スーダン_021

古代人の霊とピラミッドで年越しする

誕生日はテントの中で迎え、当日はチャドのバス停で終日バスを待って終わった。クリスマスイブも本番も、バスやピックアップトラックの荷台で過ごし、砂漠に野宿して終わった。すると、年末年始、年越しの瞬間は特別な場所で過ごしてみたいと思ってみたわけで。

向かった先はスーダンの首都、ハルツームから北上したピラミッドだった。そう「ナイルの賜物」はエジプトだけでなく、ここスーダンにもナイル川に沿ってピラミッドを残したのだ。

観光客もいなく、入場料を徴収されることもなく、それは砂漠の中にひっそりと忘れ去られたように佇んでいた。ここでの目的は眠って年を越す事。風がすごかったのでピラミッドの中に入って眠ることも考えたのだが、古代人の幽霊が怖くてやめた。

短波ラジオをつけると、遠く離れた日本から聞こえるは紅白歌合戦。日本の歌がだれもいない砂漠にこだまする。

初日の出はピラミッドの向こうから上がっていった。

首都に戻ると、町は元日とは思えないくらい、いたって普通に機能していた。ハルツームにはたいした見所はないけれど、落ち着くいいところだった。
ここはアフリカであってアフリカではない。アラブ人の人口50%なのでまるでエジプトの雰囲気だ。朝はアザーンが響き渡り、アラブ菓子やシュワルマ、ファラフェルなどのアラブ・フードが町にあふれている。どの西アフリカの料理よりも、ここの料理のほうがおいしかった。アラブ人は羊やヤギの料理の仕方を分かってるなあ、と思うのである。

何よりも、スーダン人の人柄と性格が旅人の噂以上に良い。みんなフレンドリーで人懐っこくて、すぐに飯などをおごってくれる。バスに乗ると俺におごらせろ、俺にもおごらせろ、食え食え!とこちらは腹も減ってないのに半ば強制的にご飯をおごってくれた。西アフリカの「くれくれ攻撃」にすっかりげんなりし、アフリカ人との間にできていた壁を取り払ってくれる、そんな人々だった。

ここからエチオピアへと向かう、いよいよ東アフリカだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?