眩しさが辛い時もある
古畑任三郎のような運転手だった。
慇懃な質問が私を追い詰める。
「降りますから」
私は強制的に会話を終わらせた。
☆
母子不在の休日。
ふと図書館の日だと気が付いた。
一冊返さなくちゃいけない。
……ぬう。炎天を歩いていくのか。
一つ閃きが。
最近、タクシーアプリに登録した際、クーポンを頂いた。
……贅沢しちゃおっか。
帰ってまた作業する自分への投資。時間効率。
罪悪感を消せれば決断は早い。
図書館まで少しという所でギョッとなる。
完全に手ぶらで乗っていた。
顔面蒼白……何しに来たんだ?
戻ってください――
言おうとしてプライドが邪魔をする。
自分の過失を知られたくない。
絞り出した言葉は「ここで降ろしてください」
運転手はちらと目的地を確認し、
「図書館じゃなくていいんですか?」
「本を忘れられたとか?」
「そういう方よくいらっしゃるんですよ」
「引き返しましょうか?」
降車し、歩いて家に引き返す。
お天道様が戒めのように私を照らしていた。
目的地失い歩く夏日影
(もくてきちうしないあるくなつひかげ)
※延滞してごめんなさい。今日返しに行きます――
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