現代風に言えば、躑躅(つつじ)ってエモいよねって話
桜の次の楽しみは躑躅。
誰かの言葉通り、公園の脇道に躑躅のピンクが目に飛び込んで、私達夫婦は声をあげた。人々が桜に見惚れている隙に準備していたのだろう。今や我こそが主役と咲き誇る姿を前に揃って歩みを止めた。
ノスタルジーがよぎる。
小学四年で転校を経験し再び内向的になった。そこに声をかけてくれたのが隣の席のツツジさん。初めての感情が芽生えた。
ある放課後帰りが一緒になった。前を歩く彼女のことを振り向かせたくて、私は向こう見ずな行動に出る。
「俺なツツジの蜜吸えんねん!」(※当時は関西人)
大声で呼びかけ、同じ名を持つ彼女が振り返るや、花壇に駆け寄り躑躅を取って口に当てた。すると! 彼女も来て同じく花をむしり、末端に唇をすぼめてちゅうちゅうと吸い始めた。
その口元のほくろ――。
息継ぎに妻を見やると話を聞いていない。ちょっと、と突っ込むと私も同じことがあったと言って、全く違う恋バナを始めた。
[今日の十七音]
初恋やつつじの蜜を吸ふほくろ
(はつこいやつつじのみつをすうほくろ)
【季語(春): 躑躅、白躑躅、山躑躅】
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