元コミックソング。Honey Pie / the Beatles よりも世間知らずな、哀れな男の子の話です。


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